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今日は何の日

9(王城にて)

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 朝、いつもよりもスッキリとした感じで目が覚めた。
 何だかこの感覚は久し振りの様な気がする。

「…………よし! 今年はリアちゃんから手紙は届いてないみたいね……」

 今年も王妃になってしまった、クリスタリアとジェイルらの母親であるローズマリー・アメジール・フランドール(抽選で王族に選ばれるとその1年間は名前の最後にフランドールが勝手についてくる)は部屋を隅々まで汲まなく探し、見つからないことでホッと一息ついた。

 部屋を探し回るのには理由があった。

 理由は簡単。今日は母の日。

 この日の手紙はどんなに愛する愛娘からの手紙と言えども読みたくはないし、見たくもないからである。
 去年までは律儀にもドアに『母上へ』と書かれた大きな書類用の封筒が貼り付けられていた。

 よし! 手紙はない! 今日は1日、何もしないっ! 私、今日は部屋に引きこもることにするわっ!!
 あ、でも手紙が届くかもしれないし、ノックされても絶対に出な…………いいえ、食事の時くらいは出ようかしら……。

 もうすでに引きこもる案件は消え去っていた。
 そんなとき部屋のドアがノックされて身構えると、相手は身支度のためにやって来た者達であった。

「あら、あらあらまぁまぁ! 今日は早起きでございますね」
「そうかしら……。いつも通りだと思うのだけれど……」
「そんなことございませんよ?」

 ニコニコと笑顔で言われたが、続きを口にされることはなかった。
 しかも少し対応が冷たいような気がする……。

 えっと? どう言うことなのかしら……。
 確か、早起きですねと言われて、いつも通りよ? と答えたらそんなことは無いとキッパリと言われた。
 つまり私はいつも早起きではないと言いたいのね?

 着替えを手伝ってもらいながら頭の中で考えていると紅茶を出された。

「熱っ…………でも、いい香りだわ? ありがとう」
「いえ……。王妃様。今日はなんだか別人のようですね……っと、失礼しました」

 頭を下げて彼女達はいそいそと控え室へと下がってしまった。

「別人?」

 そんなこと無いのに……と思いつつ、側にあった本を読みながら朝食までの時間をゆっくり過ごすことにした。

 そして朝食の時間となり、食堂の方へと移動すると何故か旦那様と愛息子のジェイルを含めた様々な人達に驚くような顔を向けられた。

「何かしら……。私の顔に何かついてますの?」
「は、母上? なにか悪いものでも食べられたのですか?」
「あら、いつもこうだったじゃないの」

 席に付くと旦那様含む全員に「はあっ!?」と言う声を浴びせられた。

「いつも……。いつも、ね……。私の記憶ではマリーはかれこれ50年近く早起きなどしたこと無いと思うが?」
「えぇ、そうですね。私の記憶も同じです」

 旦那様とジェイルが話しているのを誰の話だと思いながら出された朝食に目をやる。
 テーブルの上には爽やかな朝に食べる食事とはほど遠いレアのステーキが出された。

「……ステーキ……? 朝から随分と重いわね……」
「……はぁっ? だっ、誰かっ! 医者っ! 早くっ!!」
「薬師も至急呼んでっ!」

 旦那様とジェイルが慌てていると「大丈夫じゃよ?」とずっと聞きたかった可愛らしい声が聞こえた。

「えっ? ……リアちゃん! リアちゃんじゃないかっ! こんな朝からどうしたんだい? 朝はリアちゃんには眩しいだろう? 苦しくはないかい?」
「姉上っ! 朝からどうしたんです? まだ日が高くなってないから危険です! 日に当たるかもしれないんですよ!? 朝はちゃんと寝てないとダメじゃないですかっ!」

 旦那様親バカジェイルシスコンに守られながら日にあたらないようにとクリスタリアは旦那様が身に付けていたマントを頭から被せられ、その間に食堂の窓には使用人達によってカーテンが引かれ、燭台には火が灯っていた。

「リアちゃん! 会いたかったわ! 体は大丈夫なのっ!?」

 私も駆け寄ると、パッチリとした大きな瞳と目があった。

「ふむ、浄化効果が早速出てきたようで良かったのじゃよ」

 その言葉に皆は一様に「ん?」と首をかしげていた。

 何で今、浄化効果と言われたのかしら……。

「いやなぁ? なんか皆からの報告でさすがに母上が変だな……と思ったからの? 一応、過去の報告書を調べ直して、丁度49年前から報告書の内容が変わってきての……。もしかしてと思ってお守りを作ったのじゃよ。後で渡そうかと思ったのじゃけど部屋に忍び込んだら色んな所から呪いまじないが施されていた物があったからの……。眠っている間に申し訳ないとは思いつつも腕にブレスレットを着けさせてもらったんじゃよ……」

 ふと自分の腕を見ると見たことのないブレスレットが……。
 それは透明な石、乳白色の石、紫の石が規則正しく並んでいるブレスレットをしていた。

「まぁ! とても綺麗ね……」













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