上 下
27 / 314
小助くんと冬のどうぶつたち

おそろしいイノシシとのたたかい(その2)

しおりを挟む
 ふぶきがつづく森のおくでは、小助が大きなイノシシとあそぼうと近づいていきます。けれども、イノシシは小助をにらみながらはげしくこうふんしています。

「フウウウ~ッ! フウウウ~ッ!」

 イノシシの口元には、するどいきばをもっています。イノシシにつきとばされたら、さすがの小助もひとたまりもありません。

「ぼうや! イノシシに近づいたらダメ!」

 お母さんオオカミは、かわいい小助がイノシシにやられてしんでしまうところを見たくありません。けれども、小助はどんなにおそろしいけものであってもえがおを見せながら向かっていきます。

「あちょぼう(遊ぼう)! あちょぼう!」
「フウウッ! フウウッ! フウウウウ~ッ!」

 イノシシはこうふんしながら、目の前にいる小助にいきなりおそいかかろうとします。これを見た小助は、でっかいイノシシを力いっぱい食い止めています。

「うんしょ! うんしょ! うんしょ!」
「な、なぜだ……。こんな小さい子どもなのに……」

 小助は、すさまじい力でイノシシを前へおし出そうといっしょうけんめいです。そのいきおいにおされそうになったイノシシですが、小さい赤ちゃんをあいてにまけるわけにはいきません。

「これでどうだ! フウウウ~ッ! フウウウ~ッ!」
「うわっ!」

 大きなイノシシにつきとばされた小助は、雪のつもったじめんの上にたおれています。小助の前には、うなり声を上げるイノシシのすがたがあります。

 しかし、小助はすぐに立ち上がると大きなイノシシをあいてに体当たりでぶつかっていきます。

「グエッ!」
「え~いっ! え~いっ! え~いっ!」

 小助は、おそろしいけものにもこわがらずに立ち向かっていきます。イノシシも小助をつきとばそうとしますが、なかなかうまくいきません。

「うんしょ! うんしょ! う~んしょ!」

 ありったけの力でぶつかっていく小助のいきおいに、イノシシは思わずせなかから後ろへたおれてしまいました。

「お、おい! たのむからおこしてくれ! おこしてくれ!」

 イノシシは、あおむけにたおれたので自分からおき上がることができません。4本足をバタバタさせながら、イノシシは大きな声でさけんでいます。

 これを見た小助は、イノシシをたすけようと後ろからおこすことにしました。ようやくじめんに足をつけることができたイノシシは、いつもえがおの小助をじっと見ています。

「あんなにやさしい子どもなのに、おれはいったい何を……」

 イノシシの目からは、大つぶのなみだがながれています。それは、あばれてばかりだったイノシシとはちがうやさしさにあふれています。

「いっちょにおちゅもう! いっちょにおちゅもう!」
「そうか、おすもうがしたいのか! それじゃあ、いっしょにしようかな」

 こうして、小助はイノシシとも友だちになりました。今までふりつづいたふぶきもすっかりやむと、雪の上で小助とイノシシがおすもうをとっているようすがオオカミたちにも見えるようになりました。

「うわっ! あんな小さい子どもなのに……」
「わあ~い! わあ~い!」

 オオカミたちは、赤ちゃんなのにものすごい力でイノシシにかった小助のすがたをかんしんするように見ています。

「赤ちゃんであれだけの強さだから、この後どこまで強くなっていくのだろうか」

 大人たちのオオカミは、これからさらに強い男の子にそだつであろう小助をやさしく見つめています。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

処理中です...