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第二十話 エロトラップダンジョンに迷い込みたい その六
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ルドヴィカとモードがエレクトラを救い出すため、わざとエロトラップに引っかかってHPを0にするという捨て身の救出作戦を実行してから早一時間が経過した。
「はぁーっ…♡ はぁーっ…♡ そ、そろそろ儂のえいちぴーとやらも尽きたであろう…♡」
【モードの残りHP:499877915】
「…だぁーっ!! いい加減に埒が明かぬわ!!」
「仕方ないじゃない、あんた幼体とはいえ古代竜なんだから…」
乳首や陰核目掛けての電マ責めだの、大量の手型マシンによるくすぐり責めだの、三角木馬タイプのロデオマシンに拘束されての陰部責めだのといった世界観無視のエロトラップに遭うこと小一時間。
挿入だけは必死に回避しつつも、数々のいやらしい性具たちに散々喘がされてきたモードであったが、その無尽蔵のHPが災いして未だゲームオーバーには至っていなかった。
一方ルドヴィカはルドヴィカで、普段のえげつないオナニー及び異種姦プレイによって身体に耐性がついたのか、思いのほかHPの減りが少なくて参っていたところであった。
【ルドヴィカの残りHP:312】
「トラップ自体にはそこそこ引っかかってるのに、なかなかHPが減らないわね…。まあわたし、今のところ一回もイッてないしな…」
「こ、このまま続けていてはあの小娘を救う以前に、儂の気が狂うわ…! ルドヴィカ、何とかせよ…!」
「うーん…。それじゃあ、ちょっとデバフかけてみる?」
「は…? でばふ…?」
聞きなれない言葉に首をかしげるモードに対し、ルドヴィカはろくな説明もしないまま体内の魔力を練ると、モードに向かってお馴染みの催淫魔法を放った。
一度竜の身で経験したことのある魔法を喰らったモードは「なっ!?」と驚愕しつつも、次第に身体の内側から込み上げてくる熱に屈し、その場に膝をつく。
硬い黒鱗に隠れたモードの性器からとろり♡と愛液が零れてくるのを感じながら、モードはデバフの意味を直感的に理解した。
「ひぁっ、あぅぅ…♡ き、きさまっ、なにをするっ♡」
「一回かけられたことあるんだし、だいたいわかるでしょ。これでトラップに引っかかった時のHPの減りが早くなるはずよ。…せっかくだから自分にもかけとこ」
【ルドヴィカとモードのステータス:発情状態】【感度:レベルMAX】
ルドヴィカが催淫魔法を施したことによりふたりのステータスが変化し、エロトラップダンジョンの攻略という点においては、最も弱体化した状態となった。
あとはトラップに引っかかってHPを減らしにかかるのみであるが、効率性を優先するならばじわじわと獲物を舐るようなトラップよりは、ひたすら獲物を責め立てる激しいトラップに引っかかりたい。
尚且つモードは処女を守り抜かなければならないという縛りがあることを顧みると、選択肢はなかなかに絞られてくる。
「ねえちょっと、このダンジョンって脳姦系のトラップとかないの? わたしは別にいいんだけどモードは挿入NGだから、脳みそから弄りまわしてイカせるようなのがあると助かるんだけど」
どこからともなく聞こえてくる謎の声にルドヴィカがダメ元で声をかけてみると、意外にも要望が聞き入れられたのか、天井から如何にもな怪しい紐が垂れ落ちてきた。
言葉の意味はわからないながらも、“脳姦”などという単語に良い印象など抱けるはずもなく、身の毛もよだつような嫌な予感がモードに襲い掛かる。
「きたきた、気が利くじゃない♡ よいしょっと♡」
「ルドヴィカ、待っ…!」
モードの静止も聞かず、ルドヴィカが馬鹿正直に目の前の紐を力いっぱい引っ張った。
すると次の瞬間、両側面の壁の一部がくるりと回転し、そこに一人用の安楽椅子が現れる。
更にはそれぞれの安楽椅子の脇から拘束用のベルトがしゅるしゅると伸びてきて、咄嗟に逃げようとしたモードと従順なルドヴィカを安楽椅子へと拘束した。
両手と両足を椅子にがっちりと縛り付けられ、身動きのできないモードとルドヴィカへ、今度はヘルメット状の怪しげな機械を頭に被らされる。
がぽっ♡
「ぐあっ!?♡ な、なんじゃこれは…!」
小さな頭を覆う謎の機械にモードが困惑していると、次の瞬間には全身に稲妻が走ったような強い感覚が走った。
「!?!?!?♡♡♡♡♡」
まるで頭が真っ白になったような強烈な刺激に、咄嗟の言葉すら出てこずただただ身を震わせる。
ルドヴィカのリクエストに則り、先ほど頭に被らされたヘルメットから脳に直接刺激を加えられ、強引に快感を呼び起こされているのだ。
