【急募】4人同時に求婚してきた時の対処法～クセの強い彼らに溺愛されて困ってます～

薄情な女

「……もう、無理してるとかしてないとか、わかんないのや。麻痺してもうた」

ぽつりぽつりと、その形のいい唇から言葉がつむぎ出される。彼の、過去。彼の、本音。

「俺の母親は薄情な女でなあ、俺を産んですぐ別の男のところ行ってしもた。ずっと本当の子供みたいに育ててくれてたおばはんも、小学生の頃死んだ。だからそれ以来、風邪は自分で対処してた。金だけはあったけどな。でもそんな俺が生き抜く術なんて、ひとつやろ？笑顔で愛想良くいること。それだけが唯一の正しさ。誰に何言われても、笑顔でおどける」

慣れれば案外楽なんやで、そう笑う顔はむしろ清々しくて。ああ、この人は許されなかったんだ。自分の感情を表すことも、自分が好きなように行動することも。

「！？ちょっ、みさちゃん！？」

気付けば、頬を涙がつたっていた。目の前であたふたする晶様が遠い。悲しかった。寂しかった。この人が送ってきた、送らざるを得なかった、人生が。いつもよりも強い力で抱きしめられる。

「……俺のために泣いてくれとる、そう思うてええの？」

一人取り残された子供のような声だった。消え入りそうな、か細い声。答える代わりに、強く、強く抱きしめた。彼も同じようにした。