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フラワーフェスティバル

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「あれ? 何だか外と言うか中と言うか……。下の階が何だか賑やかじゃの……。行った方が良いのかの? いや、でも部屋で大人しくしてなさいと言われとるしのぉーーま、いっか……。何か変なことがあったらその内執事が来るじゃろ……って、あれ? 妾のご飯は? 無いならさっきもらったパンを食べるけども……。もしかして騒動で忘れられとる? 薬飲まなくて良いならこっそりパンを食べようかの……」

 それからしばらくの時間がたったとき、コンコンコンコン……と、ノックされたので返事をすると父上と執事が疲れたような顔をして流れ込んできた。
 何かあったのかと聞くと領民が野菜だのフルーツだの、咳にはこれが良いとか、ハチミツは喉に良いとか……。とにかく妾のために体に良いものを持ち寄って集まってきたのだと……。
 そんなゴタゴタしている最中に父上が転移したものだから領民は親子が長年離れ離れだと思っていたらしく、姿を発見して「さすが国王様! 噂通り子煩悩!」みたいな感じで好感度が上がり、差し入れを受けとりながらお礼をいって押し寄せた人たちを怒らせることなく、気持ちよく帰らせることに成功したらしい。

「リアちゃん。君はいったい何したの? 本当にいったい何を……」
「今日からフェスティバルまで妾が屋根と明かりを魔法で作って、アールが街全体を乾かすように風を吹かせてるのじゃよ……。妾が寝るまでの間だけじゃけどな……。それで、その場にいたもの達にお礼と言われて焼きたてのパンとか貰ったんじゃけどアールが風邪引いてるから休ませたいんだぁ~……って伝えたら早く治ってね~見たいに言われてお礼をいって帰ってきたんじゃけど……。そこから伝言ゲームみたいに広まったのかのぉ……」

 しみじみと言うと父上達はため息をついた。

「とりあえず今日の朝御飯は豪華になりましたよ? ミサト牧場さんから頂いた牛乳とヨーグルトにタヤマ養蜂園さんから頂いたハチミツ。ウェルスベーカリーさんから頂いたパンに、ワグナーさん含む農家さんから頂いた野菜をふんだんに挟みました。あとはマーシェさん含む果樹園さんから頂いたフルーツの盛り合わせ。あぁ、アンジェリア様が昨日家に帰る前に朝に出してあげてねと持ってこられたオークとワイバーンの合挽き肉で作った肉団子のスープですよ? 皆様の好意でたくさん頂いてしまいましたからね……。昼も夜も暫くは豪勢ですよ? 早く治しましょうね?」
「そ、そ……れは盛りだくさんで豪華じゃの!」

 妾のお腹に全て入るかが問題じゃけれども……。

「父上~! 妾と一緒に食べませんか? ……父上はお腹一杯?」

 あざとく首をかしげながら対象相手を見上げつつ、首を可愛らしくコテン……と倒し、甘えるように言って笑顔を見せれば男。特に旦那様、つまりはアールなんかイチコロだってコーデリア様が言ってた! じゃから父上もそれなりに効くはず!

「リアちゃん、それは誰に教わったの?」
「…………教わる?」

 不思議そうにしてると父上と執事は何故か嘆いていた。
 あれ? イチコロって嘆くことじゃったっけ? 聞かされてた話と何だか違うような気がする……。

「えっと、父上?」
「あ~……うん、一緒に食べようか……」
「わぁーい」

 えへへ~と、自分の中で精一杯可愛い感じで喜ぶとまたもやため息を吐かれた。どうやら父上と執事は効かないどころか呆れられたようだ。
 父上と執事は効果なしかぁ……。今度、アールにやってみるかな?

「ねぇ、リアちゃん。今のはパパ達以外にはやったらダメだよ?」
「……うん? 父上達以外に? えーと? じゃあ、アールは?」
「ダメに決まってるよね!」
「決まってるのかのっ!?」

 うーむ……。まぁ、呆れてしまう出来だったのじゃし、仕方ないか……。アールにも呆れられたら嫌じゃしの!
 コーデリア様達に下手くそだったらしくて父上に父上と執事以外にやったらダメって言われた旨を伝えよう……。せっかく教えてもらったのに生かせずすまないと……。

「さて、向こうで食べようか……」
「うむ! 妾、お腹ペコペコじゃよ……」
「申し訳ありません。お待たせしてしまいましたね……」

 元気な時は食堂で食べているのだが、現在風邪ひきで引きこもりなので部屋で食べている。
 咳が出るから誰かに移したら怒られるから仕方ない。特に魔人族は病弱……。特に子供。親が大丈夫でも風邪の原因を家に持ち帰ったら家の子供が感染する可能性があると言うことだ。
 寂しくても一人で食べるのが正解なのだろう。いや、本当に寂しいけどな! 妾、大人じゃし? 一人でも平気じゃけど!
 なんなら薬も監視しなくて良いのじゃよ? 妾、捨テタリシナイヨ。







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