【本編完結】政略結婚したのっぽの私はどうやらそのお兄様に溺愛される運命にあるようです

突然のプレゼント

その翌日。ふたり用の大きなベッドは私しか使わない。旦那様の寝室は別……もしくは、あの女の元。いつも通りだった。いつも通りの朝だった。
それが変わったのは、ひとつの叫び声が原因だった。

「奥様！！！」

便宜上そう呼ぶ使用人に、その度胸がずきりと痛む。中には奥様、と嫌味ったらしく言う者もいて。でも今はそれどころじゃないらしくて。大慌てで玄関の方へ連れてかれる。そこには山積みになったプレゼントがあった。文字通り、山積み。しかもまだ届くようで、馬車が忙しなく行ったり来たりを繰り返している。

「これは……？」

もしや、旦那様が。その希望はすぐに打ち砕かれた。

「それが分からないのです！ただ全てに一言「美しいあなたへ」と……」

瞬間、昨夜のことを思い出す。いやでも、まさか。たった一晩踊っただけの相手に？でも美しいなんて、昨夜以外1度も……

「奥様！見てください！」

中身を確認していたらしい使用人が走ってくる。その手には美しい淡いグリーンのドレスが抱えられていた。リボンが大きく各所に施され、フリルが豪華に散らばっている。おまけにこれまで身につけた中でも特に一級品とひと目でわかるほどの光沢とツヤ。

「こちら全部、奥様宛てです！！！」

何が何だか、わからなかった。ひとつ聞こえたのは、私の日常が大きく崩れさる音だった。