自分の力ではどうすることもできない強制的な快楽に震えるモードを更に責め立てるように、ヘルメットの側面から細いコード状の触手が出てきたかと思うと、無防備な耳の穴から侵入し更に奥を弄ぶ。
くちゅくちゅくちゅくちゅ♡♡♡
「ガァッ!?♡♡♡ あがっ、ぐあぁっ…!♡♡♡」
もはや平静を保つこともできなくなったモードが、死に物狂いで拘束から抜け出そうと暴れ出す。
しかしルドヴィカの魔法によって異常なまでに感度が上昇した身体ではまともに力が入らず、ただベルトの軋む音が響くばかりだ。
膨大なHPを誇る古代竜といえど脳への直接的な刺激にはなすすべもなく、催淫魔法の効果もあって急速にHPが減少していった。
【モードの残りHP:434252002】
「うぎぃっ…!♡♡♡ や、やめ…!♡♡♡」
くちゅくちゅくちゅくちゅ♡♡♡
「ァ~~~ッ!♡♡♡♡♡ ぐあぁっ!♡♡♡♡♡」
【モードの残りHP:393330048】
「やめろぉっ♡♡♡♡♡ あたまがヘンになるぅっ♡♡♡♡♡ これ以上はやめろぉぉぉっ♡♡♡♡♡」
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ♡♡♡
「ひあぁぁぁーーーっ!♡♡♡♡♡リントヴルムっ♡♡♡♡♡ たすけてくれえっ♡♡♡♡♡ このままではしんでしまうっ♡♡♡♡♡」
【モードの残りHP:361105782】
元の桁が破格なだけにまだまだゲームオーバーとはいかないが、先ほどまでとは比べ物にならないほどの速さで減少していくHPに、ルドヴィカがしめしめとほくそ笑む。
無論、モードと全く同じ脳責めがルドヴィカにも行われているため、ルドヴィカにも同じだけのダメージと快感が襲い掛かっていた。
くちゅくちゅくちゅくちゅ♡♡♡
「おひぃぃぃっ!♡♡♡ しゅごいっ♡♡♡ わたしいま、脳みそくちゅくちゅされてるぅっ♡♡♡ あたまブッこわれちゃうっ♡♡♡」
【ルドヴィカの残りHP:228】
モードの下降率と比べれば緩やかではあるものの、ルドヴィカのHPも順調に減っていっている。
この調子でいけばモードよりかなり早くゲームオーバーになるはずだが、この状態でモードをひとり置いていくのは何だか可哀そうな気がするし、欲を言えばもっと様々なエロトラップを味わいたい。
ルドヴィカは脳責めを受けながらもこっそり自身に回復魔法を施すと、本能のままに更なる要望を喘ぎ叫んだ。
「ちょっとダンマスぅ♡♡♡ これだけじゃ足りないから、ありったけのトラップ追加してぇっ♡♡♡ あ、モードには挿入ナシのやつにしてあげてねっ♡♡♡」
「!?♡♡♡♡♡」
キサマ正気か、とでも言いたげな目でルドヴィカを睨むモードの意志などお構いなしに、やたらとサービス精神旺盛なダンジョンが次々にトラップを用意し始める。
ローターや電マらしきものが付属された大量の機械型触手(ルドヴィカにはディルド付き触手も追加)、わきわきと指を蠢かす大量の手型マシン、明らかに媚薬がその類であろう謎の液体入りの注射器、その他もろもろ…。
これから行われるであろう地獄の責め苦の予感に、モードはいっそ絶望的な気持ちになり、ルドヴィカは目を輝かせながら舌なめずりをした。
三十分後…………
「ァァーーーーーッ!♡♡♡♡♡ しぬっ、しぬぅ~~~っ♡♡♡♡♡」
「お゛ほぉぉ~~~っ♡♡♡♡♡ これやばいぃっ♡♡♡♡♡ 脳みそくちゅくちゅと電マのダブル責めぇぇぇっ♡♡♡♡♡」
「たのむっ♡♡♡♡♡ もうやめてくれぇっ♡♡♡♡♡ これいじょうはくるうっ♡♡♡♡♡ もどってこれなくなるぅぅぅっ!♡♡♡♡♡」
一時間後…………
「ァガッ♡♡♡♡♡ オゴッ、オ゛ォッ♡♡♡♡♡ ガァァァッ♡♡♡♡♡」
「んんぅっ、モードだいじょうぶ?♡♡♡♡♡ 目とか竜のそれに戻って…お゛あぁぁぁ~~~~~~っ♡♡♡♡♡ しょこはらめぇぇぇぇぇっ!♡♡♡♡♡」
「グルルルルルッ♡♡♡♡♡ ガウゥッ♡♡♡♡♡」
一時間半後…………
「…ァ……グァ……」
「モードがんばれっ、あとちょっとだよっ♡♡♡♡♡」
「ァガ……ガ…………」
「ア゛ーーーッ♡♡♡♡♡ やばぁ♡♡♡♡♡ わたしもトびそうっ♡♡♡♡♡」
二時間後…………
「…………」
「ぜぇーっ…♡ ぜぇーっ…♡」
【ルドヴィカとモードのHPが0になりました】
「あは…♡ これやばかったぁ…♡ ぜったいまたやりたい…♡」
「…………」
約二時間にわたる脳姦&その他もろもろのトラップ責めにより、ようやくルドヴィカとモードのHPが0になった。
しかしながらその代償は大きく、モードは完全に意識を飛ばして死体のような有様である。
一方、本来であればもっと早くゲームオーバーになっていたはずのルドヴィカは途中わざとHPを回復していたこともあり、完全に脳姦プレイに味を占めたのか妙に生き生きとしていた。
