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噂話

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「食は違うのか?」
「食べたことないものばかりですけど、素材は多分一緒です。今度作らせてもらおうかな」
「ほう、いいな。その際は私も呼べ」

最後は小声で言ったのに、はっきり聞こえていたようで。まあ、これだけ距離が近ければそうなるか。

「え、王様に食べさせられるほどの味じゃないですよ?」
「構わん。気に入ればもっと上手いやつに同じレシピで作らせる……それにしたって、お前にも多少は俺を敬う心があったのか」
「まあ、だってあなたの機嫌を損ねれば私死ぬんでしょう?」
「ははっ、昨日あんなことをしておいてまだ言うか?」
「昨日のは貴方が悪いです~」

食後、給仕の使用人たちの会話が聞こえてくる。王が去って気が緩んだのだろう。

「ねえ、見た?あのザキ様が笑っていらしたわ!!!」
「私なんて見るの初めてよ!」
「私だってそう。そもそもあんな軽口を叩くなんて、どうして王は罰しないんでしょう?」
「相当夜のテクニックがすごいんじゃない?「異世界様」は」

……うーん。むしろわざと聞かせているのか?最後の嫌味ったらしい声。心なしかこちらを見ているような気もしてきた……まあ、ザキが私に飽きたら多分ハレムの中でも下の下か女給あたりになるだろう。媚びを売っておいて損は無い。

「こんばんは、給仕ありがとう。でも、異世界様じゃなくて千代って呼んで欲しいわ。ね?それにザキってわりとよく笑うわよ」

話し終えれば、途端に顔を青くしてドタバタと給仕が去ってゆく。え、私そんなに顔怖かったか?なんて不安に駆られていると、低い声がして、視界が黒に覆われた。遅れて、それがザキの髪だと気づく。

「ザキ?戻ってきたの?」
「……様をつけろ」
「私たちは対等って納得したじゃないですか」
「ふん」

気が済んだのか、勝手に来ては勝手に去ってゆくザキ。やけに最後の声が機嫌良さげに聞こえたのは、気のせいか。それにしても着替えていたな。剣術の稽古だろうか、そんな雰囲気だ。しかし王が先陣を切って戦に行くなんてあるのだろうか。今日聞いた情報だけでも、この国が貿易で大きくなったらしいことはわかった。まあ万が一ってことか。

元剣道部だし、後で見学させてもらおうかなー、なんて、呑気に思っていた。そう、この時までは。
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