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第10章 そこのけそこのけ男の娘が通る

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「うん、思ってたよりも柔らかジューシー!」
「御馳走様でした。美味しかったわね♪ 肉の厚みを戻したのは正解だわ」
「もの足りねぇ……」
「逆にお腹が空きますね」
「もっと食べたい……」

 なんかゼノさんとミリアム。本日の姉のお付きのバージニアさんがなにか言っているが無視だ、無視!
 これからお昼御飯の時間があるんだから満腹になんてできないし、させられない。
 いろんな人に怒られるのは結局は俺なんだもん。

「ねぇ、ルルちゃん。そろそろこれに手を出してみない?」

 姉に見せられたのは自身の手。つまりハンドケア。そして爪。
 もしかして昔は爪紅と呼ばれたらしいマニキュアを作ろうぜ! ということだろうか?
 だとしたら個人的にはそれを作る前に作らねばならないものが多い気がするんだが──。
 例えば石鹸とか、化粧水とか、香水とか?
 あ、香水は臭くなりそうだからなくても別に良いか……。
 だって香水って最初は少量着けてたのに鼻が香りに慣れちゃって匂いを感じにくくなっていくからどんどんつける量が多くなっていって、最終的には周りの人から臭くて変な目で見られるという悪循環になるんでしょ?

 ──いらなくね?

 それにしてもハンドケアに爪のケアかぁ……。
 確かにツヤツヤした爪のが健康そうだし、お洒落だよねぇ……。
 ハンドクリームなら兄が持ってるはずだけど──あれ? 兄はもしかして秘密にしてるのか?

「えーっと、マニキュアを作るってこと?」
「それは確かに欲しいけど、私は今ものすごく爪切りが欲しいのよね……」

 それは兄に頼んだ方がスパッと綺麗に切れるものを作ってくれそうな気がしますが?
 もしくはお母さんのスキルがアイテム作るとかそんな感じのじゃなかったっけ?
 すっかり忘れてたお母さんのスキル。
 お母さんに頼んだら俺の一番欲しい『めぐすりの木』の種子なり苗を作ってくれないかなぁ……。

「あー、それもそうね……。今度、お母さんが来たときに頼んでみようかしら……。いや、その前にヤトに相談よね。じゃぁ、今日はそうねぇ……。色つきリップとかに挑戦してみようかしらね」
「そもそもどうやって色つけるの? この世界に安全性の高い色素というものは何もなくない? 服を染めるものはありそうだけど肌に使って大丈夫なのかわからないし……」

 鉱石とか使ってる可能性のが高いもんね。
 鉱石の顔料って砒素とか水銀が含まれたりするから怖いの。
 それに現代人からしたら昔使われてた白粉に鉛白っていうのがあって名前の通り材料は鉛。
 作り方はなんとなぁーく知ってるけど有毒白粉を大事な人におすすめなんかしたくない。
 画材として使う分には良さそうだけど、人体には無毒の色素を使いたいなぁ……。

「え、えーと……ほら、そこら辺は野菜やハーブを煮出して煮詰めて……とか……」

 そう言えば小学校の実験で紫キャベツの色素をとって入れる液体によって色が変わるとか言う面白いのやったなぁ……。
 煮出した色素をドライで乾燥させて、乳鉢擬きで細かい粉にして? 手持ちのリップを溶かして混ぜ混んでみればいいの?
 それとも蜜蝋を手に入れてあるとか?




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