上 下
59 / 314
小助くんは夏も元気いっぱい

大きなたきでのぼうけん(その2)

しおりを挟む
 小助は、岩のかべのてっぺんまでのぼろうといっしょうけんめいです。

「うんしょ、うんしょ」

 上のほうへのぼっていこうと、小助は手でつかめる岩をさがしています。しかし、その岩は手をまっすぐのばしてもとどくところにはありません。

「う、う~ん……」

 岩のかべのとちゅうまでやってきた小助ですが、すこしでもゆだんしたらまっさかさまにおちてしまいます。それでも、小助はここであきらめるわけにはいきません。

「ぐ、ぐぐぐぐぐっ……」

 小助は、わずかなすき間がある岩に手をのばしました。その岩に何とか手でつかむと、この後も上へ向かってのぼっていきます。

 ようやく岩のかべのてっぺんへやってきた小助が見下ろすと、たきつぼとなっている大きな池が目に入りました。

 小助がこんなに高いところまでやってきたのは、てっぺんから大きな池に向かって水の中へとびこむためです。池のそばにいるクマヤオオカミがしんぱいする中であっても、小助はこわがるようすを見せることはありません。

 いったん後ろへ下がった小助は、そこからかけ足でてっぺんからいきおいよくとびこんでいきました。

「え~いっ!」

 小助は空中で2回もつづけて回ると、そのままたきつぼの中へ水しぶきを上げながらとびこみました。水中から顔を出した小助は、いつもと同じような元気いっぱいのえがおを見せています。

「わあっ、すごいなあ」

 クマヤオオカミの子どもたちは、あれだけ高いところからとびこんだ小助のすがたにおどろくばかりです。でも、小助のぼうけんはこれでおわったわけではありません。

 こんどは、池の中にどんなのがあるのか見たくなってきました。ふたたび水中へもぐってみると、たくさんの魚がおよいでいるのが目に入ってきました。

「わ~い! お魚さん! お魚さん!」

 小助は魚がおよぐのを見ながら、自分もそれになりきろうとおよぎ出しました。魚と同じようなうごきはできませんが、それでも小助は何とかついていこうとします。

 そして、池のふかいところへ小助が向かったときのことです。

「あれっ? あれあれっ?」

 小助は、池のふかいそこに大きな生きものらしきものがいることに気づきました。その生きものは、小助とくらべてとてつもなく大きいものです。

「何だろう?」

 小助は、その生きものがいるほうへおよいでいきます。すると、その生きものはどういうわけかおくのほうへにげようとしています。

「どうちて(どうして)にげるの?」

 この後も大きな生きものをおいかけましたが、いつの間にかそのすがたは見えなくなりました。小助は水中でまわりをふりかえりましたが、なぞの生きものはどこにも見当たりません。

 その生きものがどんなすがたをしているかはまだ分かりません。それでも、あれほどのでっかい体つきとにげるときのうごきかたは、小助の頭の中ではっきりとおぼえています。

 ぼうけんをひとまずおえた小助は、みんながまっている池のほとりまでおよいで帰ってきました。これを見た子グマとちびっこオオカミは、池から上がった小助にへばりついてきました。

「ど、どうちたの?」
「小助くん、これからもいっしょだよ」
「いつもいっちょ! いつもいっちょ!」

 どうぶつの子どもたちは、小助が何ごともなくもどってきたのがうれしくてたまりません。小助はこのようすにとまどいながらも、いつもあそんでくれる子グマとちびっこオオカミのことが大すきです。

 そんな小助をやさしい目で遠くから見つめるのは、クマとオオカミのお母さんです。

「あんなところまでのぼってから池へとびこむなんて、あぶなくてしんぱいだわ」
「でも、ぼうやは自分の力でやりとげたんだもの」
「そうだね。ぼうやがすくすくそだっていることがよく分かるわ」

 クマとオオカミのお母さんは、かわいい子どもたちをつれて森の中へ帰ろうとよびかけています。すると、子どもたちがお母さんの前でいつものおねだりをし始めました。

「おっぱい! おっぱい! おっぱい!」
「ふふふ、しょうがないわね」

 こうして、小助は子グマたちといっしょにお母さんグマのおっぱいをのんでいます。お母さんグマも、自分のおっぱいをのんでいる小助たちにやさしいえがおを見せています。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界子ども食堂:通り魔に襲われた幼稚園児を助けようとして殺されたと思ったら異世界に居た。

克全
児童書・童話
両親を失い子ども食堂のお世話になっていた田中翔平は、通り魔に襲われていた幼稚園児を助けようとして殺された。気がついたら異世界の教会の地下室に居て、そのまま奴隷にされて競売にかけられた。幼稚園児たちを助けた事で、幼稚園の経営母体となっている稲荷神社の神様たちに気に入られて、隠しスキルと神運を手に入れていた田中翔平は、奴隷移送用馬車から逃げ出し、異世界に子ども食堂を作ろうと奮闘するのであった。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

転生司祭は逃げだしたい!!

児童書・童話
大好きな王道RPGの世界に転生した。配役は「始まりの村」的な村で勇者たちを守って死ぬ司祭。勇者と聖女が魔王討伐の旅に出る切っ掛けとなる言うならば“導き手”。だが、死にたくない……と、いうことで未来を変えた。魔王討伐にも同行した。司祭って便利!「神託が~」とか「託宣が!」ってゲーム知識も何でも誤魔化せるしね!ある意味、詐欺だけど誰も傷つかないし世界を救うための詐欺だから許してほしい。 これはお人好しで胃痛持ちの司祭さまが役目を終えて勇者パーティから逃げ出そうとし、その結果「司祭さま大好き!」な勇者や聖女が闇堕ちしかけたりするお話。主人公は穏やかな聖人風で、だけど内面はわりとあわあわしてる普通の兄ちゃん(そこそこチート)。勇者と聖女はわんことにゃんこ。他勇者パーティは獣人、僧侶、ハイエルフ、魔導師などです。 【本編完結済】今後は【その後】を更新していきます。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ
BL
生前、社畜だったおれの部屋に入り浸り、男のおれに乙女ゲームの素晴らしさを延々と語り、仮眠をしたいおれに見せ続けてきた妹がいた 人間、毎日毎日見せられたら嫌でも内容もキャラクターも覚えるんだよ そう、例えば…今、おれの目の前にいる赤い髪の美少女…この子がこのゲームの悪役令嬢となる存在…その幼少期の姿だ そしておれは…文字としてチラッと出た悪役令嬢の行いの果に一家諸共断罪された兄 ナレーションに 『悪役令嬢の兄もまた死に絶えました』 その一言で説明を片付けられ、それしか登場しない存在…そんな悪役令嬢の兄に転生してしまったのだ 社畜に優しくない転生先でおれはどう生きていくのだろう 腹黒?攻略対象×悪役令嬢の兄 暫くはほのぼのします 最終的には固定カプになります

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【シリーズ1完】白獣の末裔 ~古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術~シリーズ2

丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴* ▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?   ▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*

処理中です...