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役に立ちたいのじゃ!
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しおりを挟む「……フローライト様」
「ん?」
「前から思ってたんですけど、リアちゃんはなんで単独行動なんですかね? 普通、子息子女のマナーと言うか、侍従や侍女を連れて歩くのは当たり前でしょう? 執事のあの人が知らないはずないでしょ?」
アランは貴族として当たり前の事を質問するとフローライトはため息をついた。
「ほら、何も出来ない時期が人より長かったでしょ? その反動なのか一人で出来ることに嬉しさを感じたらしくてね……。それに教育係兼お目付け役とお目付け役兼護衛がとある理由で結婚したから側に居ないことで更に助長しちゃったみたいで……。執事がすぐにどこか行っちゃうからって侍女を付けたんだけど魔物を狩りに行くのに足手まといとか言って置いていくらしいんだよ。その子もね? 王都ならかなり強いと思うんだけど、リアちゃんよりはかなり弱いからね……。仕方ないから執事が魔物を狩るときは教育係を嫌でも連れていけって長時間叱りに叱って、それを聞いたルノーが仕事の合間に遊んでくれてるよ?」
「……つまりは一人でなんでも出来る……いやいや! 無理でしょ? 普通はしないけど野営とかさ……。料理だって……」
「それがねぇ、リアちゃんは料理スキル持ってるから料理も出来るんだよね。アラン。誰にも言わないでね? リアちゃんはなぜか生まれつき変な称号をもらっててね? 神様に……」
そう言うとなんとも言えない顔でフローライトは書類とにらめっこ中のクリスタリアを見ていた。そして大きなため息をひとつ吐き出すとクリスタリアから天井に視線を移してそっと見つめた。
「神からなんて名誉なことなのに変な称号……ですか……」
「うん。だって『創造神の憐れみ』って変な称号じゃない? 鑑定したらさ、長命種なのに閏日に生まれて可哀想。将来苦しまないように一人でなんでも出来るようにと憐れんだ結果ーーとか出たんだもの」
「憐れみ……。あー、でも……まぁ、変ーーですかね……。つまり一人で生きていくことになるかもしれないから色々授かったと? それにしたってリアちゃんが優秀すぎるんですけど」
「うん……。この子供の姿でも領主歴は俺の王歴と同じだからね……。この能力は後天性だと思うよ?」
2人は再提出の書類を自らの足で持っていくのは時間が惜しいと言う理由で造り出した土魔法のゴーレムに溜まった不備の山を預けているクリスタリアを見つめている。
「良いか? これは騎士団へ持っていくものじゃ。き、し、だ、ん! じゃからな? この箱を手渡されたらこの部屋に戻ってくるのじゃぞ?」
ゆっくりと何度か頷いたゴーレムにはチュニックを着せてあり、前後に『王様からの御使い中。触ったら敵と見なされるので殺られたくなければ触るべからず!』の文字が書かれている。今のところ見習いの騎士が遊び半分で触り、回し蹴りのあげく吹き飛んで壁に激突。現在数人が医務室送りにされている。そんな真実でしかない噂話が広がり今やお使いゴーレムが真ん中を歩いていれば女官も侍従も騎士も全ての者が壁にピッタリと貼り付いて通りすぎるまで大人しくしているらしい。その騎士の姿は情けなさすぎる。
ゴーレムに御使いを頼むとそのままクリスタリアはフローライトの確認を要するものを持って側にやって来た。
「父上、一応計算は合っておるので使われている物等の確認をお願いなのじゃ。妾は王都の予算がよくわからないのでな……」
「あ、うん。ありがとう」
その後は自分の席に戻って黙々と算盤で作業を始めた。
「書類の山がかなり無くなったね……。ねぇ、ジェイル君もそれなりに作業が早いけど、残りのはなんであんな風になったの?」
「…………俺が王の業務に追われ、見てないのを良いことに教育係や使用人が甘やかしたからだろうな」
「……なるほど」
2人はクリスタリアに渡された書類を見て絶句した。
「「………………リアちゃん、ゴーレム2体造って!」」
「……ん? …………わかったのじゃ!」
すんなりと作り上げたクリスタリアは2人に岩で出来たような腕輪を渡した。
「この腕輪がゴーレムに指示をできる制御装置じゃから無くさないで欲しいのじゃ。あと岩に見えるけど金属じゃから壊れることはないと思う。それと操る側の能力がリンクするようになっとるのでの? 父上は特に魔法を使うなら気を付けて欲しいのじゃ」
「「…………それって最終兵器なんじゃ……」」
なんの事かよくわからず首をかしげていると2人は顔を青くしていた。
((そりゃ、吹き飛ばされた騎士は当然だけど医務室送りになるよね! だってリアちゃんのコピーだもの!!))
しかも大人の背丈なので本人よりも強いかもしれない疑惑のあるゴーレムが今現在騎士団へ御使いに出掛けている。思わず2人が心の中で騎士団が全滅してませんように……と願ってしまったのは仕方ないことなのかもしれない。
「じゃあ、妾はまだ計算するものがあるから失礼するのじゃ」
席で黙々と算盤をパチパチしている姿に何とも小さな体で頼もしさしかないクリスタリアに感激する男2人はとりあえずゴーレムを連れて書類と共に出ていった。
「…………ふぅむ、やはりあの書類は着服していたかの……」
そんな書類をあげてくるのだ。常習だろう。
あの山はクリスタリアが見ても着服。横領。そんな物ばかりが書かれているものであの2人の般若のような顔を思えばゴーレムなんて可愛いお仕置きである。
「花代、酒代、色んな物があったみたいじゃが、詰めが甘いのぉ……。パーティにしては量が少なすぎ。日常的なものなら王族の給料から引いた形になるじゃろうに……。アホかの……」
クリスタリアは計算をやめてクスクス笑いながら隣にある資料室へ歩き出した。山積みの書類よりも昔の書類を漁った方が2人も喜ぶだろう。
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