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本当に迎えに来ちゃったよ
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男爵領に戻った僕は今まで通りに父と長兄が治める領地で手伝いをする生活を送っている。
長兄も結婚して子供ができて、次兄は知り合いだと言ってたあの医師と結婚をして王都で暮らしている。
病院でお世話になってる時に居づらい空気に何度かなったから2人が付き合ってたことは知ってたけどね。
まぁ2人の兄が幸せそうで良かった良かった。
僕はといえば男爵領に戻ってからよその貴族からお見合いの話がいくつか来てたんだけど何故かお見合いすると相手に運命的な出会いがあったとか、実は親に内緒で付き合ってた人がいて駆け落ちしてしまったとかで何故だかうまくいかなくて、両親も兄も僕が結婚してもしなくてもどちらでもいいよと言ってくれるからお言葉に甘えて自由に生きることにした。
長兄には可愛くて賢い子供たちが3人いるし僕が独身でも何の問題もなさそうだ。
と言うわけで僕は男爵領での雑用を請け負って父や兄のサポートをしたり、甥っ子たちの面倒を見るのを手伝ったりとまぁまぁ忙しく暮らしていた。
そんなこんなで王都から戻ってきてあっという間に10年経った。
カリタスの言った言葉は覚えていたけど実のところ僕は全く信じてなかった。
だって子供の言ったことだし、あれからカリタスは金色の瞳が証拠で隣国の王子だと言うことがわかり隣国へ帰ったと聞いている。
当時謀反を起こそうとした奴らが王子を人質にしようと攫ってそこで不治の病がわかって打ち捨てたと証言してたから死んだと思われていたらしく生きていたとわかった時隣国はお祭り騒ぎになり、このホワイトローズ王国との国交が始まった。
大変喜ばしいことだしきっとカリタスも本来の場所に戻ることができてきっと幸せに暮らしていることだろう。
僕はそんなカリタスの幸せを祈るだけだ。
もう前世の漫画とは完全に話がかけ離れていて僕の記憶も曖昧になっているからこの先は自分で人生を作っていけるのだと考えていた。
神子のミラは王様に諭されて王子と宰相息子と騎士団長息子が面倒を見る形で治療院を開設して日々貴族平民を問わず治療しているらしい。
王子は末っ子だし、宰相も騎士団長も世襲制じゃないからね。
それでも王族と上位貴族だから魔力は豊富だし楽しく気持ち良く暮らせてるならいいんじゃなかな?僕には関係ないしね。
そうして僕はいつも通り近所の農園へお手伝いに行こうとしていたんだ。
すると護衛の騎馬に囲まれて立派な馬車がこちらへ向かってやってきてうちの門のまえに停まった。
馬車の御者がサッと降りてきてうやうやしく扉を開ける。
中から背の高い金色の瞳をした美丈夫が降りてきた。
そして僕を見つけると満面の笑みで走ってくる。
「モーブル!やっと迎えに来れたよ!あぁ、会いたかった!」
と言って抱きしめられた。
「カリタス……なのか?」
「そうだよ。モーブル迎えに行くっていったよね?まさか忘れちゃってた?」
悲しげな金色の瞳が僕を覗き込む。
「いやっ忘れてはいないけどまさか本当に迎えにくるなんて……。」
「俺は忘れてないよ。むしろモーブルを迎えに行くことだけを励みに生きてきたんだ。」
うっとりとした顔で僕を見つめて抱きしめた腕はますます強くなる。
表の騒ぎに気がついた両親と長兄が家から出てきた。
「モーブル何の騒ぎだ?というかそちらの方は……?」
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私はカサブランカ王国の第三王子カリタス・カサブランカと申します。」