すると次の瞬間、ふたりの身体を青白い光が包みこんで、どこか別の空間へと転移されそうになる。
「! やっぱり、ゲームオーバー専用の空間が…」
「……」
「ちょっとモード、起きて! 姉様のところに行けるわよ!」
ルドヴィカの呼びかけにモードが目を覚ますこともなく、ふたりを包む青白い光が消えた時、その場には誰の姿もなかった。
* * *
「…ここは……」
ルドヴィカとモードが転移された場所は、まるで巨大な生き物の体内にいるかのような、大量の肉塊に覆われた広い空間だった。
辺りのあらゆる場所からぐちゅぐちゅ♡という湿った音と、「あぁんっ♡♡♡」「もっと、もっとぉ♡♡♡」「イクイクイクぅ~っ♡♡♡」などといった女の矯正が聞こえてくるその場所は、紛れもなくゲームオーバーになった者が行き着くダンジョンの最果てだろう。
しかしながら周囲のどこにも声の主らしき女の姿が見当たらず、恐らく彼女らはこの肉塊の中に取り込まれているのだと思われる。
「…私としてはこのまま取り込まれて、ここでの苗床プレイも楽しみたいところだけど…」
「…うぅ…ぐ……♡」
「あ、モード起きた? 竜とはいえそのロリ体型じゃ相当キツかったと思うけど、大丈夫?」
ルドヴィカが己と欲望と本来の目的を天秤にかけていると、散々にイキ狂わされて意識を失っていたモードが目を覚まし、ふらふらとよろめきながら立ち上がった。
さすがに心配になったルドヴィカがその身を案じてはみたものの、モードの瞳は血よりも濃い深紅に染まっており、瞳孔は完全に開ききって竜の眼そのものとなっている。
「グルァァァァァァァァァァッ!!!!!」
次の瞬間、凄まじい叫喚がモードから発せられ、可愛らしい少女の姿から一転して元の古代竜の形態へと変化した。
ルドヴィカが「ヤバイ」と思ったのも束の間、竜形態のモードは深く息を吸い込んだかと思うと、灼熱の炎の息を辺り一面に吹き放つ。
するとこの空間を覆っていた肉塊がみるみるうちに焼き尽くされ、肉塊の中に捕らわれていた女たちの姿が次々に明らかとなった。
(や、やばっ…! モード、完全に八つ当たりモードだ…!)
【ガァァァァァァァァッ!!! ゴアァァァァァァァァァッ!!!!!】
「え、えーっと、とりあえず人命優先! 炎の精霊よ、彼の者らを守りたまえ!」
ルドヴィカが大慌てで肉塊の中の女たちへ防護魔法を施し、その身が焼き尽くされるのを防ぐ。
モードの八つ当たりによるブレス攻撃はしばらく続き、とうとう目に見えている全ての肉塊が残らず消し炭と化すまで炎の息を吐き続けた。
【ハァーッ…ハァーッ…ハァーッ…】
「お…落ち着いた…?」
【…ぬしにリントヴルムの血が流れておらなんだら、今この場で頭から貪り食らい、この世に血の一滴も残らぬようにしてくれていたわ…】
(…モードが一途な古代竜でよかった…。ありがとうご先祖様…)
モードの心を射止めた偉大な先祖のおかげで命拾いしたことを喜びつつ、ルドヴィカは一番近くにいた女へと駆け寄ってその身を起こした。
完全に理性が崩壊しているのであろう彼女の表情はいっそ狂気的なまでの笑顔であり、瞳に光は宿っておらず、舌を突き出してだらだらと唾液を垂らしている。
「もっとぉ、もっとズコズコしてぇっ♡♡♡ わたしはここで永久に気持ちいいコトするのぉっ♡♡♡」
「案の定、ゲームオーバーになった女の人はここに送られて、死ぬまで犯されるっていう仕組みらしいわね。とすると姉様もどこかにいるはず…」
「あぅぅぅっ♡♡♡ おとうひゃまっ♡♡♡ もっとぉ♡♡♡ もっといっぱいシてぇっ♡♡♡」
噂をすればなんとやら、タイミングよくエレクトラの嬌声が聞こえてきて、ルドヴィカは急いで声のする方へと駆け寄る。
そこに倒れていたエレクトラは先ほどの女よろしく幸福そうな笑顔を浮かべながら、存在しない陰茎を味わうかのように腰をへこへこと動かしていた。
「姉様、しっかりしてください!」
「あはぁっ♡♡♡ じゃましないれぇっ♡♡♡ おとうひゃまはエレクトラのだもんっ♡♡♡ おとうひゃまのおちんぽはエレクトラだけのものなんだからぁっ♡♡♡」
「…ファザコンだとは思ってたけど、ここまで拗らせてたとは…。仕方ない、ちょっくら正気に戻ってもらうか」
想像以上に重傷だったエレクトラのファザコンぶりに驚きつつも、ルドヴィカはエレクトラの額に手を宛がって、知りうる限り最高位の回復魔法を施した。
最初はへらへらと笑っていたエレクトラも、自身の体内にルドヴィカの魔力が満ちていくにつれ、次第に正気を取り戻していく。
やがて完全に常の状態へと戻ったエレクトラは、現状を飲み込めきれずにポカンとした表情でルドヴィカを見上げた。
「わ…わたくしはいったい…?」
「大丈夫ですか、姉様?」
「え、ええ…」
【おいルドヴィカ、小娘。あれを見やれ】
