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妾じゃなくても……再び?
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しおりを挟む「うーんと? とりあえず変な呪いが施されてると面倒だし……」
薄い幕のような結界で包むと指で封筒の上部スレスレを狙い、左右の端から端へ横に動かした。初級の風魔法の応用で紙ならこのように簡単に割くことが出来る。
「「……………………」」
妾も執事も無言のまま結界に包まれた手紙らしきものを見つめた。
「あの小娘が!」
「っ!?」
うわ……般若のような顔って例え話だと思ってたけど本当になるんじゃな……。
チラッと執事の顔を見て見間違いかと一度封筒に視線を戻し、改めて執事の方を伺うと見間違いでも何でもなく、そこに般若が立っていた。
原因は言わずもがな。この結界内の手紙には何やら呪いが施されていたようで結界内ではあるが何かが溢れ出している状況だからである。
なんでこんな日に限って父上もアールも来ないんじゃよ! ……あ、来ない方が良いかもしれぬ……。来たら来たで執事と同じ状態のが三人になるようなものじゃろ……。かえって面倒臭い。
うん、お願いだからこっちには来るな! 絶対に!
「…………あのクソ底辺が! 私のリア様に! ふざけんな!」
ガラの悪い台詞と共に結界に触れると聞き取れないような声でブツブツ呟いていた。
文句なの? それとも魔法の詠唱なの? 時おり「死ねば良いのに……」とか聞こえるんじゃけど……。それ意外にも「生ゴミ」とか「微生物に失礼だよなぁ……」なんて空耳にしてもひどい言葉が聞こえるのは気のせいじゃよね?
逃げたい……。
「あー、妾、仕事してくる……のじゃ!」
「今日の分は終わられましたでしょう? 強いて言えば明日の分も頑張ってたでしょうに……。今日はもうお仕事は禁止ですよ?」
即座に立ち上がって逃げようとしたら腕のなかに納められてしまった。
…………本当に酷い。無慈悲ってこんな感じ? お父さんその3は守ろうとするとスキンシップが増える気がするのだが……。手紙、危険なの?
思わず手紙らしきものを見つめた。
まぁ、確かに今日は気分も調子もよくサクサクと進んだ。その理由は現在最悪な物となっているこの手紙である。考えるのが嫌なので通常よりも集中力が増した結果、早い時間に終わったのである。しかも気づけば明日の分までもしていたらしい……。
「…………いや、でも……」
「そんなに体を動かしたいのなら久し振りにダンスのレッスンでも致しますか? ここしばらくレッスンをしてませんでしたし……。そう言えば思い返せば踊ってませんでしたね」
「えっ!」
そして否応なしに抱き上げられ、サロンからホール。別名謁見室へと移動した。因みに真っ黒黒透けな結界の手紙はサロンのセンターテーブルに置き去りである。側にいたメイドに茶器を片付けを頼み、あの黒いのは触らず放置で! と使用人全員に言付けをした。
…………ダンス……。いわゆる普通の社交ダンス。各国、各々趣がある。
妖精国はさすがと言うべきかハイエロ……ではなくハイエルフが統治する国だけあってかなり密着。官能的とまでは行かないがほぼほぼ抱き合ってる感じ?この国では婚約者か夫婦で踊るのが慣わしである。ーーって、当たり前か。婚約者もしくは夫や妻の目の前で浮気は良くないと思う。
対して真逆の位置にある小人族のTHE・社交ダンス。主に王都の舞踏会等で踊られるのはコレである。踊るのに密着はするがそこには爽やかさと華麗さが存在する。見ていて綺麗だなと思う。
獣人族は社交ダンスでもカジュアルな物となっている。よく踊られる場は所謂お見合いパーティーといった貴族の若者が多く集まる場らしい。
そして我が魔人族は同性でも一緒に踊れる仕様となってるがステップは一番難しいと思われる。テンポも独特なところがあるのだが、友達同士で踊っても、年の離れた兄弟姉妹でも皆同じ振り付けなので楽しめるとは思う。うーん、踊りの場はどこで使っているのかわからない。……女同士でも踊れるので壁の花を無くすため? 生まれてこの方社交界を知らないのでわからん。
「さぁ、少しストレッチをしたら始めましょうか」
「…………はい」
~♪~♪
「え、あ、あの? 最初からなんでこの曲? 魔人族の踊りでも一番難しいと思われる奴じゃよね?」
「おや? リア様は踊れないのでしたか? では明日からレッスンを再開しましょうか……」
「踊れる! 踊れるわっ! ただ初っぱなからコレは無いのではないかと訴えておるだけじゃっ!!」
踊れるのならさぁ、始めましょうか……と笑顔で言われた。鬼過ぎる……。
「ぜーはーぜーはー……」
魔人族最高難度の踊りを5個ほど……。し、死ぬ……。
「ふむ……。やはりリア様は体力がありますねぇ……。通常、リア様と同じ背丈の子供は最高難度の物だと2つが限度ですよ? 1つでもキツいかと思います」
まさかの体力測定だった!! お父さんその3改め、大鬼さんじゃ……。足がガクガクするし、体はフラフラするし……。ハッキリ言って眠い。
床にバタンッと倒れる前に執事が抱っこしてくれた。
「うにゃ~っ! もう妾は踊らないのじゃ~っ! ヤじゃ~っ! 嫌じゃ~っ!」
「はい、今日はもう踊りませんよ? そろそろ寝る準備をしましょうね?」
抱っこのままサロンへ戻るとソファーに優雅に座りながら手紙を読んでいる人物がいた。
あれ? そう言えば妾宛の結界に封印した手紙はどこじゃろ?
「おや、御主人様。今日もお出ででしたか……。珍しいお時間ですね」
「うん、なんか嫌な予感がしたからね……。寝る前に様子を見に来たんだけど……。まさか予感が当たるとはね。まぁ、掛けられてた呪いは上書きして送り主に返したけど……」
来客は父上だった。しかも放置した呪いを送り返すと言う荒業をしたらしい……。名前をド忘れしたが愚妹は大丈夫じゃろか……。いや、因果応報?
母上に掛けられてたのは妾が浄化してしまったけれど、父上は浄化する気はなかったらしい……。
「まぁ、リアちゃんのダンスの見学をしてたんだけれどメイドが『コレ』をどうにかして頂きたいと訴えてきてね? 2つくらいしか可愛らしい踊りを見れなかったんだよね……。でもリアちゃんは偉いね。凄いね! あの踊りを踊れるんだもんね」
「全くでございます。リア様は素晴らしい」
何でか急に誉めちぎられた。そして父上に抱っこされると体の限界でウトウトと……。汗かいたからお風呂入りたい……。この際、清浄魔法でも良い……。体をサッパリさせたいーーが、眠い……の、じゃ…………。
「おや、寝ちゃったか……」
「とりあえず、旦那様。コレがリア様の数日間のお泊まりセットです」
「うん、ありがとう。そうだ、リアちゃんは結局のところ何曲踊れたのかな」
「5つほどですね」
少し話をするとフローライトは荷物と手紙を持ってクリスタリアと共に転移した。
「やれやれ……。フローライト様も驚かせたいからと秘密にするし、ちょうど良いからと体力測定に最高難度のダンスの回数とか……。私をなんだと思っているのやら……。でも、少し疲れましたねぇ……」
その場にいたメイド達は無言だったが全員一致で「ドS」だったのは仕方ないことだと思われる。
「さて、今日は早いですが各自仕事を終えたら休んで結構ですよ? お疲れさまです」
『はい!』
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