と礼をとった。
隣国の王子がこんな貧乏男爵の一家にそんな礼を取るなんて両親も兄もビックリしてしまいオロオロしている。
とりあえず一旦屋敷に入ってもらうことになった。
男爵家と言っても小さなもんなのでお客様をお通しするような応接室もなく、いわゆる家族が集うリビングへ案内する。
家庭的と言うか庶民的な家の中を興味津々にみるカリタス、その間も僕の腰に手を回したままだ。
上座に当たるソファへ促すと当然のように僕を誘って隣同士ピッタリくっついて座る。
家族もポカンとしたまま僕たちを見てる。
執事がお茶を持ってきてサーブして下がる。
こんな高貴な身分の人会ったことないからちょっとビビってる。
「お義父様お義母様お義兄様私は王都でモーブルに助けられてそこからずっとお慕いしていました。私が成人を迎える16歳になったら迎えに行くと約束をしていたのです。どうか私たちの結婚をお許しください。」
「モーブル!そんな約束してたのか?聞いてないぞ。」
ビックリ顔からなかなか戻らない父が慌てて僕に聞いてくる。
「いやぁ、約束っていうか当時僕は16歳になったところだったし、殿下もまだ6歳になられたところでの口約束だったから……。本当に迎えに来ちゃうとは……」
一方的に言われてたことは伏せておく。
「モーブル、僕は真剣だったのに信じてなかったの?」
悲しげな顔で僕を見つめる。そうしながらも僕の腰を抱く腕は巻きついたまま離してくれそうもない。
「モーブルとご両親さえ良ければこのままカサブランカ王国へ連れて行きたいのですが……。」
ちょっと急展開すぎないか?それは家族みんな思ってたことで、すぐに返事ができなかった。
「では、今夜一晩時間を持ちましょう。モーブル今夜は君の部屋に泊めてくれないかな?」
え?泊まる?僕の部屋に?王族が?無理じゃね?
「王子を泊められるような部屋ではないから無理ですよ。」と正直に答えるも
「大丈夫、僕は数年間孤児院で暮らしたことがあるし、最近も騎士団の訓練に付き合って野営したくらいだからそこに比べたらモーブルの部屋はきっと天国だよ。」
もう僕がカサブランカ王国へ行くことは決定しているようだ。
両親は他国とは言え王族の言うことには逆らえないと思ったのか
「大したおもてなしはできませんが本日はお泊りください。モーブルはそれで良いのだな?」
父は僕に確認をする。
僕自身はカリタスが本気だったことに驚いたけどカリタスのことは嫌いじゃないしむしろ好きだと思う。
このまま1人で自由に生きていこうと思ってたところだしカリタスと隣国へ行ってみるのも悪くない。
カリタスからしたら身分はもちろん年齢もオジサンなはずなのに良いのかな?と思うくらい。
「父さん、僕は大丈夫。確かに少し急で驚いているけどカリタス様が求めてくださるなら着いて行こうと思う。」
すると父はカリタスに頭を下げた。
「王子からしてみたら随分とうのたった息子ですがよろしくお願いいたします。」
と息子に対して失礼な発言をして……。
と言うわけで僕は農園のお手伝いどころではなくなり部屋の整理をすることになり、母はメイドたちと今夜の食事の準備に大忙しになったのだった。
カリタスは僕にくっついていたかったようだけど、さすが王族として教育をされているだけあるのか、父と兄の仕事を見たいと言って出かけて行った。
父と兄の緊張した顔は忘れられないだろうな。
部屋の片付けもあらかた終わり、父と兄とカリタスも仕事から帰ってきた。
出かけていく時はあんなに悲壮な顔してたのに帰ってきた父と兄はそれはそれは晴れやかな顔をしている。
「領地の仕事でいくつかカリタス殿下から素晴らしいアドバイスをいただいたんだ。思いもよらない意見で効率がこれで何倍もあがるよ。」
