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物語はハッピーエンドで終幕した。

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この世界はまるで定められた一つの物語の様に円滑に回っていて、私達はそれぞれ役割を与えられた駒のようなものだ。



例えば、私はヒロインを虐める悪女であり、そこには主人公であるヒロインはもちろん、それを守る王子様に騎士、彼女を慕う友人達…


そして、まるでヒロインとヒーローが愛を深めるためだけに存在するかのような、所謂当て馬と呼ばれるものもいて。



「…あぁもう、もやもやするっ!!」


 
私の様に自分勝手で傲慢な女が悪女として蔑まれることは自然の摂理だ。


しかし、は違う。



彼は、真摯にヒロインと向き合い、ちゃんと努力して、堅実に生きてきた。

愛する彼女のことを一心に思って、自分の気持ちなんて二の次で、ただただ彼女の幸福を考えて行動していたのだ。



でも、ねえ?


結局最後に笑うのは、強引に全てをかっさらっていった、真のヒーローである王子様だった。


その物語のヒロインだった彼女は、彼のことなんてそっちのけで、まるで目の前ににんじんをぶら下げられた馬のように殿下に向かって駆けていってしまったのだ。



腐れビッチが。

あれ程頼って支えてもらっておきながら、なんという手のひらの返し方。



「やっぱり、ジャンは私がもらっちゃってもいいんじゃない?」



ジャン・アボック


根っからの当て馬気質で、良い人すぎて損ばかりしてしまう哀れな男だった。



物語はハッピーエンドで終幕した。


これからは、彼も私も自由の身。




浮気性な王子様なんかより、私はもっとずっと誠実な人を愛してみたいんだ。




______悪女は蠱惑的な笑みを浮かべる。




■□▪▫■□▫▪■□▪▫





正直者が馬鹿を見るなんて、昔の人は本当に的を射た言葉を残したものだ。



「ははっ、僕はやっぱりどれだけ努力しても誰かの一番になんてなれないんだな」


自嘲的な笑みを浮かべてそんなことを呟く。



自分がつまらない男だということは十分自覚している。



だが、僕にはわからない。


彼は彼女の気持ちだってなんだって、いつも無視して強引に迫っていたように思う。

…婚約者だっていたのに。


いつも彼女はそんな彼の行動に悩んでいたし、相談だっていくつも受けたものだ。


それなのに、どうして…



「どうして、あんなに傷つけられたのに…」



彼女は彼を選んでしまったのだろう。



そんな女心がわからないから、僕はいつまでたってもと呼ばれてしまうのかもしれない。



もう恋なんてしない。


そんな女々しいことを思った。



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