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第五章
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しおりを挟む濡れた隘路を分け入るように、彼の指が進んでくる。拒んでいるのか、受け入れているのか、サーヤの内側は彼の指に絡みつくような動きをする。
「ようやく指一本か……まだまだ狭いな」
「あっ、あぁん、そこっ……!」
「ここが好いんだね」
ローレンツは根元付近まで呑み込んだ人差し指をゆっくり抜き挿ししながら、その指を曲げるような動きをした。すると、強烈に快感が走る場所があり、その強すぎる刺激から逃れようとサーヤは身をよじる。
そこが感じる場所だと知られてしまったから、彼の指は執拗に愛撫する。その指の動きに合わせるように花芽を親指で捏ねられると、サーヤは再び快楽の頂を極めた。
「あっ……!」
白い喉を反らせ、小さく悲鳴を上げた。彼の指を呑み込んでいるそこは、もっと奥へと誘うように食い締めている。
「可愛い顔をして……ひとつになるまで、もう少しだよ。こんなに感じてしまって、君の体はもつのかな?」
目を潤ませ、頬を上気させたサーヤを見つめ、ローレンツは恍惚の笑みを浮かべていた。その顔は間違いなく、愛する妻を自らの手で花開かせる喜びで輝いている。
初な体をいたわるような言葉を吐きながらも、彼がこの不慣れな様子の妻を欲望のままに貪りたいと思っているのも伝わってくる。
「指も二本呑み込めたね。あと少し慣らそうか」
「あ、はぁ……ローレンツさま……奥が……お腹の奥、何かそわそわする……」
指二本を秘裂に突き立てると、彼はわざと音が立つようにそこをかき混ぜていた。痛みや違和感よりも気持ちよさを感じるようになっていたサーヤは、物足りなさに涙目で腰を揺らす。
「そんな可愛い仕草で可愛いことを言って……これで男を誘っている自覚がないのだから、末恐ろしいな」
「んぅっ」
噛みつくように口づけてサーヤをなだめながら、ローレンツは着ているものを脱ぎ捨てていった。とはいえ、身を清めたあとの彼もガウン一枚だ。それをするりと脱ぐと、裸身があらわになる。
美術の教科書で見た彫像みたいだなとサーヤは思った。筋肉がついた逞しい体は、自分のものとは異なっている。
何より違うのは、彼の中心にそそり立つ雄々しい象徴だ。それがこれから自分の中に入ってくるのだと思うと、恐ろしくてたまらないはずなのに、期待も感じていた。
「そんなに見られたら恥ずかしくなってしまうな」
「だって……男の人の体、初めて見るから……」
「私の体だけ知っていればいいよ」
言いながら、ローレンツは見せつけるようにサーヤに覆い被さってくる。彼のものの先端が、秘裂に押しつけられる。
先ほどまで二本の指でほぐされていたそこは、ほんのりと口を開けている。蜜を塗りこむように先端を何度か滑らせると、やがて淫靡な音を立てて呑み込まれていく。
「ん……!」
先端が入ってきただけで、かなりの圧迫感があった。サーヤも苦しいが、ローレンツの眉間にも深い皺が刻まれる。
「狭い、な……ゆっくり進むから、息を止めてはだめだよ」
彼はサーヤの髪を撫で、優しくなだめながら、本当にゆっくりと腰を進めてくる。痛くてたまらなくて、内臓が内側から押し上げられるみたいな圧迫感を覚えているが、サーヤはシーツに爪を立てて耐えていた。
「私の可愛いサーヤ……私の体にしがみついてごらん。爪を立てたっていい。気持ちよくなるまで、もう少し耐えてくれ」
「んんっ……」
ローレンツに促され、口づけられ、サーヤは彼の背中に腕を回した。痛くて苦しくて、つい強くしがみついてしまうのに、彼が口づけてくれるのが気持ちが良くて、無意識のうちに彼のものを締めつけてしまう。
「熱くて狭くて……ああ、サーヤ……」
こらえるように溜め息をこぼしてから、彼は再び口づけてくる。痛みを少しでも和らげようとしてくれているのか、花芽へも愛撫を加えてくる。
接吻と花芽への愛撫によって、少しずつサーヤの体から強ばりがなくなってきていた。すると、痛みしか感じなかった下腹部にも快感を感じるようになってくる。
「サーヤ、もうこらえられそうにないから、ゆっくり動いていいだろうか?」
眉根を寄せ、切なそうにローレンツは尋ねてくる。美しい彼の顔に憂いがにじむ表情が浮かぶと胸がキュンとなってしまって、サーヤは返事の代わりに彼の腰に脚を絡めた。