お礼を言いながらカリタスに頭を下げた。
「今回はたまたま私がカサブランカ王国で行った仕事と似ていたから思いついただけですので」
と少し照れたようなカリタス……イケメンが照れると可愛いんだな。
夕食は母とメイドがものすごく頑張ったようで、この男爵領で採れる野菜や最高級の肉に川魚などを使ったすごいご馳走に領地で作られているワインの中でも一番の出来の年のものを出してくる力の入れっぷり。
普段だと出来の良いものは外へ売りに出すから自分たちは安物で良いと言う母なのに家族での最後の夕食であると同時に、ご馳走するのが僕が嫁ぐ王族ということもあり僕が王子に対して少しでも肩身の狭い思いをしないように気遣ってくれたのだと感じてジーンとしてしまった。
家族とこうして過ごす最後の夜になるからと食後もしばらく団欒が続いたのだった。
その後カリタスには客間で寝てもらおうとしても頑なに僕の部屋で寝ると聞かず、宿を手配するつもりだった御者と護衛の方に客間へ泊まってもらうことになった。
この国は護衛なんて本来いらないくらい平和だし、カリタス自身が物凄く強いらしくて安心して良いよなんて言われてしまう。
と言うわけで部屋へ2人でやってきたわけですが湯浴みも済ませて寝間着に着替えベッドへ入る。
僕のベッドはセミダブルサイズで僕1人なら余裕の大きさなんだけど、カリタスは身長はもちろん身体付きも着痩せするようで薄い寝間着越しに筋肉の隆起がわかるくらいに逞しい。
カリタスはサッサとベッドに入って布団を剥いでこっちへおいでと誘ってくる。
僕は10歳も年下のしかもカッコいい王子に艶っぽい顔して誘われてドキドキしてしまって動けなくなってしまった。
するとカリタスはベッドからするりと降りて僕に近寄るとフワッと抱き上げてしまった。
お姫様抱っこ!!!
フワリとベッドへ下ろされてその横へするりと横たわるカリタス。
全く隙のない動きで僕の腰を抱き寄せてベッドでピッタリくっつき合う。
ピャー!!!いい匂いがする!うちのシャンプーと石鹸使ったはずなのに?なんでこんないい匂いなんだ?
思わず押しつけられた胸元の匂いをクンカクンカと嗅ぐ。ウットリするなぁ。
「ねぇ、モーブルは僕を煽ってるの?」
カリタスが形の良い柳眉を寄せながら聞いてくる。
「煽るって何を?」
と聞いた途端に目に前のカリタスの胸筋に気付いてビックリする。
!!!!!無意識!!!!!
「わぁ!そんなつもりはなかったんだけど!」
慌てて離れようとするけど、カリタスはびくともしないで僕を抱きしめる。
「モーブルが僕の腕の中にいるなんて、夢みたいだ。やっと捕まえた。」
そう言って僕の顔を見つめてウットリしてる。
僕は多少は整ってるけどモブ顔だよ?カリタスの方が数百倍かっこいいし、きっと周りに美形は山ほどいるはず。
そんなことをぼんやり考えていたら不意に唇に柔らかいものが当たった。
カリタスがキスしてきたのだ。
へっ?って思った瞬間さらに唇を啄まれる。
閉じた唇を舌でノックされて緩んだ瞬間に舌がするりとはいってきた。
「んっ……」
口の中をカリタスの舌は自由自在に動き回り、時に僕の舌を絡めとる。
ピチャピチャと水音がして溢れる唾液をゴクンと飲み込んだ。
お互いの魔力が馴染んだ唾液を飲んだら頭が痺れるくらい気持ちよかった。
魔力の相性が良いのかもしれない……。
鼻で息を鼻で息を……と思いながらもだんだんと苦しくなりカリタスの胸をドンドンと叩く。
やっと唇を離してくれたカリタスは僕を見つめてニヤリと笑う。
だが目の奥が笑っていないには一目瞭然で、何やらギラギラした気配を感じてゾクリとする。
しばらく見つめ合った後カリタスは僕の肩に額を押し付けてフーっと息を吐いた。
「これ以上はここではダメだな。この続きは国へ帰ってからだな。」
