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悪癖

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「……ヴィシャディー先輩は授業中当てられても完璧に答えますよね。でも、テストの結果はいつも平均点くらい。この問題だって、パッと見ただけで、間違っていることどころか、どこが間違っているのかすら言って見せた。この問題は、決して易しくありません。どころか、ひっかけ要素の多い問題です……テスト、手抜いてますよね。何でですか?」

自然と、口から漏れた疑問だった。原作で、ルディーの成績に触れる場面はない。単に、知りたいと思った。このゲームの一ファンとして。

「ヴィヴェル―ナ」

突然別テーブルにいたはずのレウザン様が視界に映る。

「!レウザン様。アンジエたちはもういいんですか?」
「教えるべき点はすべて教えた。あとはあいつ次第だ。それよりルディー、「まだ」話さないのか?」
「?」
私の疑問に気づいたのか、レウザン様がルディーに親指をむけながら説明する。

「こいつのこの悪癖は昔からだ。理由も話さん」
「あはは~別に話すも話さないもないよ。別にオレ、勉強できないから。2人が買い被ってるだけだよ」
「それはありえん。何年の付き合いだと思ってる?」

ルディーはレウザン様の強いまなざしを受け流しながら、困ったように肩をすくめる。

「......引く気はないって?やだなあ、やめてよ」
「茶化すな。もう一度言う、何年の付き合いになると思っている?お前は都合が悪い時、いつだって髪をいじる」

レウザン様の指摘通り、ルディーはその長髪を、くるくると指に絡ませていた。一瞬、指摘された瞬間のみ、その動きが止まる。

「はあ……言えば解放してくれる?」
「真実ならな」
「……意味がないから」

ぽそりと、呟いた。17歳がするとは到底思えない、深い後悔と諦めの表情で。

「は?」
「はい、終わり終わり~。レウザンは可愛い後輩の元に戻りな、さっきから困った顔でこっち見てるよ」

ぱちんと、音を立てて両手を合わせるルディー。レウザン様も引き際を悟ったのか、しぶしぶと戻っていく。残された私達2人には、何とも言えない空気が流れた。

「ヴィシャディー先輩」
「何?これ以上は、いくらヴィーちゃんの頼みでも言えないよ~」

まっすぐ、久しぶりにまっすぐ、正面からこの人を見る。

「この世に無駄なことなんて、1つもありません」
「……ヴィーちゃんがそう思ってるってことは覚えておくよ」
「あと、勝負しましょ」

はてなを浮かべる先輩に構わず、私は話を続ける。

「今度の定期テストの薬草学、どちらがいい点を取れるか」
「……やらなくたって結果はわかってるじゃん。ヴィーちゃんの勝ちだよ」
「負けた方は勝った方の言うことを聞く……で、どうでしょう?」

挑発的な笑みを浮かべて見せる。へえ、とルディーの目の色が変わった。

いいよ、と一言いうと、ルディーは勉強会が始まってから一度も開かなかった教科書を開く。なんでこんな提案をしたのか自分でも分からなかった。でも、彼が努力する姿を見てみたいと思った。いつもの仮面を引っぺがしてやりたくなった。そうしたら、少しは彼のことも好きになれるかもしれない。これも全キャラと友好的な関係を築くため、そう言い切って、私は再度問題集に目を向けた。
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