本当なら、何も言わずにめちゃくちゃに抱いてしまってもいいのだ。たとえサーヤが泣いて嫌がろうとも、力や体格差でいえば、彼はそれをなすことができる。
それなのに、こうして尋ねて許しを乞うてくれるのが嬉しい。大切にされているのが伝わってくる。
「ローレンツ様、たくさんキスして。そしたら……めちゃくちゃにしてもいいよ。とろけるくらいキスして」
「サーヤ……そんな可愛いことを言われたら、我慢できなくなるだろう……っ!」
「……っ」
貪るように口づけてきたと思ったら、ローレンツは激しく腰を動かし始める。先ほどまでがどれだけ遠慮してくれていたのかわかるほど、それは激しい動きだった。
太く硬いものが体を内側から蹂躙するのが、最初は恐ろしくてたまらなかった。体が引き裂かれてしまうのではないかと思うほど、貫かれているところが痛かった。
だが、口づけられ、唾液が口の端から滴るほど舌で可愛がられるうちに、体が快感を覚え始める。何度も擦られていると、時折ものすごく気持ちがいい場所があるのに気づいてしまった。
「サーヤ、ここがいいのか? 先ほど指でも喜んでいたところだもんな……ああ、果てさせたい。指でも舌でもなく私自身で、君を快楽の果てへと連れていきたい」
「あっ、や……あぁっ、だめぇ……ぁんっ!」
サーヤの腰を掴むと、ローレンツはごく浅いところで激しく腰を動かした。抜き挿しされるたび、屹立の嵩高い部分がサーヤの好いところを擦る。擦られ、刺激を与えられ、サーヤの意識は真っ白に塗りつぶされていく。
「……私も、もう果てるよ」
「あぁぁっ!」
達したサーヤの中は蠕動し、食い締めながら奥へ奥へと誘ってくる。それに我慢できず、ローレンツは再び腰を激しく振り始めた。
大きく何度か勢いをつけて最奥を突き上げる動きをしたあと、彼はサーヤを抱きしめたまま動かなくなった。すると、彼のものが力強く脈動した。
彼自身が脈打つのに合わせ、注がれているのがわかる。体の奥まで彼のものである証を刻まれたのだと感じて、サーヤは嬉しくなって彼にしがみついた。
「サーヤ、そんなにギュッとしたら抜けないだろ」
「まだ離れちゃだめ。せっかく繋がったから」
「……仕方がないな」
サーヤが離そうとしないのがわかると、ローレンツは困った顔で笑ってから、抱きしめ返してくる。汗ばんだ肌と肌がくっついて、ひんやりしているのに温かくて、その独特の感覚にサーヤはうっとりと目を閉じた。
これが好きな人と繋がるということかと、満ち足りた気持ちを噛みしめる。
「怖かったし痛かったけど、最後はそんな記憶が吹き飛ぶくらい気持ちよかった。大好きな人と体を繋げるのって、こんなに気持ちがいいのね」
ローレンツの胸に頬をすり寄せて言えば、内側の彼のものが小さく動いた。彼とまだ繋がっているのだという感覚に、サーヤの中もまた疼いてきてしまう。
「これから回数を繰り返すうちに、痛みなんてなくなるさ。気持ちよすぎて苦しい、なんてことはあるかもしれないが」
「……気持ちよすぎて苦しくなることがあるの? どんな感じかな」
「あおらないでくれ。今夜はこれで我慢しようと思っているんだから」
「……はーい」
頭を抱え込むように抱きしめられて、サーヤは目を閉じた。
彼のものを意識すれば、それがまだ物足りなさを感じているのはわかった。まだサーヤの中で暴れ足りないのだろうと。
その欲望に応えたい気持ちにもなったが、正直言えば体はもうクタクタだった。結婚式と披露宴のあとで、そのまま眠ってもいいくらい疲れていたのに、こんなに張り切って体を動かしてしまったから。
「……ローレンツ様、明日また可愛がってね」
「ああ、もちろん」
「明後日も明々後日もだよ」
「……つまり毎晩か?」
「もちろん」
サーヤの熱烈なお誘いにローレンツがたじろぐのがわかったが、まだサーヤの中にいる彼のものがにわかに力強さを取り戻すのを感じたから、きっと無理ではないのだろう。
「そんなに可愛いことを言われたら、期待に応えなくちゃいけないな。……明日は抱き潰すつもりだから、その覚悟でいなさい」
耳元で囁く彼の声は、いつもより低くて剣呑だった。しかし、それには気づかないサーヤは、のんきに寝息を立て始めていた。
その次の日、朝から激しく可愛がられてしまったのはいうまでもない。
なかなかくっつかず周囲をやきもきさせた二人だったが、その後は仲のいい評判の公爵夫妻として、いつまでも幸せに暮らしていった。
〈END〉
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