そう言って抱きしめ直してベッドへ潜り込んだ。
僕もなんだかドキドキしてお腹の奥がキュンキュンしてなかなか寝付けなかったけど次第にカリタスの身体に安心して眠ってしまったようだった。
長兄も結婚して子供ができて、次兄は知り合いだと言ってたあの医師と結婚をして王都で暮らしている。
病院でお世話になってる時に居づらい空気に何度かなったから2人が付き合ってたことは知ってたけどね。
まぁ2人の兄が幸せそうで良かった良かった。
僕はといえば男爵領に戻ってからよその貴族からお見合いの話がいくつか来てたんだけど何故かお見合いすると相手に運命的な出会いがあったとか、実は親に内緒で付き合ってた人がいて駆け落ちしてしまったとかで何故だかうまくいかなくて、両親も兄も僕が結婚してもしなくてもどちらでもいいよと言ってくれるからお言葉に甘えて自由に生きることにした。
長兄には可愛くて賢い子供たちが3人いるし僕が独身でも何の問題もなさそうだ。
と言うわけで僕は男爵領での雑用を請け負って父や兄のサポートをしたり、甥っ子たちの面倒を見るのを手伝ったりとまぁまぁ忙しく暮らしていた。
そんなこんなで王都から戻ってきてあっという間に10年経った。
カリタスの言った言葉は覚えていたけど実のところ僕は全く信じてなかった。
だって子供の言ったことだし、あれからカリタスは金色の瞳が証拠で隣国の王子だと言うことがわかり隣国へ帰ったと聞いている。
当時謀反を起こそうとした奴らが王子を人質にしようと攫ってそこで不治の病がわかって打ち捨てたと証言してたから死んだと思われていたらしく生きていたとわかった時隣国はお祭り騒ぎになり、このホワイトローズ王国との国交が始まった。
大変喜ばしいことだしきっとカリタスも本来の場所に戻ることができてきっと幸せに暮らしていることだろう。
僕はそんなカリタスの幸せを祈るだけだ。
もう前世の漫画とは完全に話がかけ離れていて僕の記憶も曖昧になっているからこの先は自分で人生を作っていけるのだと考えていた。
神子のミラは王様に諭されて王子と宰相息子と騎士団長息子が面倒を見る形で治療院を開設して日々貴族平民を問わず治療しているらしい。
王子は末っ子だし、宰相も騎士団長も世襲制じゃないからね。
それでも王族と上位貴族だから魔力は豊富だし楽しく気持ち良く暮らせてるならいいんじゃなかな?僕には関係ないしね。
そうして僕はいつも通り近所の農園へお手伝いに行こうとしていたんだ。
すると護衛の騎馬に囲まれて立派な馬車がこちらへ向かってやってきてうちの門のまえに停まった。
馬車の御者がサッと降りてきてうやうやしく扉を開ける。
中から背の高い金色の瞳をした美丈夫が降りてきた。
そして僕を見つけると満面の笑みで走ってくる。
「モーブル!やっと迎えに来れたよ!あぁ、会いたかった!」
と言って抱きしめられた。
「カリタス……なのか?」
「そうだよ。モーブル迎えに行くっていったよね?まさか忘れちゃってた?」
悲しげな金色の瞳が僕を覗き込む。
「いやっ忘れてはいないけどまさか本当に迎えにくるなんて……。」
「俺は忘れてないよ。むしろモーブルを迎えに行くことだけを励みに生きてきたんだ。」
うっとりとした顔で僕を見つめて抱きしめた腕はますます強くなる。
表の騒ぎに気がついた両親と長兄が家から出てきた。
「モーブル何の騒ぎだ?というかそちらの方は……?」
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私はカサブランカ王国の第三王子カリタス・カサブランカと申します。」
と礼をとった。
隣国の王子がこんな貧乏男爵の一家にそんな礼を取るなんて両親も兄もビックリしてしまいオロオロしている。
