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12 汐李サイド②
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結局僕は朔の検診について行けなかった。
迎えに行ったら朔のお母さんに叱られた。
両親ときちんと話し合うようにと。
僕は朔の両親が大好きだ。2人の話は僕の心に素直に響く。
朔のお母さんは怒ってた。僕の両親が朔を利用してお見合いを勧めさせたことに。
そして朔のお母さんは一先ず小鳥遊家のことはまず小鳥遊家の家族できちんと納得いくように決めていくべきだと言った。
僕はとりあえず家へ帰り、キャンセルされていなかったお見合いに行った。
今回のお見合いはなかなかしつこかった。
断っているのに、とにかくまた会って欲しいと食い下がる。冗談やめてよ、お見合い相手と再度会うなんて外堀埋められるのが目に見えてる。
思わず「あなたと今後会うことはありません!」と言ってしまった。
こう言うお見合いは政略結婚を含むから断るときも言葉を選ばないといけない。
でも僕は限界だった。会社の仕事はちゃんとするから結婚とか番とかはもう放っておいてくれよ…。
あぁ朔に会いたい。
月曜日登校する車内で朔の首に顔を押しつけてスンスンと匂いを嗅ぐ。
朔はベータなのに良い匂いがする。
アルファやオメガのフェロモンは落ち着かないけど朔は嗅げば嗅ぐほど落ち着く匂い。
夢中でスンスンしてるとくすぐったいみたいでいつも真っ赤な顔で「ヒャッ」ってかわいい声をだす。
そんなかわいい声他で出さないでよ。というと
「こんなことするの汐李しかいないよ!」っていつもむくれる。
かわいいなー朔は。本当にかわいい。閉じ込めたい。そんなことばっかり考えてたからむくれた後で悲しい顔をしていたことに気が付かなかった。
お見合いを乱暴に断ってから両親は僕にお見合いの話をしなくなった。
そのかわり仕事を任される量が増え僕はますます多忙になった。
そんな中でも朔への思いはどんどん強くなり、仕事以外の時間の許す限り僕は朔から離れなかった。
中学3年生の年末に差し掛かかっていたある日、学校から帰ると第一秘書の高山さんが慌ててやってきて急ぎの仕事が入ったからすぐに会社へ来てほしい言う。
一応まだ中学生だから学校のある日は仕事は無いはずだった。
だから珍しいなとは思ったんだ。実際仕事もそこまで慌てる内容ではなかったし。
まさかそれが朔から僕を引き離すためだったとはその時は思いもよらなかった。
両親がお見合いをすすめなくなったから油断していたのかもしれない。
それが両親の作戦だったのだ。僕の意志を尊重したわけではなく、尊重した振りをして欺いた。
高校の入学式の日、朔が僕の前から姿を消した。
中等部から高等部に上がるだけだから特に変化もないねーなんて言って昨日別れたのに。
次の日朔は居なくなってた。
僕は半狂乱になって朔のお母さんに詰め寄った。
おばさんは一先ず落ち着きなさいと僕をギュッと抱きしめてから椅子に座らせた。
そしてお茶を淹れてくれた。
お茶はとても美味しくて僕の心はだんだん落ち着いてきた。
朔は全寮制の高校に進学したこと。
それは僕の近くにこれからも居られるようにするために必要なこと。
汐李にオメガとして幸せになってほしいと思っていること。
汐李だけでなく汐李の家族も幸せになってほしいと思っていること。
そこまで言っておばさんはため息をついた。
「汐李くんと朔が思い合ってるのは気付いてた。汐李くんからしてみたら朔との身分やバース性の差は些細なことで守り切れると思ったかもしれない。でも朔にしてみたらこれらの差はとてつもなく大きくて乗り越えるには沢山の代償がついてきてしまうと思って悩んだと思うのよ。」
おばさんは朔がこれからも僕の近くにいるために離れたって言ってたけど恐らく朔はもう僕のところへ戻ってくるつもりはないのだと思った。
とても辛いが朔もよくよく考えて出した答えなんだろう。
とうてい受け入れられないが今はとりあえず朔の気持ちを受け入れる事にした。
おばさんはうちの使用人をやめて、おじさんと田舎でペンションを始めるんだって。
きっと僕の両親の身勝手さに呆れちゃったんだと思う。
「ごめんなさい」と謝ったらおばさんは困ったように笑って
「あなたが謝ることじゃない。汐李くんの幸せを祈っているわ。」
と言って抱きしめてくれた。
それからの高校生活はひたすら勉強と仕事に明け暮れた。
しばらくして三枝もうちの高校にいないことに気がついた…けど朔のことしか考えていなかった僕にはどうでも良いことだった。
朔は僕の全てだった。
しばらくしてほとぼりが冷めたと思ったのか両親はまたお見合いを勧め始めた。
そんな両親にもう僕は心を開かなくなった。
両親と話すのは仕事のことのみで、第一秘書の高山さん経由で話す事も多く会話はほとんどなくなった。
僕から朔を離せばなんとかなるとたかを括っていたようで随分狼狽えているようだが知ったことじゃない。
結婚以外の最低限の義務だけは果たす事にきめた。
仕事の面では誰にも文句は言わせないように頑張る!伴侶がいないから頼りないなんて言わせない!
朔の隣に堂々と立てる男になって迎えに行くから!朔が誰かに取られちゃう前に急がないと!
