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フラワーフェスティバル
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しおりを挟む6月に入り、本格的な雨季に入ると太陽の姿はめっきり見なくなった。
お陰で妾は昼間でも元気一杯!
だがしかし毎日毎日、しとしとしとしと、いやほぼ無音で霧雨。
無駄に濡れるために職員は着替えを持参でやって来る……が、毎日雨なので洗濯物が乾かないのだそうな……。
そして生乾きの独特な臭いと、乾ききっていないが着替えがないのでジメッとした服を着る苦痛。この時期のあるあるじゃな。
「クリスタリア様~……。これ、ヨロシクです」
「あ、これヨロで~す」
領主代理になってから領民の仕事を増やすためと妾が幼いために役所化にした。
住民の婚姻やら滅多にないが離婚やら戸籍に関する管理をする住民課。
毎月の住民や国民に課せられる税金の徴収やら何やら全てを扱う税務課。
アメジール領地の土地や建築物などの管理をする資産管理の管財課。
井戸や森、田畑を含む自然とゴミや店の衛生面等の環境に特化した環境課。
そう言った元は一つだった仕事を四分化してからは潤滑に回り始めた。
故に妾の負担が少なくなるため、子供の体には必要な睡眠もよくとれる。成長する気配は感じないが……。
しかも朝と夜の2部制にしてるので一日中領館内は明るい。
朝は夜の仕事を引き継ぎ、夜は妾がいるので会議やら話し合いをして物事を進めていく。
つまり、何をするにも権限は全て領主代理の妾になるから目の前に積まれた書類でわかるように色んな部署から書類が届く、届く。
これ、ちゃんと終わるのかどうか本気で心配になる。
全くをもって不安でしかない程に積み上げられていた。
「失礼します。これ、今日中にお願いしますね?」
「おい、こっちが先だぞ?」
「いやいや、フェスティバルの実行委員会が先でしょう?」
目の前では三つ巴の戦いの火蓋が今……じゃなく、すでに喧嘩していた。
「ところでフェスティバルの準備は?」
部屋がボロボロになる前に声をかけると皆一様にサムズアップした。
妾、一応領主なんじゃけど……。今、仕事中じゃよ?
お前たち、TPOはどこに置いてきたんじゃ?
……まぁ、夜中のハイテンションってところか……。
「あ、すみません。うっかり……。えっと、準備の方は滞りなく進んでいます。ただ、今年も……と言いますか、屋台含める出店する店の数が多くなってますね。区画整理もしなくてはと思っていますが……」
「あと、花農家もてんてこ舞いみたいですよ? 学園の農業科の生徒が実習と言う授業の一貫でお手伝いしているみたいですが……」
「あ、領主様。フェスティバルに割く予算案のチェックはちゃんと今日中にお願いしますね?」
彼らは仕事に戻っていった。
忙しすぎて猫の手を……借りたところで場が和むだけで確実に仕事が遅れるだけだ。現実逃避をやめて書類に目を通す。
ふむふむ、予算か…………あ! 忘れとったぁ!
「誰か!」
「はい? 何でしょうか?」
秘書のエティが手を止めて側にやって来た。
「つい最近やっとこ街の区画整理が終わったから地図、出来てなくないか?」
「あぁ、それなら今、私がクリスタリア様のお絵描きと父のメモを見ながら地図の原本を作成しましたよ? あってるかチェックしてくださいね?」
思い出してしまったのだから仕事を増やされたところで仕方ない。
いや、忘れてた妾が悪い。うん、妾が……ふっ、父上とのお昼寝がこんなところで悪影響ーーではないが、時間に追われるとは……。
手早く地図をチェックするとソレはかなり正確なものだった。
そして観光用の地図は居住区は大雑把になるものの見事なもので心のなかで称賛した。
「エティ、流石じゃの」
「ありがとうございます。間違いはなさそうなので、これは印刷部に明日から取りかかってもらいましょう」
「それでな? エティ。話に聞くと出店する店が多いらしい……。今回は人族が居なくなって広場などが増えたからそこを会場にしてはどうだろうか。第一会場、第二会場と明記しての……。ちなみにいつもの広場は昨今貴族やら商人。乗り合い馬車など押し寄せてきていたからの……。馬車の停留所と駐車場として機能させようかと思う。奥に止めた馬車が出られないーー何てことがないように通路を作って停車させてはどうだろうか……」
提案をしながら予算をチェックしていた。
「それは良いかもしれませんね。居住区寄りではありますがメインストリートの裏手に広場ができましたからね。片寄らないように店も均等に分けましょう。ちょっと会議をしてきますので、クリスタリア様はこのまま書類のチェックをお願いしますね?」
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