とりあえず一旦屋敷に入ってもらうことになった。
男爵家と言っても小さなもんなのでお客様をお通しするような応接室もなく、いわゆる家族が集うリビングへ案内する。
家庭的と言うか庶民的な家の中を興味津々にみるカリタス、その間も僕の腰に手を回したままだ。
上座に当たるソファへ促すと当然のように僕を誘って隣同士ピッタリくっついて座る。
家族もポカンとしたまま僕たちを見てる。
執事がお茶を持ってきてサーブして下がる。
こんな高貴な身分の人会ったことないからちょっとビビってる。
「お義父様お義母様お義兄様私は王都でモーブルに助けられてそこからずっとお慕いしていました。私が成人を迎える16歳になったら迎えに行くと約束をしていたのです。どうか私たちの結婚をお許しください。」
「モーブル!そんな約束してたのか?聞いてないぞ。」
ビックリ顔からなかなか戻らない父が慌てて僕に聞いてくる。
「いやぁ、約束っていうか当時僕は16歳になったところだったし、殿下もまだ6歳になられたところでの口約束だったから……。本当に迎えに来ちゃうとは……」
一方的に言われてたことは伏せておく。
「モーブル、僕は真剣だったのに信じてなかったの?」
悲しげな顔で僕を見つめる。そうしながらも僕の腰を抱く腕は巻きついたまま離してくれそうもない。
「モーブルとご両親さえ良ければこのままカサブランカ王国へ連れて行きたいのですが……。」
ちょっと急展開すぎないか?それは家族みんな思ってたことで、すぐに返事ができなかった。
「では、今夜一晩時間を持ちましょう。モーブル今夜は君の部屋に泊めてくれないかな?」
え?泊まる?僕の部屋に?王族が?無理じゃね?
「王子を泊められるような部屋ではないから無理ですよ。」と正直に答えるも
「大丈夫、僕は数年間孤児院で暮らしたことがあるし、最近も騎士団の訓練に付き合って野営したくらいだからそこに比べたらモーブルの部屋はきっと天国だよ。」
もう僕がカサブランカ王国へ行くことは決定しているようだ。
両親は他国とは言え王族の言うことには逆らえないと思ったのか
「大したおもてなしはできませんが本日はお泊りください。モーブルはそれで良いのだな?」
父は僕に確認をする。
僕自身はカリタスが本気だったことに驚いたけどカリタスのことは嫌いじゃないしむしろ好きだと思う。
このまま1人で自由に生きていこうと思ってたところだしカリタスと隣国へ行ってみるのも悪くない。
カリタスからしたら身分はもちろん年齢もオジサンなはずなのに良いのかな?と思うくらい。
「父さん、僕は大丈夫。確かに少し急で驚いているけどカリタス様が求めてくださるなら着いて行こうと思う。」
すると父はカリタスに頭を下げた。
「王子からしてみたら随分とうのたった息子ですがよろしくお願いいたします。」
と息子に対して失礼な発言をして……。
と言うわけで僕は農園のお手伝いどころではなくなり部屋の整理をすることになり、母はメイドたちと今夜の食事の準備に大忙しになったのだった。
カリタスは僕にくっついていたかったようだけど、さすが王族として教育をされているだけあるのか、父と兄の仕事を見たいと言って出かけて行った。
父と兄の緊張した顔は忘れられないだろうな。
部屋の片付けもあらかた終わり、父と兄とカリタスも仕事から帰ってきた。
出かけていく時はあんなに悲壮な顔してたのに帰ってきた父と兄はそれはそれは晴れやかな顔をしている。
「領地の仕事でいくつかカリタス殿下から素晴らしいアドバイスをいただいたんだ。思いもよらない意見で効率がこれで何倍もあがるよ。」
お礼を言いながらカリタスに頭を下げた。
「今回はたまたま私がカサブランカ王国で行った仕事と似ていたから思いついただけですので」