待っててね!朔!
迎えに行ったら朔のお母さんに叱られた。
両親ときちんと話し合うようにと。
僕は朔の両親が大好きだ。2人の話は僕の心に素直に響く。
朔のお母さんは怒ってた。僕の両親が朔を利用してお見合いを勧めさせたことに。
そして朔のお母さんは一先ず小鳥遊家のことはまず小鳥遊家の家族できちんと納得いくように決めていくべきだと言った。
僕はとりあえず家へ帰り、キャンセルされていなかったお見合いに行った。
今回のお見合いはなかなかしつこかった。
断っているのに、とにかくまた会って欲しいと食い下がる。冗談やめてよ、お見合い相手と再度会うなんて外堀埋められるのが目に見えてる。
思わず「あなたと今後会うことはありません!」と言ってしまった。
こう言うお見合いは政略結婚を含むから断るときも言葉を選ばないといけない。
でも僕は限界だった。会社の仕事はちゃんとするから結婚とか番とかはもう放っておいてくれよ…。
あぁ朔に会いたい。
月曜日登校する車内で朔の首に顔を押しつけてスンスンと匂いを嗅ぐ。
朔はベータなのに良い匂いがする。
アルファやオメガのフェロモンは落ち着かないけど朔は嗅げば嗅ぐほど落ち着く匂い。
夢中でスンスンしてるとくすぐったいみたいでいつも真っ赤な顔で「ヒャッ」ってかわいい声をだす。
そんなかわいい声他で出さないでよ。というと
「こんなことするの汐李しかいないよ!」っていつもむくれる。
かわいいなー朔は。本当にかわいい。閉じ込めたい。そんなことばっかり考えてたからむくれた後で悲しい顔をしていたことに気が付かなかった。
お見合いを乱暴に断ってから両親は僕にお見合いの話をしなくなった。
そのかわり仕事を任される量が増え僕はますます多忙になった。
そんな中でも朔への思いはどんどん強くなり、仕事以外の時間の許す限り僕は朔から離れなかった。
中学3年生の年末に差し掛かかっていたある日、学校から帰ると第一秘書の高山さんが慌ててやってきて急ぎの仕事が入ったからすぐに会社へ来てほしい言う。
一応まだ中学生だから学校のある日は仕事は無いはずだった。
だから珍しいなとは思ったんだ。実際仕事もそこまで慌てる内容ではなかったし。
まさかそれが朔から僕を引き離すためだったとはその時は思いもよらなかった。
両親がお見合いをすすめなくなったから油断していたのかもしれない。
それが両親の作戦だったのだ。僕の意志を尊重したわけではなく、尊重した振りをして欺いた。
高校の入学式の日、朔が僕の前から姿を消した。
中等部から高等部に上がるだけだから特に変化もないねーなんて言って昨日別れたのに。
次の日朔は居なくなってた。
僕は半狂乱になって朔のお母さんに詰め寄った。
おばさんは一先ず落ち着きなさいと僕をギュッと抱きしめてから椅子に座らせた。
そしてお茶を淹れてくれた。
お茶はとても美味しくて僕の心はだんだん落ち着いてきた。
朔は全寮制の高校に進学したこと。
それは僕の近くにこれからも居られるようにするために必要なこと。
汐李にオメガとして幸せになってほしいと思っていること。
汐李だけでなく汐李の家族も幸せになってほしいと思っていること。
そこまで言っておばさんはため息をついた。
「汐李くんと朔が思い合ってるのは気付いてた。汐李くんからしてみたら朔との身分やバース性の差は些細なことで守り切れると思ったかもしれない。でも朔にしてみたらこれらの差はとてつもなく大きくて乗り越えるには沢山の代償がついてきてしまうと思って悩んだと思うのよ。」
おばさんは朔がこれからも僕の近くにいるために離れたって言ってたけど恐らく朔はもう僕のところへ戻ってくるつもりはないのだと思った。
とても辛いが朔もよくよく考えて出した答えなんだろう。
とうてい受け入れられないが今はとりあえず朔の気持ちを受け入れる事にした。
おばさんはうちの使用人をやめて、おじさんと田舎でペンションを始めるんだって。
きっと僕の両親の身勝手さに呆れちゃったんだと思う。
「ごめんなさい」と謝ったらおばさんは困ったように笑って
「あなたが謝ることじゃない。汐李くんの幸せを祈っているわ。」
と言って抱きしめてくれた。
それからの高校生活はひたすら勉強と仕事に明け暮れた。
しばらくして三枝もうちの高校にいないことに気がついた…けど朔のことしか考えていなかった僕にはどうでも良いことだった。
朔は僕の全てだった。
しばらくしてほとぼりが冷めたと思ったのか両親はまたお見合いを勧め始めた。
そんな両親にもう僕は心を開かなくなった。
両親と話すのは仕事のことのみで、第一秘書の高山さん経由で話す事も多く会話はほとんどなくなった。
僕から朔を離せばなんとかなるとたかを括っていたようで随分狼狽えているようだが知ったことじゃない。
結婚以外の最低限の義務だけは果たす事にきめた。
仕事の面では誰にも文句は言わせないように頑張る!伴侶がいないから頼りないなんて言わせない!
朔の隣に堂々と立てる男になって迎えに行くから!朔が誰かに取られちゃう前に急がないと!
待っててね!朔!
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