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精霊王救出編

氷の部屋

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廊下に出てみる。やはり人が生活するような音は聞こえない。メイドも執事も人っ子一人見かけない。

やっぱり私以外の人はいない?

不安になりながらも扉を見つけたら部屋を覗きながら進んでいく。しかし、誰にも会わないし話し声もしない。
だんだん確信に変わってくる。

この世界、わたしボッチなんだわ。
もしもがあるかもしれないので声も出していこう。


「だれか…?いませんか?」


夢の中で初めて声を出したけどそれはどうでもいい。なんだか自信のなさそうな声になってしまった…
でも、やっぱり応えてくれる声はない。


すると階段を見つけた。
こういう時は上と下。どっちに行けばいいのかわからない。

だけど、一階には使用人部屋があるイメージがあるし下に降りてみる。





いま何階にいるのかわからないけど、多分一階だと思う。


ぴくっ


この一階に降りた時、何かに呼ばれた気がした。

夢の世界第二弾で感じる、初めての自分以外の気配である!
気のせいかもしれないが希望が出てきたので、足取り軽くキョロキョロしながら歩いてみる。
すると扉を見つけた。別に大きさも普通だし、光が漏れているわけでも黒いモヤが出ているわけでもないのになぜか気になる。

『ーー!』
そして、悲鳴なような声が聞こえた気がした。

この部屋の中から聞こえてきた気がして、覚悟を決めて少しだけ開けてみた。
すると、開けた場所から急速に凍っていく。急いで扉を閉じる。


え、扉を開けただけで凍った… 寒くないけど… 
これがファンタジー?


周囲が急に凍り始めたのに、私は寒くなかった。そして、扉を閉めると凍っていた部分の氷が溶けた。
ふと、人がいない原因がこの部屋かもしれないので、寒くないと言うこともあり次は思い切って中に入ってみることにした。





部屋に入ってみる。
するとそこは室内なのに一面の銀世界が広がっていた。そして、人というより人だと思われるものが氷のオブジェと化していた。

やっと人に会えたけど、全然嬉しくない。
これ、生きているとは思えないよ…。
でも、人がいなかったのは自分の想像力が粗末だったわけではなかったみたいで安心する。

はっ!もしかしたらこの世界の人間は氷のオブジェのような姿なのかもしれない…!いや、自分の姿は普通だしそんなことは無いか!

そのオブジェは一つだけではなく、いくつかあった。



中心には目を見開いて手を伸ばしている紳士的な男性。その横には私よりも年上だろう10歳くらいの少年。その少年を庇うように母親であろう女性が少年を抱きしめている。
そして、その周りには中心の男性に駆け寄ろうとする執事とメイドらしき人。これらすべてがオブジェになっていたのだ。


この凍っている男性と少年、女性を見た時この少女の記憶が甦ってきた。

あの男性はパパラチア侯爵であるロータス・パパラチアお父様で、女性はヘザー・パパラチアお母様、少年はオリバー・パパラチアお兄様… そして私はマグノリア・パパラチア…

魔法の適正診断のために王都まで家族揃って行ったまでは覚えてるけどそこからは記憶がない…


えええ!?私もしかして夢じゃなくて転生とか言いませんよね!?
でもとりあえず、私の体の意思に応えて現状をどうにかしなきゃ!


中心の男性が手を伸ばす先を見つめてみる。
そこには氷の指輪が箱から浮かび、冷気を振り撒いていた。

どこからどう考えても、あの指輪がこの氷漬けの原因だとしか思えない!
でも、原因が分かってもどうしたらいいのかわからない。

しかし私は、さっきから聞こえる声が指輪から聞こえる気がして氷の指輪を掴んでみた。










指輪を掴んだ瞬間、光に包まれて、景色が変わった…

そこはただ先の見えない真っ白な空間。何もない。

そして、手の中には指輪の代わりに白い何かがいて、話しかけてきた。


「っ!!僕のこと見えるの!?もしかして声も聞こえる!?」

え?どういうことなの??

「ええ、見えるし聞こえるわ?」

「っ!!やっと会えた!僕たち精霊はずっと声を聴こえる人を探してた… !
 でも何十年も何百年も探しても見つからなかったんだ。会えて本当に嬉しい…」


話しながら精霊の目からは氷の結晶がパラパラ舞っていた。

え、精霊!?それも泣いてる!?

「精霊さん??大丈夫!?」

それから精霊が落ち着くのを頭を撫でながら待った。
というか、すごく必死に話してたけど…
でも、どうして精霊が私を探すの??


「ぐす、びっくりさせてごめんね。」

「いえ、私は大丈夫よ?
それで、私を探してたの?どうして?」

「それは、君が僕たちを救ってくれるから!
 精霊王は言ったんだ、僕たちの声が聞こえる人が助けてくれるって。
 僕たちは今、人間に狙われてる… 精霊の力は人間の魔法より強力だから…。たくさん攫われた精霊もいる、多分僕みたいに石になってると思う。
 初めは攫われた精霊を助けるためにみんなで君を探そうとしてたんだ!でも準備してたら人間がやってきて精霊王が石に封じられてしまった。
 精霊王がいないとこの星は崩壊してしまう!だから、精霊王を助けるのを手伝って欲しいんだ!」


めっちゃ早口で答えてくれた白い精霊さん。
そういえば、あの夢で出てきたハルモニアはあの氷の世界で何かをしてほしいって言ってた。

もしもこの世界が夢の氷の世界なのだとしたら?
今は、マグノリアの記憶でも凍っている様子はなかった。けど、これから凍るのであればそれを防ぐことが私に求められてるのかもしれない。


ちょっと待って!マグノリアの家族が凍っていたじゃない!いや、今は私の家族でもある!そのことを聞かなきゃ!


「ねえ、精霊さんちょっと待って!さっきお父様とお母様、お兄様が凍っていたわ!それは大丈夫なの!?」

「ああ、あれは… 封印されている時は普通、暴走することはないんだけど力が暴走してしまったみたいで、周りを凍らせてしまった…
 でも、大丈夫、あの人たちは死んでいないよ。」


あんなに凍っていても死んではいないらしい、良かった…


「ごめんなさい。精霊王のこと、私には分からないわ…。家族に会って、お父様に相談してみてもいいかしら?やっぱり家族のことが心配よ…
 それに、私の家族も協力してくれるかもしれないわ!」

「協力してくれるの!?家族に話すのは大丈夫だよ!」

「では、家に帰ってから精霊王のことや世界のことも詳しく教えてちょうだいね?」

「そうだね、わかったよ。僕は氷の精霊。
 ここは僕の精神世界なんだ。あの部屋に戻るには僕と契約する必要がある。
 ちょっとまって!契約って言っても何も悪いことはないから!ただ魔力と名前をください。」


急に契約って言われたからちょっと怖い顔しちゃったけど、魔力と名前、よく聞く話だったわ。


この世界を救うために精霊王を助ける必要があるかもしれない。だから、もうすこしこの精霊から話を聞くためにも契約することにした。

名前のセンスはよくわからないけど氷の冷気からとって…

「君の名前はレイなんてどうかしら?」

「レイ… うん!気に入ったよ!ありがと!」


名前をつけた瞬間右手の小指が熱くなって、白い石が付いた銀色のリングがはまった。もちろん指から抜けない。これが契約完了の証らしい。

無事気に入ってもらえたようだし、自己紹介をして早く戻ろう。


「私はマグノリア・パパラチア。今日からよろしくね、レイ。」

と言って、優しく微笑んだ。



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