ルドヴィカはエレクトラに手を貸して立たせると、モードからの呼びかけに応じて彼女の視線の先へと目を向けた。
ルドヴィカは最初、そこにあったものが何なのかわからなかったが、その正体をいち早く察知したエレクトラが驚愕に顔を歪める。
「!? あ、あれは…!」
モードが示した場所にあったもの―――
それは掌に収まるかどうかというほどの、とても小さな竜の亡骸だった。
「あ…あれって古代竜!? でもこんなに小さい竜なんて…!」
【成程な、これで納得がいった。この遺跡に施された古の魔法の源が何なのか…】
「まさか…古代竜の魔力を動力源にしていたというんですの…!?」
【我ら竜の成体は、膨大な魔力を体内で生成する。竜を捕らえることができれば、不可能ではあるまいて】
口調は冷静そのものであるが、モードの瞳に強い怒りの色が宿る。
つまるところこのダンジョンの制作者は、ダンジョンの入り口に仕掛けられた結界に始まりダンジョン中に張り巡らされたおびただしい数のトラップを稼働させるための魔力を、古代竜が生成する魔力によって補っていたというのだ。
誇り高い種族である竜種がそのような道具のような扱いを好んで受けるはずもなく、恐らくは何者かによって捕らえられ、無理やりこのダンジョンに縛り付けられていたと考えて間違いがないだろう。
【…そこにいるのは、我が同族か…?】
ふと聞こえてきたか細い声に、モードのみならずルドヴィカとエレクトラもが身を固くする。
亡骸であると思われていた小さな竜が、まだ辛うじてその命を取り留めていたのだ。
モードの黒い鱗とは違うくすんだ赤い鱗で身を覆うその竜は、僅かに残った力を振り絞りながらモードに語りかけてくる。
【…おぬしはもしや、黒き竜モードか…】
【! まさかぬしは…赤き竜メルリヌス…!?】
【はは…最期にまみえるのがまさかおぬしとはな…。人間に懸想して姿を消したあの悪童に看取られて死ぬとは、さすがの我も夢想だにせんかったわ…】
名をメルリヌスというらしきその竜は、懐かしそうに目を細めると小指ほどの長さしかない尾を僅かに振った。
【何があったのじゃ、メルリヌス…! ぬしほどの竜が、このような下卑た遺跡に捕らわれるなど…!】
【…おぬしがあの人間と共に姿を消した後、我ら竜が住まう谷に別の人間が現れた…】
かき消えてしまいそうなほどの弱った声で、メルリヌスが淡々と語り始める。
【その人間は我が伴侶が産んだ双つの卵を盗み…返してほしくば力を貸せと我に言ってきた…。我は卵を守るためにその人間に従い、幾つもの国を焼き払い、そこに住まう人間どもを殺してきた…】
【……!】
【やがて卵が孵り、幼き双竜が生まれた…。我は秘密裏に双竜を逃がそうとしたが、あの人間に感づかれ…。あやつが作ったこの遺跡に捕らえられ、このような身体になるまで魔力を貪られることとなったというわけだ…】
【…ゆ…許せぬ…! 我ら誇り高き竜に対して、このような辱め…!】
メルリヌスが受けた仕打ちにモードが激怒する。
ルドヴィカもまた、その人間のあまりにも非道な行いに心の中で憤ったものの、自分の欲望を満たすためにちょくちょく魔物を轢殺しているルドヴィカも同じ穴の狢であるという事実には、都合よく目を背けることにした。
【…黒き竜モードよ、見ての通り我は死に体だ…。辛うじて残った魔力もいずれは尽きる…】
【……】
【竜を殺せるのは時の神か、同族の牙だけ…。残酷な時の神に己が命運を託すのにも疲れ果てた…。我を憐れむ心があるのならば、その牙で我を殺してくれ…】
【…あいわかった】
モードは痛み入るように目を伏せると、身をかがめてメルリヌスの小さな身体へとその牙を伸ばした。
ルドヴィカは咄嗟に「ちょっと待っ…!」とモードを止めようとしたが、豆粒のような小ささながらも鋭く光るメルリヌスの赤い瞳に射られ、何も言うことができなくなる。
メルリヌスは最後の力を振り絞って短い首を持ち上げて、モード、そしてルドヴィカと視線を合わせた。
【我が死ねば、この遺跡とそこの娘たちにかけられた魔法も解ける…。その娘に刻まれた刻印も消え去るだろう】
「え…!」
【人の子よ。我が同族をここまで導いてくれたこと、感謝する。これでようやく、長きにわたる苦しみから解き放たれる…】
「……」
【…メルリヌスよ、死ぬ前にその人間の名を教えろ。もはや生きてはおるまいが…儂は決してそやつを許さぬ】
するとメルリヌスが先ほどまでの弱弱しさから一転、怒りと殺意のこもった低い声でモードの問いかけに答えた。
【…奴の名はグイベル…。グイベル・ジーンだ…】
【…その名、決して忘れぬ。ぬしの内なる怒りも、憎しみも…すべて儂が引き受けた】
【ふ…最期に会えて嬉しかったぞ、モードよ】
メルリヌスが力なく笑った、次の瞬間―――
モードはその鋭い牙を、メルリヌスの小さな身体に突き立てた。
