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Waning Moon
第一話
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「なぁ、柚月もやろうぜ。絶対面白いって!!」
中学の時から同じクラスの悪友が、見ろとばかりにスマホの画面を押し付けてくる。
俺は嫌々、スマホの画面を見た。
何かのゲームが起動されているらしく、画面には一面緑色の草原が映し出されている。
「……俺、あんまりゲームに興味がないんだけど」
俺は押しつけられたスマホを本来の持ち主に返した。
「そんなこと言わずにさ~。ちょっと登録するだけでいいからさ」
「はぁ?絶対に嫌だ」
俺には何故そんなに熱心に勧めてくるのかわからずに、あっさり断った。
「柚月~。そう言わずにさ~。ここは一つ人助けだと思って」
「人助け?」
「そう。友達を紹介すると貰えるアイテムが、マジで激レアでどうしても欲しいんだ。クラスの奴らもみんなこのゲームやってるから、誘えるのって柚月くらいしかいないし」
(そういうことかよ)
「なぁ、頼むよ。柚月~」
尚も諦めない悪友に、ため息をつきたくなる。
(まるで、スッポンみたいな男だな)
一度噛み付いたら、絶対に離さないだけにタチが悪い。
「絶対に面白いのは保証するからさ。現にクラスの奴らもほどんどやってるし」
確かに悪友の言う通り、今クラスでは『Waning Moon』というスマホゲームが流行っている。
ゲームに興味がない俺は、そのゲームがRPGということしか知らない。
今まで悪友から嫌というほどゲームの内容を聞かされてきたが、聞く気のなかった俺は全くと言っていいほど内容を覚えていない。
「だからって、それがゲームをやる理由にはならないだろ?」
「…………」
悪友は観念したのか、黙り込んだ。
俺は毎回繰り返される不毛な会話にうんざりしながら、これ以上付き合っていられないとばかりに、帰り支度を始めた。
「……ん?」
制服のズボンのポケットに入れていたスマホが急に震えた。
画面には新着メールが一件。
開くと……。
「はは……」
思わず乾いた笑いが漏れる。
転んでもただでは起きないと思っていたが、まさかここまでとは思わなかった。
「大概しつこいな、お前」
「俺の情熱、わかってくれた?」
……嫌というほどな。
心の中で突っ込んで、改めてスマホを見る。
メールの送信者は、もちろん目の前の悪友。
本文には『登録よろしく』という言葉の後に、どこかのサイトのURLが載っている。
妙に静かだと思っていたら、これを打っていたのか……。
(とうとう実力行使に出てきたか……)
その無駄な情熱を他の所で使えと言ってやりたい。
「……ということで柚月。お膳立てもしたことだし、登録よろしく」
押し売りみたいなことをしておきながら、よく言うと思う。
「もし今日中に登録しない場合は……」
「登録しない場合は……?」
変な所で言葉を切った悪友に、嫌な予感がする。
俺の視線に気付いた悪友が、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。
「もし俺の言う通りにしなかったら……」
「しなかったら……?」
「お前が登録するまで、メールを送り続けてやる」
(マジか!?)
それは迷惑メールよりタチが悪いぞ!?
いっそのこと受信拒否にでもしてやろうかと思った矢先に、悪友が先手を打ってくる。
「ちなみに受信拒否や着信拒否をした場合は、お前の家にかけるからな」
流石、中学の時からの付き合いだ。
やることに抜かりがない。
コイツはうちの番号も知っているし、家族と住んでいるから居留守も使えない。
俺はため息をついて、渋々サイトを開くことにした。
中学の時から同じクラスの悪友が、見ろとばかりにスマホの画面を押し付けてくる。
俺は嫌々、スマホの画面を見た。
何かのゲームが起動されているらしく、画面には一面緑色の草原が映し出されている。
「……俺、あんまりゲームに興味がないんだけど」
俺は押しつけられたスマホを本来の持ち主に返した。
「そんなこと言わずにさ~。ちょっと登録するだけでいいからさ」
「はぁ?絶対に嫌だ」
俺には何故そんなに熱心に勧めてくるのかわからずに、あっさり断った。
「柚月~。そう言わずにさ~。ここは一つ人助けだと思って」
「人助け?」
「そう。友達を紹介すると貰えるアイテムが、マジで激レアでどうしても欲しいんだ。クラスの奴らもみんなこのゲームやってるから、誘えるのって柚月くらいしかいないし」
(そういうことかよ)
「なぁ、頼むよ。柚月~」
尚も諦めない悪友に、ため息をつきたくなる。
(まるで、スッポンみたいな男だな)
一度噛み付いたら、絶対に離さないだけにタチが悪い。
「絶対に面白いのは保証するからさ。現にクラスの奴らもほどんどやってるし」
確かに悪友の言う通り、今クラスでは『Waning Moon』というスマホゲームが流行っている。
ゲームに興味がない俺は、そのゲームがRPGということしか知らない。
今まで悪友から嫌というほどゲームの内容を聞かされてきたが、聞く気のなかった俺は全くと言っていいほど内容を覚えていない。
「だからって、それがゲームをやる理由にはならないだろ?」
「…………」
悪友は観念したのか、黙り込んだ。
俺は毎回繰り返される不毛な会話にうんざりしながら、これ以上付き合っていられないとばかりに、帰り支度を始めた。
「……ん?」
制服のズボンのポケットに入れていたスマホが急に震えた。
画面には新着メールが一件。
開くと……。
「はは……」
思わず乾いた笑いが漏れる。
転んでもただでは起きないと思っていたが、まさかここまでとは思わなかった。
「大概しつこいな、お前」
「俺の情熱、わかってくれた?」
……嫌というほどな。
心の中で突っ込んで、改めてスマホを見る。
メールの送信者は、もちろん目の前の悪友。
本文には『登録よろしく』という言葉の後に、どこかのサイトのURLが載っている。
妙に静かだと思っていたら、これを打っていたのか……。
(とうとう実力行使に出てきたか……)
その無駄な情熱を他の所で使えと言ってやりたい。
「……ということで柚月。お膳立てもしたことだし、登録よろしく」
押し売りみたいなことをしておきながら、よく言うと思う。
「もし今日中に登録しない場合は……」
「登録しない場合は……?」
変な所で言葉を切った悪友に、嫌な予感がする。
俺の視線に気付いた悪友が、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。
「もし俺の言う通りにしなかったら……」
「しなかったら……?」
「お前が登録するまで、メールを送り続けてやる」
(マジか!?)
それは迷惑メールよりタチが悪いぞ!?
いっそのこと受信拒否にでもしてやろうかと思った矢先に、悪友が先手を打ってくる。
「ちなみに受信拒否や着信拒否をした場合は、お前の家にかけるからな」
流石、中学の時からの付き合いだ。
やることに抜かりがない。
コイツはうちの番号も知っているし、家族と住んでいるから居留守も使えない。
俺はため息をついて、渋々サイトを開くことにした。
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