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春の山おくはにぎやか

大きな池で赤いりゅうと大ぼうけん

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 小助は、大きな池の見えるばしょへワン太といっしょにやってきました。近くには、水がたくさんながれおちる大きなたきがあります。 

 後ろからは、子グマたちがお母さんといっしょにきています。みんながここへやってきたのは、ばんごはんで食べるためのお魚をとるためです。 

「わ~い! おちゃかな(お魚)! おちゃかな!」 
「ぼうや、あまり遠くまで行ったらダメだよ」 

 お母さんグマは、小助のことがしんぱいでたまらないようすです。けれども、小助はクマのお母さんのことばを気にすることなく水中をもぐっていきます。 

 小助がもぐっていると、たくさんのお魚が大きな池の中をおよぎ回っています。さらにふかいところへもぐろうと、小助は池のそこへ向かってすすんでいきます。 

 すると、小助の目の前に赤いりゅうのすがたがあらわれました。赤いりゅうは、大きな口をあけて小助におそいかかってきました。 

「おれのなわばりにくるとはいいどきょうだぜ!」 
「わっ!」 

 あいてのこうげきをかわした小助ですが、赤いりゅうは大きな池のふかいところをしぶとくおいかけています。 

「このチビめ、大きな口の中へのみこんでやるぜ」 

 小助は、赤いりゅうに食べられないようにあいてのはなにしがみつきました。大きなりゅうは、小助をふりおとそうとふかいところから一気に水中から出ようとします。 

「しぶといチビだなあ。ここから池の中へおとしてやろうか!」 
「キャッキャッ、キャッキャッキャッ」 

 赤いりゅうの頭にまたがった小助は、空中でかわいいえがおを見せながら大よろこびしています。そんな小助のうれしそうな声にたいして、赤いりゅうはしだいにきげんのわるそうな顔つきにかわってきました。 

「あちょぼう(あそぼう)! あちょぼう!」 
「うるさい! 池の中へつきおとしてやろうか!」 

 大きなりゅうは、自分の頭にいる小助をなんども池に向かってふりおとそうとします。しかし、小助は赤いりゅうにしがみついたままでなかなかはなれようとしません。 

「キャッキャッ、キャッキャッキャッ」 
「うぐぐぐっ……。よくもバカにしやがって!」 

 どんなにこわいあいてであっても、小助はかわいいえがおでわらっています。そんな小助に、赤いりゅうは自分のおそろしさを見せつけようとしたその時のことです。 

「プウッ! プウッ! プウウウウウウウウウウウ~ッ!」 
「うげっ! く、くさくてたまらん……」 

 赤いりゅうは、でっかいおならを食らうと空中から小助とともに大きな池へおちてしまいました。すさまじい水しぶきを上げて池の中へもどると、小助はふたたび赤いりゅうへ近づこうとします。 

「ねえねえ、いっちょに(いっしょに)おちょぼう! いっしょにあちょぼう!」 
「わっ! こっちへくるな!」 
「あちょぼう! あちょぼう!」 
「お、おぼえてろよ……」 

 小助は、いけのそこへ向かってさっていく赤いりゅうとまたあそぶのを楽しみにしながら手をふっています。 

 この後、小助は水中にいるイワナやアユといったお魚をとってから池から上がってきました。そのすがたを見たワン太は、すぐに小助のところへかけよってきました。 

「こちゅけくん(小助くん)、ちゃびしかったよ(さびしかったよ)」 

 小助とワン太の楽しそうなようすに、お母さんグマはやさしそうな目つきで見つめています。 

「さあ、そろそろ帰ってばんごはんを食べようかな」 

 お母さんグマは、子グマたちをつれて森の中へもどろうと歩きはじめました。小助も、自分が手にしているお魚をお母さんに見せようと今から楽しみにしています。 

「おちゃかな! おちゃかな!」 

 小助は、大きな池での赤いりゅうとの大ぼうけんを思いうかべながら足をすすめています。そして、後ろにいるワン太といっしょに家のほうへ向かって帰っていきました。 
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