【…スィズ…セヴェリス…弱き父を許せよ…】
幾千年に及ぶ苦しみの日々に終わりを迎えたメルリヌスの今際の顔は、とても安らかなようにルドヴィカの目には映った。
「はぁーっ…♡ はぁーっ…♡ そ、そろそろ儂のえいちぴーとやらも尽きたであろう…♡」
【モードの残りHP:499877915】
「…だぁーっ!! いい加減に埒が明かぬわ!!」
「仕方ないじゃない、あんた幼体とはいえ古代竜なんだから…」
乳首や陰核目掛けての電マ責めだの、大量の手型マシンによるくすぐり責めだの、三角木馬タイプのロデオマシンに拘束されての陰部責めだのといった世界観無視のエロトラップに遭うこと小一時間。
挿入だけは必死に回避しつつも、数々のいやらしい性具たちに散々喘がされてきたモードであったが、その無尽蔵のHPが災いして未だゲームオーバーには至っていなかった。
一方ルドヴィカはルドヴィカで、普段のえげつないオナニー及び異種姦プレイによって身体に耐性がついたのか、思いのほかHPの減りが少なくて参っていたところであった。
【ルドヴィカの残りHP:312】
「トラップ自体にはそこそこ引っかかってるのに、なかなかHPが減らないわね…。まあわたし、今のところ一回もイッてないしな…」
「こ、このまま続けていてはあの小娘を救う以前に、儂の気が狂うわ…! ルドヴィカ、何とかせよ…!」
「うーん…。それじゃあ、ちょっとデバフかけてみる?」
「は…? でばふ…?」
聞きなれない言葉に首をかしげるモードに対し、ルドヴィカはろくな説明もしないまま体内の魔力を練ると、モードに向かってお馴染みの催淫魔法を放った。
一度竜の身で経験したことのある魔法を喰らったモードは「なっ!?」と驚愕しつつも、次第に身体の内側から込み上げてくる熱に屈し、その場に膝をつく。
硬い黒鱗に隠れたモードの性器からとろり♡と愛液が零れてくるのを感じながら、モードはデバフの意味を直感的に理解した。
「ひぁっ、あぅぅ…♡ き、きさまっ、なにをするっ♡」
「一回かけられたことあるんだし、だいたいわかるでしょ。これでトラップに引っかかった時のHPの減りが早くなるはずよ。…せっかくだから自分にもかけとこ」
【ルドヴィカとモードのステータス:発情状態】【感度:レベルMAX】
ルドヴィカが催淫魔法を施したことによりふたりのステータスが変化し、エロトラップダンジョンの攻略という点においては、最も弱体化した状態となった。
あとはトラップに引っかかってHPを減らしにかかるのみであるが、効率性を優先するならばじわじわと獲物を舐るようなトラップよりは、ひたすら獲物を責め立てる激しいトラップに引っかかりたい。
尚且つモードは処女を守り抜かなければならないという縛りがあることを顧みると、選択肢はなかなかに絞られてくる。
「ねえちょっと、このダンジョンって脳姦系のトラップとかないの? わたしは別にいいんだけどモードは挿入NGだから、脳みそから弄りまわしてイカせるようなのがあると助かるんだけど」
どこからともなく聞こえてくる謎の声にルドヴィカがダメ元で声をかけてみると、意外にも要望が聞き入れられたのか、天井から如何にもな怪しい紐が垂れ落ちてきた。
言葉の意味はわからないながらも、“脳姦”などという単語に良い印象など抱けるはずもなく、身の毛もよだつような嫌な予感がモードに襲い掛かる。
「きたきた、気が利くじゃない♡ よいしょっと♡」
「ルドヴィカ、待っ…!」
モードの静止も聞かず、ルドヴィカが馬鹿正直に目の前の紐を力いっぱい引っ張った。
すると次の瞬間、両側面の壁の一部がくるりと回転し、そこに一人用の安楽椅子が現れる。
更にはそれぞれの安楽椅子の脇から拘束用のベルトがしゅるしゅると伸びてきて、咄嗟に逃げようとしたモードと従順なルドヴィカを安楽椅子へと拘束した。
両手と両足を椅子にがっちりと縛り付けられ、身動きのできないモードとルドヴィカへ、今度はヘルメット状の怪しげな機械を頭に被らされる。
がぽっ♡
「ぐあっ!?♡ な、なんじゃこれは…!」
小さな頭を覆う謎の機械にモードが困惑していると、次の瞬間には全身に稲妻が走ったような強い感覚が走った。
「!?!?!?♡♡♡♡♡」
まるで頭が真っ白になったような強烈な刺激に、咄嗟の言葉すら出てこずただただ身を震わせる。
ルドヴィカのリクエストに則り、先ほど頭に被らされたヘルメットから脳に直接刺激を加えられ、強引に快感を呼び起こされているのだ。
自分の力ではどうすることもできない強制的な快楽に震えるモードを更に責め立てるように、ヘルメットの側面から細いコード状の触手が出てきたかと思うと、無防備な耳の穴から侵入し更に奥を弄ぶ。
くちゅくちゅくちゅくちゅ♡♡♡
「ガァッ!?♡♡♡ あがっ、ぐあぁっ…!♡♡♡」
