【本編完結】推しと推しをくっつけたい！！！～溺愛されたのは私でした～

どこか寂しげ？

「おっ、ヴィー！」

食堂へと向かう道すがら、アンジエに声をかけられる。

「アンジエ！なんだか久しぶりな気がするわね」
「俺も思った！」

にっと笑う彼に安心感を覚える。やはり気を張っていたらしい。なんだかほっと一息抜けた気がした。

「一緒にお昼食べましょ」
「おう！ってあー、俺、他の奴にも誘われてたんだった」
「私は一緒でも構わないけど……無理ならいいわよ。フィリを誘うわ」
「フィリ？フィリってあのオシェリタ家か？」

アンジエが突然ばっと顔をあげる。そうだけど、と素直に肯定すれば、なんだよ！と嬉しげに笑う。聞けば、約束していたのはフィリちゃんとレフラルだったらしい。とそこに、2人が連れ立って現れる。

「いた！アンジエ……ってヴィー？」
「あ、フィリ。アンジエの家はその、ヴィーさ、……ヴィーの家に代々仕えているから」

あら、そうだったの、なんてお淑やかに笑うフィリちゃん。可愛い……！可愛いけど、知っとこうぜそれくらい……！

「じゃあ一緒に4人で食おうぜ！」

アンジエの言葉にみな頷いて席に着く。それにしたっておい。この展開もこの会話もゲームにないぞ。つい興奮してしまう。気持ちだけでも、ようやく慣れ親しんだアンジエにそっと近づく。

「ヴィーたちも私たちと同じで幼馴染なの？」
「ええ、初めて会ったのは確か……5歳くらいだったかしら」
「使用人兼護衛な！」

今でも思い出せる。これから貴方に仕える者だ、と紹介された。アンジエはその真っ赤な瞳で爛々とこちらを見つめていた。だがしかし！まだ記憶が戻っていないこともあってじっくりとは眺められなかった。そのせいで姿は朧気だ。なんてもったいないことをしたのか。レウザン様もそうだ。公式で幼少期のスチルがあるとはいえ、それが何歳の頃かは描かれていない。もしかしたら私が会った時は、もっと幼かった可能性も、もっと大きかった可能性もあるというのに……！一人悶々としている私をよそに会話は進んでいく。

「護衛？アンジエは強いってことなの？」
「おう！昔からヴィーのことは何度も守ってきたぜ！誘拐犯に変態野郎、他にも色々な！ほらこの傷！守った証だぜ」
「……すごい、ね」

レフラルの声がやけに寂しく聞こえて。私は、はっと意識を取り戻す。でも少し遅かったようで、会話は次へと進んでいた。