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2 出会いの春です
第7話
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ふたりで草引きをはじめると、しばらく無言がつづいた。
ちょっと気まずい。
話しかけようと思ったら、男の子のほうから口をひらいた。
「入部届って、センパイに渡したらいいですか?」
「あ、うん。わたしでもいいし、顧問の植草先生でもいいし。あっ、三日後にクラブガイダンスがあるよ」
「クラブガイダンス?」
「うん。クラブの説明会と見学会――だね。入部はそれを見てから決めてもいいよ。うちは部員全員があつまるのは水曜日だけで、あとの曜日は自由参加なの。だから、他の部と掛けもちでやってる人がほとんど。わたしもそうだし……」
「へえ、センパイも掛けもちなんですか?」
わたしはうなずいて、ぎこちなく笑った。
「バスケ部とね。でも、わたし運動オンチなんだあ。みんなについていけなくてね。園芸部専属になるかも」
「センパイが専属なら、おれも園芸部専属でいきますよ。他の部には入らない」
えっ!? それって、どういう……。
思わず手を止めて、男の子のほうを見る。
向こうもわたしを見ていたから、視線がぶつかりあった。
だまって、ニコッとする男の子。
きっと、深い意味なんてないよね。
動揺しているのを気づかれたくなくて、うつむき加減になるわたし。
「さっき、きみは『ヘンですか?』って聞いたけどさ……男の子がお花を好きなの、ホントに素敵だと思うよ。うちの副部長も男子だし。三年のセンパイなんだけどね」
話をそらしてみた。
男の子は「そうですか」と言うだけで、あまり食いついてこない。
「きみがお花を好きになったのは、なにかキッカケあったの?」
今度は、質問してみることにした。
「キッカケ……。おれ、もともと、花は好きじゃなかったんです」
男の子は、ぽつりぽつりと話しはじめた。
「でも、ある人に出会って、変わったんですよ。おれの価値観がすっかり変わったんです。花を愛せるようになったというか……」
「へえ、素敵な人と出会えたんだね。きみの――」
言いかけて、まだ名前を聞いていなかったことにようやく気づいた。
「ごめん! まだきみの名前を聞いてなかったね。わたしは二年の――」
「愛葉一千花さん」
さえぎるように言われ、ぎくりとした。
「えっ……どうして知ってるの……?」
「知ってますよ。一千花センパイのこと、よ~く知ってます」
さっきまでと打って変わって、にやりといたずらっぽい笑みを浮かべている男の子。
「あれから二年たったけど、ひと目見て、すぐにわかりましたよ」
え? え? だれなの?
わたし、こんなイケメンは知らないよっ!
必死に記憶をたどっても、この男の子のことは思いだせない。
おもむろに、わたしに近づいてくる男の子。
「忘れてしまったんですか? おれのこと……」
向かいあわせになって、わたしは男の子を見あげる形になった。
「ご、ごめん! えっと、どこかで会ってる?」
「会ってるどころか、何度も戦った仲じゃないですか」
「えっ……?」
男の子は、腰を折って、わたしの顔をのぞきこむ。
あらためて……やっぱりイケメンだ。
なんてきれいな顔立ちなんだろう。
まるでアイドルみたい。
肌は雪のように白くて、にきびとかもないし。
とりわけ、瞳が特徴的で。
その涼しげな瞳に、わたしの顔がうつっている。
「ひさしぶりだね、魔法少女アイカ」
「――っ!」
まさか。うそでしょ!?
「おれは魔神リュウト。――乙黒咲也だよ」
ちょっと気まずい。
話しかけようと思ったら、男の子のほうから口をひらいた。
「入部届って、センパイに渡したらいいですか?」
「あ、うん。わたしでもいいし、顧問の植草先生でもいいし。あっ、三日後にクラブガイダンスがあるよ」
「クラブガイダンス?」
「うん。クラブの説明会と見学会――だね。入部はそれを見てから決めてもいいよ。うちは部員全員があつまるのは水曜日だけで、あとの曜日は自由参加なの。だから、他の部と掛けもちでやってる人がほとんど。わたしもそうだし……」
「へえ、センパイも掛けもちなんですか?」
わたしはうなずいて、ぎこちなく笑った。
「バスケ部とね。でも、わたし運動オンチなんだあ。みんなについていけなくてね。園芸部専属になるかも」
「センパイが専属なら、おれも園芸部専属でいきますよ。他の部には入らない」
えっ!? それって、どういう……。
思わず手を止めて、男の子のほうを見る。
向こうもわたしを見ていたから、視線がぶつかりあった。
だまって、ニコッとする男の子。
きっと、深い意味なんてないよね。
動揺しているのを気づかれたくなくて、うつむき加減になるわたし。
「さっき、きみは『ヘンですか?』って聞いたけどさ……男の子がお花を好きなの、ホントに素敵だと思うよ。うちの副部長も男子だし。三年のセンパイなんだけどね」
話をそらしてみた。
男の子は「そうですか」と言うだけで、あまり食いついてこない。
「きみがお花を好きになったのは、なにかキッカケあったの?」
今度は、質問してみることにした。
「キッカケ……。おれ、もともと、花は好きじゃなかったんです」
男の子は、ぽつりぽつりと話しはじめた。
「でも、ある人に出会って、変わったんですよ。おれの価値観がすっかり変わったんです。花を愛せるようになったというか……」
「へえ、素敵な人と出会えたんだね。きみの――」
言いかけて、まだ名前を聞いていなかったことにようやく気づいた。
「ごめん! まだきみの名前を聞いてなかったね。わたしは二年の――」
「愛葉一千花さん」
さえぎるように言われ、ぎくりとした。
「えっ……どうして知ってるの……?」
「知ってますよ。一千花センパイのこと、よ~く知ってます」
さっきまでと打って変わって、にやりといたずらっぽい笑みを浮かべている男の子。
「あれから二年たったけど、ひと目見て、すぐにわかりましたよ」
え? え? だれなの?
わたし、こんなイケメンは知らないよっ!
必死に記憶をたどっても、この男の子のことは思いだせない。
おもむろに、わたしに近づいてくる男の子。
「忘れてしまったんですか? おれのこと……」
向かいあわせになって、わたしは男の子を見あげる形になった。
「ご、ごめん! えっと、どこかで会ってる?」
「会ってるどころか、何度も戦った仲じゃないですか」
「えっ……?」
男の子は、腰を折って、わたしの顔をのぞきこむ。
あらためて……やっぱりイケメンだ。
なんてきれいな顔立ちなんだろう。
まるでアイドルみたい。
肌は雪のように白くて、にきびとかもないし。
とりわけ、瞳が特徴的で。
その涼しげな瞳に、わたしの顔がうつっている。
「ひさしぶりだね、魔法少女アイカ」
「――っ!」
まさか。うそでしょ!?
「おれは魔神リュウト。――乙黒咲也だよ」
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