もはや平静を保つこともできなくなったモードが、死に物狂いで拘束から抜け出そうと暴れ出す。
しかしルドヴィカの魔法によって異常なまでに感度が上昇した身体ではまともに力が入らず、ただベルトの軋む音が響くばかりだ。
膨大なHPを誇る古代竜といえど脳への直接的な刺激にはなすすべもなく、催淫魔法の効果もあって急速にHPが減少していった。
【モードの残りHP:434252002】
「うぎぃっ…!♡♡♡ や、やめ…!♡♡♡」
くちゅくちゅくちゅくちゅ♡♡♡
「ァ~~~ッ!♡♡♡♡♡ ぐあぁっ!♡♡♡♡♡」
【モードの残りHP:393330048】
「やめろぉっ♡♡♡♡♡ あたまがヘンになるぅっ♡♡♡♡♡ これ以上はやめろぉぉぉっ♡♡♡♡♡」
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ♡♡♡
「ひあぁぁぁーーーっ!♡♡♡♡♡リントヴルムっ♡♡♡♡♡ たすけてくれえっ♡♡♡♡♡ このままではしんでしまうっ♡♡♡♡♡」
【モードの残りHP:361105782】
元の桁が破格なだけにまだまだゲームオーバーとはいかないが、先ほどまでとは比べ物にならないほどの速さで減少していくHPに、ルドヴィカがしめしめとほくそ笑む。
無論、モードと全く同じ脳責めがルドヴィカにも行われているため、ルドヴィカにも同じだけのダメージと快感が襲い掛かっていた。
くちゅくちゅくちゅくちゅ♡♡♡
「おひぃぃぃっ!♡♡♡ しゅごいっ♡♡♡ わたしいま、脳みそくちゅくちゅされてるぅっ♡♡♡ あたまブッこわれちゃうっ♡♡♡」
【ルドヴィカの残りHP:228】
モードの下降率と比べれば緩やかではあるものの、ルドヴィカのHPも順調に減っていっている。
この調子でいけばモードよりかなり早くゲームオーバーになるはずだが、この状態でモードをひとり置いていくのは何だか可哀そうな気がするし、欲を言えばもっと様々なエロトラップを味わいたい。
ルドヴィカは脳責めを受けながらもこっそり自身に回復魔法を施すと、本能のままに更なる要望を喘ぎ叫んだ。
「ちょっとダンマスぅ♡♡♡ これだけじゃ足りないから、ありったけのトラップ追加してぇっ♡♡♡ あ、モードには挿入ナシのやつにしてあげてねっ♡♡♡」
「!?♡♡♡♡♡」
キサマ正気か、とでも言いたげな目でルドヴィカを睨むモードの意志などお構いなしに、やたらとサービス精神旺盛なダンジョンが次々にトラップを用意し始める。
ローターや電マらしきものが付属された大量の機械型触手(ルドヴィカにはディルド付き触手も追加)、わきわきと指を蠢かす大量の手型マシン、明らかに媚薬がその類であろう謎の液体入りの注射器、その他もろもろ…。
これから行われるであろう地獄の責め苦の予感に、モードはいっそ絶望的な気持ちになり、ルドヴィカは目を輝かせながら舌なめずりをした。
三十分後…………
「ァァーーーーーッ!♡♡♡♡♡ しぬっ、しぬぅ~~~っ♡♡♡♡♡」
「お゛ほぉぉ~~~っ♡♡♡♡♡ これやばいぃっ♡♡♡♡♡ 脳みそくちゅくちゅと電マのダブル責めぇぇぇっ♡♡♡♡♡」
「たのむっ♡♡♡♡♡ もうやめてくれぇっ♡♡♡♡♡ これいじょうはくるうっ♡♡♡♡♡ もどってこれなくなるぅぅぅっ!♡♡♡♡♡」
一時間後…………
「ァガッ♡♡♡♡♡ オゴッ、オ゛ォッ♡♡♡♡♡ ガァァァッ♡♡♡♡♡」
「んんぅっ、モードだいじょうぶ?♡♡♡♡♡ 目とか竜のそれに戻って…お゛あぁぁぁ~~~~~~っ♡♡♡♡♡ しょこはらめぇぇぇぇぇっ!♡♡♡♡♡」
「グルルルルルッ♡♡♡♡♡ ガウゥッ♡♡♡♡♡」
一時間半後…………
「…ァ……グァ……」
「モードがんばれっ、あとちょっとだよっ♡♡♡♡♡」
「ァガ……ガ…………」
「ア゛ーーーッ♡♡♡♡♡ やばぁ♡♡♡♡♡ わたしもトびそうっ♡♡♡♡♡」
二時間後…………
「…………」
「ぜぇーっ…♡ ぜぇーっ…♡」
【ルドヴィカとモードのHPが0になりました】
「あは…♡ これやばかったぁ…♡ ぜったいまたやりたい…♡」
「…………」
約二時間にわたる脳姦&その他もろもろのトラップ責めにより、ようやくルドヴィカとモードのHPが0になった。
しかしながらその代償は大きく、モードは完全に意識を飛ばして死体のような有様である。
一方、本来であればもっと早くゲームオーバーになっていたはずのルドヴィカは途中わざとHPを回復していたこともあり、完全に脳姦プレイに味を占めたのか妙に生き生きとしていた。
すると次の瞬間、ふたりの身体を青白い光が包みこんで、どこか別の空間へと転移されそうになる。
「! やっぱり、ゲームオーバー専用の空間が…」
「……」
「ちょっとモード、起きて! 姉様のところに行けるわよ!」
ルドヴィカの呼びかけにモードが目を覚ますこともなく、ふたりを包む青白い光が消えた時、その場には誰の姿もなかった。
