降る、ふる、かれる。

茶茶

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第一章 リスナー

お金

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 ユーチューブには動画投稿者にお金を渡す、投げ銭機能がある。

ライブ中に可能なスーパーチャット(略してスパチャ)と普段の動画の際にできるスーパーサンクスの二つがある。

 私はそれらを使って、何度も何度も無夢に向かってお金を投げるようになった。

 私は、無夢と何でもいいからつながりたかった。

グッズも買えず、ライブにもいけない。

無夢に近づく方法はお金にしかないのである。

 缶バッジを買う代わりに八百円。

 アクキーを三つ買う代わりに二千円。

 ペンラの代わりに三千円。

 CDを買う代わりに四千円。

 ライブの代わりに五千円。

最初は、躊躇していたが、どんどんと金額は大きくななってゆく。

一万円、三万円、五万円と額が大きくなるにつれて、スッと心の闇が少しだけ取り除かれるような気がした。

代わりに、私が小さい頃からお年玉を貯金していた通帳はまたたく間に減っていった。



 お金がない。

お母さんに不登校になった私がお金が欲しいと言えるわけもない。

何につかうのと聞かれるに決まっている。参考書を買うためと嘘をついてもよかったが、たかだか数千円しかもらえないのは目に見えている。

私が欲しいのはもっと大きなお金だ。

けれど、現在の私に収入源などない。

アルバイトをすべきなのはわかっていたが、あんな安い給料でひと前に出るのはいやだった。傷つけられたくなかった。

家でできる仕事として株やFXも考えたが、私に知識は一ミリもない。

百歩譲って、無夢のために人間関係を再構築しアルバイトをしてもよいがたかが知れている。一時間働いて千円前後だ。

通帳の貯金額を見る時間と、ネットでアルバイトを検索する日々が増えた。


  そんな拍子に、無夢がユウチューブライブを始めた。

夜中の二時半だった。

いつものように、挨拶もなく、歌を歌い始めた。

画面は相変わらず真っ暗だ。私の心臓がうるさいくらいにどくどくと胸を打っている。

いつもより、寂しそうな声だ。

大丈夫?って言いたい。

スパチャを打ちたい。

気持ちを伝えたい。

大丈夫だよって力強く抱きしめてあげたい。

無夢の一部になりたい。




でも、お金がない。

私と同じく、苦しんで闇の中をもがいている無夢の隣に私もいたい。そばにいたい。

無夢と唯一つながる方法が今の私にはない。

働かないと。お金をつくらないと。

無夢がユウチューブライブを終えるまで、私はずっと走りだしたいような悶々とした気持ちでいた。

助けたいのに、助けられなくて、今すぐお金がほしいのにお金はもうない。

無夢の声を聞くのが辛いけど、無夢を欲している。

生殺し状態であった。
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