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王の勅命により……1
しおりを挟むとある日。王より第四騎士団に勅命を与えられた。
なんでも地方の町や村で子供の誘拐が多発しているらしいのだ。この国では禁じられているはずの奴隷。つまりは他国から入り込んだ奴隷商人に誘拐犯が子供を売り、そして奴隷商人が買い、他国で売る。
見極めてもしも奴隷関連であれば即座に奴隷商人や売人は拘束し、子供たちは保護するように──。
◆
自分の所属している第四騎士団は騎士団の中でも小規模である。団長率いる戦闘要員、自分を含む偵察班、調理や野営設置などの雑務や書類作成や会計等の雑務する見習い騎士の侍従。実はどの騎士団も戦闘や偵察の団員よりも侍従が多い。特にこの第四騎士団は小規模とはいえもし他国との戦争となってしまった場合、斥候部隊となるために偵察班所属でも、侍従だとしても普通の騎士並み以上には戦えなければいけない。そしてメンバーは貴族以外に平民などごちゃ混ぜ。しかしどの騎士団よりも仕事をこなしているためにエリート部隊とも言われている。
ただ単に第一騎士団は貴族で固められ、尚且つ強さも求められるエリート中のエリート。王や王妃の身辺警護を担当している。
第二騎士団も第一よりは劣るがこちらも貴族の子息達で固められ、王子や王女が出掛ける際の護衛を勤めている。
第二騎士団は時々、本当に時々なのだがモンスターの討伐にも出掛ける。第一と第二の二つの騎士団は俗にいう世襲制で親の後を長子が継ぐのだけれども、何と言うべきなのか迷うが蛙の子は蛙であれという希望なのだろうか──。
そして第三騎士団も貴族で固められているが後継ぎやスペアでもない子供が集まるお飾り騎士団。悪く言えば騎士団のなかで最も貧弱で、怠けているのが多いために王都周辺の巡回警備しか出来ない。死んだら死んだで少し面倒くさい。それが第三騎士団なのである。団長と副団長、そして幹部は実力があるのだが下がなにもしないのだから仕方ない。
それ以外に第五~七は第四よりは規模は大きく、モンスターなどの討伐などがメインの仕事である。
第八は第四と同じく小規模であるがこちらは女騎士のみの騎士団である。女だけということで何故か第三の下っぱからは何故かバカにされているが実はうちと同じ役目を持っている。つまり男の俺達ではできない仕事を第八が。女である彼女達ではできない仕事を第四が──。時々合同で仕事をすることもある。敵国のパーティ潜入とか……。とりあえず自分としてはとてもやり易い相手だと言うのは間違いない。
仕事は臨機応変に持ちつ持たれつで、しかも彼女たちは女であるが故にえげつない攻め方をする。見ているだけでも少しトラウマものである。それをうちの団長も知っていて第三の下っぱが絡んでいるのを見るたびに「平和だね~」と笑っているのが性格の悪さを醸し出している。
◆
自分が率いる偵察班は数名の侍従を連れて団長達よりも先に王都を出発し、目的の町というか村を目指す。そしてたどり着けば密かに活動するために森に身を隠しながら個々で情報を集め始める。こんなことはいつもの事なので皆手慣れたものだ。後から来る団長たちはと言うと街道沿いに時おり現れるモンスターなどの討伐をしながらゆっくりと進む。これはモンスター討伐の任を命じられた騎士団なのだと周辺の町や村の住人やターゲットである奴隷商人達に思わせるためだ。だが俺を含めた団員の全員は知っている。
これは擬態でもなんでもなく、ただの団長のストレス発散であると!
そうして俺達が前乗りして情報を集め始めてから数日後。奴隷商人のかくれ家と断定付けた頃、ゆっくりと移動しながら殺って来た(表現は絶対間違ってはいない)団長達が到着した。なんと言うべきなのだろうか……。ストレスフリーになったのか団長のグレンは王子のごとく綺麗な顔で微笑んでいる。しかし彼の顔は何処と無く物足りなさそうに見えるのだが、他のメンバーはかなり疲れたような顔をしていた。
──あぁ、道中結構な数のモンスターを殺ってきたのかな……。この分だと帰りの道のりも何て言うか大変そうだな。
副団長のアンドレアがげんなりとしているが俺はあえて無視し、その場で報告をすることにした。だって後で「あの時どうしてすぐに言わなかったんだい?」と黒い笑みを浮かべてネチネチと執拗に質問されたら面倒くさい。しかもこの団長の気分次第で数日に渡るから面倒くさい。
昼間とはいえ仕入れた情報から今回はどうやら商人は買い入れらしく、奴隷としてのオークションという取引現場は取り押さえられそうにないことを告げると、なら今すぐ奴隷商人は捕獲してしまおうと暴れ足りなかった様子の団長の一存でその場で攻めこむこととなった。
皆、疲れてるかもしれないけどもうちょっと頑張ろっか──。
全く、羊の皮を被った狼みたいなやつだよなぁ……。
攻め入った俺達騎士に対して奴隷商人は複数名の用心棒を雇っていたが武器による応戦のため容赦なく切りつける。仲間が血を流して倒れる度に奴隷商人は顔を青くして逃げ回っていた。ポヨンポヨンと上下に動くやや肥満体は中々すばしっこかった。
大丈夫! 俺達はお前を殺しはしないから! その先の事は知らないけどな!
心のなかで笑顔でサムズアップしてしまう。でもさ、仕方ないよね~……。だって、お前はこの国では禁止されてる奴隷商人だもの!
しばらくして捕まった奴隷商人は「無実無根だ」等と喚き、煩いので猿轡をさせた。だって舌噛みきられたらやだし~……。それに他に捕まえた奴を脅すとすぐにゲロったから正直喚くだけの商人は役に立たないし? なので商人は部下に任せてゲロった奴に隠し部屋を案内させた。
全く、判りづらい細工なんかをしやがって……。城じゃねぇんだから無駄なことすんじゃねぇよ! そんなことを思いつつ後ろをついていくと、団長がドアを開けた瞬間、何者かに襲われた。もしかして見張り役でもいたのだろうか──。
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