* * *
「…ここは……」
ルドヴィカとモードが転移された場所は、まるで巨大な生き物の体内にいるかのような、大量の肉塊に覆われた広い空間だった。
辺りのあらゆる場所からぐちゅぐちゅ♡という湿った音と、「あぁんっ♡♡♡」「もっと、もっとぉ♡♡♡」「イクイクイクぅ~っ♡♡♡」などといった女の矯正が聞こえてくるその場所は、紛れもなくゲームオーバーになった者が行き着くダンジョンの最果てだろう。
しかしながら周囲のどこにも声の主らしき女の姿が見当たらず、恐らく彼女らはこの肉塊の中に取り込まれているのだと思われる。
「…私としてはこのまま取り込まれて、ここでの苗床プレイも楽しみたいところだけど…」
「…うぅ…ぐ……♡」
「あ、モード起きた? 竜とはいえそのロリ体型じゃ相当キツかったと思うけど、大丈夫?」
ルドヴィカが己と欲望と本来の目的を天秤にかけていると、散々にイキ狂わされて意識を失っていたモードが目を覚まし、ふらふらとよろめきながら立ち上がった。
さすがに心配になったルドヴィカがその身を案じてはみたものの、モードの瞳は血よりも濃い深紅に染まっており、瞳孔は完全に開ききって竜の眼そのものとなっている。
「グルァァァァァァァァァァッ!!!!!」
次の瞬間、凄まじい叫喚がモードから発せられ、可愛らしい少女の姿から一転して元の古代竜の形態へと変化した。
ルドヴィカが「ヤバイ」と思ったのも束の間、竜形態のモードは深く息を吸い込んだかと思うと、灼熱の炎の息を辺り一面に吹き放つ。
するとこの空間を覆っていた肉塊がみるみるうちに焼き尽くされ、肉塊の中に捕らわれていた女たちの姿が次々に明らかとなった。
(や、やばっ…! モード、完全に八つ当たりモードだ…!)
【ガァァァァァァァァッ!!! ゴアァァァァァァァァァッ!!!!!】
「え、えーっと、とりあえず人命優先! 炎の精霊よ、彼の者らを守りたまえ!」
ルドヴィカが大慌てで肉塊の中の女たちへ防護魔法を施し、その身が焼き尽くされるのを防ぐ。
モードの八つ当たりによるブレス攻撃はしばらく続き、とうとう目に見えている全ての肉塊が残らず消し炭と化すまで炎の息を吐き続けた。
【ハァーッ…ハァーッ…ハァーッ…】
「お…落ち着いた…?」
【…ぬしにリントヴルムの血が流れておらなんだら、今この場で頭から貪り食らい、この世に血の一滴も残らぬようにしてくれていたわ…】
(…モードが一途な古代竜でよかった…。ありがとうご先祖様…)
モードの心を射止めた偉大な先祖のおかげで命拾いしたことを喜びつつ、ルドヴィカは一番近くにいた女へと駆け寄ってその身を起こした。
完全に理性が崩壊しているのであろう彼女の表情はいっそ狂気的なまでの笑顔であり、瞳に光は宿っておらず、舌を突き出してだらだらと唾液を垂らしている。
「もっとぉ、もっとズコズコしてぇっ♡♡♡ わたしはここで永久に気持ちいいコトするのぉっ♡♡♡」
「案の定、ゲームオーバーになった女の人はここに送られて、死ぬまで犯されるっていう仕組みらしいわね。とすると姉様もどこかにいるはず…」
「あぅぅぅっ♡♡♡ おとうひゃまっ♡♡♡ もっとぉ♡♡♡ もっといっぱいシてぇっ♡♡♡」
噂をすればなんとやら、タイミングよくエレクトラの嬌声が聞こえてきて、ルドヴィカは急いで声のする方へと駆け寄る。
そこに倒れていたエレクトラは先ほどの女よろしく幸福そうな笑顔を浮かべながら、存在しない陰茎を味わうかのように腰をへこへこと動かしていた。
「姉様、しっかりしてください!」
「あはぁっ♡♡♡ じゃましないれぇっ♡♡♡ おとうひゃまはエレクトラのだもんっ♡♡♡ おとうひゃまのおちんぽはエレクトラだけのものなんだからぁっ♡♡♡」
「…ファザコンだとは思ってたけど、ここまで拗らせてたとは…。仕方ない、ちょっくら正気に戻ってもらうか」
想像以上に重傷だったエレクトラのファザコンぶりに驚きつつも、ルドヴィカはエレクトラの額に手を宛がって、知りうる限り最高位の回復魔法を施した。
最初はへらへらと笑っていたエレクトラも、自身の体内にルドヴィカの魔力が満ちていくにつれ、次第に正気を取り戻していく。
やがて完全に常の状態へと戻ったエレクトラは、現状を飲み込めきれずにポカンとした表情でルドヴィカを見上げた。
「わ…わたくしはいったい…?」
「大丈夫ですか、姉様?」
「え、ええ…」
【おいルドヴィカ、小娘。あれを見やれ】
ルドヴィカはエレクトラに手を貸して立たせると、モードからの呼びかけに応じて彼女の視線の先へと目を向けた。
ルドヴィカは最初、そこにあったものが何なのかわからなかったが、その正体をいち早く察知したエレクトラが驚愕に顔を歪める。
「!? あ、あれは…!」
モードが示した場所にあったもの―――