と少し照れたようなカリタス……イケメンが照れると可愛いんだな。
夕食は母とメイドがものすごく頑張ったようで、この男爵領で採れる野菜や最高級の肉に川魚などを使ったすごいご馳走に領地で作られているワインの中でも一番の出来の年のものを出してくる力の入れっぷり。
普段だと出来の良いものは外へ売りに出すから自分たちは安物で良いと言う母なのに家族での最後の夕食であると同時に、ご馳走するのが僕が嫁ぐ王族ということもあり僕が王子に対して少しでも肩身の狭い思いをしないように気遣ってくれたのだと感じてジーンとしてしまった。
家族とこうして過ごす最後の夜になるからと食後もしばらく団欒が続いたのだった。
その後カリタスには客間で寝てもらおうとしても頑なに僕の部屋で寝ると聞かず、宿を手配するつもりだった御者と護衛の方に客間へ泊まってもらうことになった。
この国は護衛なんて本来いらないくらい平和だし、カリタス自身が物凄く強いらしくて安心して良いよなんて言われてしまう。
と言うわけで部屋へ2人でやってきたわけですが湯浴みも済ませて寝間着に着替えベッドへ入る。
僕のベッドはセミダブルサイズで僕1人なら余裕の大きさなんだけど、カリタスは身長はもちろん身体付きも着痩せするようで薄い寝間着越しに筋肉の隆起がわかるくらいに逞しい。
カリタスはサッサとベッドに入って布団を剥いでこっちへおいでと誘ってくる。
僕は10歳も年下のしかもカッコいい王子に艶っぽい顔して誘われてドキドキしてしまって動けなくなってしまった。
するとカリタスはベッドからするりと降りて僕に近寄るとフワッと抱き上げてしまった。
お姫様抱っこ!!!
フワリとベッドへ下ろされてその横へするりと横たわるカリタス。
全く隙のない動きで僕の腰を抱き寄せてベッドでピッタリくっつき合う。
ピャー!!!いい匂いがする!うちのシャンプーと石鹸使ったはずなのに?なんでこんないい匂いなんだ?
思わず押しつけられた胸元の匂いをクンカクンカと嗅ぐ。ウットリするなぁ。
「ねぇ、モーブルは僕を煽ってるの?」
カリタスが形の良い柳眉を寄せながら聞いてくる。
「煽るって何を?」
と聞いた途端に目に前のカリタスの胸筋に気付いてビックリする。
!!!!!無意識!!!!!
「わぁ!そんなつもりはなかったんだけど!」
慌てて離れようとするけど、カリタスはびくともしないで僕を抱きしめる。
「モーブルが僕の腕の中にいるなんて、夢みたいだ。やっと捕まえた。」
そう言って僕の顔を見つめてウットリしてる。
僕は多少は整ってるけどモブ顔だよ?カリタスの方が数百倍かっこいいし、きっと周りに美形は山ほどいるはず。
そんなことをぼんやり考えていたら不意に唇に柔らかいものが当たった。
カリタスがキスしてきたのだ。
へっ?って思った瞬間さらに唇を啄まれる。
閉じた唇を舌でノックされて緩んだ瞬間に舌がするりとはいってきた。
「んっ……」
口の中をカリタスの舌は自由自在に動き回り、時に僕の舌を絡めとる。
ピチャピチャと水音がして溢れる唾液をゴクンと飲み込んだ。
お互いの魔力が馴染んだ唾液を飲んだら頭が痺れるくらい気持ちよかった。
魔力の相性が良いのかもしれない……。
鼻で息を鼻で息を……と思いながらもだんだんと苦しくなりカリタスの胸をドンドンと叩く。
やっと唇を離してくれたカリタスは僕を見つめてニヤリと笑う。
だが目の奥が笑っていないには一目瞭然で、何やらギラギラした気配を感じてゾクリとする。
しばらく見つめ合った後カリタスは僕の肩に額を押し付けてフーっと息を吐いた。
「これ以上はここではダメだな。この続きは国へ帰ってからだな。」
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