映画感想 四月

犬束

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変身物語〜神々のエロス〜

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  どうかしている、人間ならば



 なんか変で面白い作品を探していて、興味の持てそうな監督を見つけたかも知れません。
 それが、これ。古代ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』を映像化しているのだけれども、コスプレはナシ。舞台は現代で、登場人物もそのまま今の人たち。ただ設定がローマ神話の神々やら妖精だったりするんです。
 冒頭のいわゆる『エウロペの略奪』は、ジーンズを履いたユピテル(ゼウス)が、女子高生のエウロペ(ヨーロッパの語源)を大型トレーラーに乗ってナンパしに来ます。そして、エウロペが狂言回し役になって、ゼウスからディオニュソス(酒神バッカス)、オルフェウスに誘われ、次々と変身譚が展開されるのです。
 変身とは言っても、その過程はカメラが別の方へ向いて、戻ったら何某かの動物になってるレベル。もちろん、嫌いじゃない(むしろ好き。低予算での創作こそ、センスが試されるし)。
 現代の日常生活で神話を表現するので、とても無理があって、無理を通した結果を変で面白い、愛おしい、と感じました。そもそも、『神々』なんて、ヴィスコンティの『神々の黄昏』よりか、モンスターエンジンのコント、『神々の遊び』を連想させる。
 で、その「『神々』のエロス」というタイトルにふさわしく、裸シーンは多めです。湖の辺りで待ち構えていた女が、男がやって来るなり脱衣して迫り、誘いに乗らないとブチギレるとか、裸エプロンならぬ裸に透明の雨ガッパ姿の女たちがライフルで皆殺しとか、河川敷を全裸にスニーカーの兄さんが駆けてる(笑うところではない)とか、まぁ、どうかしている。
 神話だから、普通ではあっても、その為のコスチュームもセットも皆無なので、やっぱり滑稽、いや、不条理なのかな? その点を楽しめる人向きの作品、とも違う気はするけど。
 このクリストフ・オノレ監督は、デビュー作からしてバタイユの『マダム・エドワルダ』を原作に選んだり、ヌーヴェルヴァーグの監督たちへのオマージュが散見されたり(Wikipedia調べ)と、ちょっと興味を惹かれます。
 今作は、郊外の団地群のシーンに不協和音を流すのが『テオレマ』、神話を現代で演じること自体が『アポロンの地獄』の最初と最後を彷彿させるし、パゾリーニっぽい箇所がありました。
 もっとも、ゴダールやトリュフォーや、他の監督の演出スタイルがあっても、分からんのやけど。

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