それは掌に収まるかどうかというほどの、とても小さな竜の亡骸だった。
「あ…あれって古代竜!? でもこんなに小さい竜なんて…!」
【成程な、これで納得がいった。この遺跡に施された古の魔法の源が何なのか…】
「まさか…古代竜の魔力を動力源にしていたというんですの…!?」
【我ら竜の成体は、膨大な魔力を体内で生成する。竜を捕らえることができれば、不可能ではあるまいて】
口調は冷静そのものであるが、モードの瞳に強い怒りの色が宿る。
つまるところこのダンジョンの制作者は、ダンジョンの入り口に仕掛けられた結界に始まりダンジョン中に張り巡らされたおびただしい数のトラップを稼働させるための魔力を、古代竜が生成する魔力によって補っていたというのだ。
誇り高い種族である竜種がそのような道具のような扱いを好んで受けるはずもなく、恐らくは何者かによって捕らえられ、無理やりこのダンジョンに縛り付けられていたと考えて間違いがないだろう。
【…そこにいるのは、我が同族か…?】
ふと聞こえてきたか細い声に、モードのみならずルドヴィカとエレクトラもが身を固くする。
亡骸であると思われていた小さな竜が、まだ辛うじてその命を取り留めていたのだ。
モードの黒い鱗とは違うくすんだ赤い鱗で身を覆うその竜は、僅かに残った力を振り絞りながらモードに語りかけてくる。
【…おぬしはもしや、黒き竜モードか…】
【! まさかぬしは…赤き竜メルリヌス…!?】
【はは…最期にまみえるのがまさかおぬしとはな…。人間に懸想して姿を消したあの悪童に看取られて死ぬとは、さすがの我も夢想だにせんかったわ…】
名をメルリヌスというらしきその竜は、懐かしそうに目を細めると小指ほどの長さしかない尾を僅かに振った。
【何があったのじゃ、メルリヌス…! ぬしほどの竜が、このような下卑た遺跡に捕らわれるなど…!】
【…おぬしがあの人間と共に姿を消した後、我ら竜が住まう谷に別の人間が現れた…】
かき消えてしまいそうなほどの弱った声で、メルリヌスが淡々と語り始める。
【その人間は我が伴侶が産んだ双つの卵を盗み…返してほしくば力を貸せと我に言ってきた…。我は卵を守るためにその人間に従い、幾つもの国を焼き払い、そこに住まう人間どもを殺してきた…】
【……!】
【やがて卵が孵り、幼き双竜が生まれた…。我は秘密裏に双竜を逃がそうとしたが、あの人間に感づかれ…。あやつが作ったこの遺跡に捕らえられ、このような身体になるまで魔力を貪られることとなったというわけだ…】
【…ゆ…許せぬ…! 我ら誇り高き竜に対して、このような辱め…!】
メルリヌスが受けた仕打ちにモードが激怒する。
ルドヴィカもまた、その人間のあまりにも非道な行いに心の中で憤ったものの、自分の欲望を満たすためにちょくちょく魔物を轢殺しているルドヴィカも同じ穴の狢であるという事実には、都合よく目を背けることにした。
【…黒き竜モードよ、見ての通り我は死に体だ…。辛うじて残った魔力もいずれは尽きる…】
【……】
【竜を殺せるのは時の神か、同族の牙だけ…。残酷な時の神に己が命運を託すのにも疲れ果てた…。我を憐れむ心があるのならば、その牙で我を殺してくれ…】
【…あいわかった】
モードは痛み入るように目を伏せると、身をかがめてメルリヌスの小さな身体へとその牙を伸ばした。
ルドヴィカは咄嗟に「ちょっと待っ…!」とモードを止めようとしたが、豆粒のような小ささながらも鋭く光るメルリヌスの赤い瞳に射られ、何も言うことができなくなる。
メルリヌスは最後の力を振り絞って短い首を持ち上げて、モード、そしてルドヴィカと視線を合わせた。
【我が死ねば、この遺跡とそこの娘たちにかけられた魔法も解ける…。その娘に刻まれた刻印も消え去るだろう】
「え…!」
【人の子よ。我が同族をここまで導いてくれたこと、感謝する。これでようやく、長きにわたる苦しみから解き放たれる…】
「……」
【…メルリヌスよ、死ぬ前にその人間の名を教えろ。もはや生きてはおるまいが…儂は決してそやつを許さぬ】
するとメルリヌスが先ほどまでの弱弱しさから一転、怒りと殺意のこもった低い声でモードの問いかけに答えた。
【…奴の名はグイベル…。グイベル・ジーンだ…】
【…その名、決して忘れぬ。ぬしの内なる怒りも、憎しみも…すべて儂が引き受けた】
【ふ…最期に会えて嬉しかったぞ、モードよ】
メルリヌスが力なく笑った、次の瞬間―――
モードはその鋭い牙を、メルリヌスの小さな身体に突き立てた。
【…スィズ…セヴェリス…弱き父を許せよ…】
幾千年に及ぶ苦しみの日々に終わりを迎えたメルリヌスの今際の顔は、とても安らかなようにルドヴィカの目には映った。
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