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カフェをめぐる物語(1)
好きと言えなかったけど
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春樹さんが、感心したように「ほう」とつぶやいた。
「和食だ。おいしそうだなぁ・・。」
「私のも、こっちに持って来るね。」
向かい合って座るのはあまりにも気恥ずかしかったので、マキノは春樹さんの横顔を正面に見られる90°横に座った。
「どうぞ。お召し上がりくださいませ。」
「いただきます。こんな和食は、久しぶりだな。」
マキノは、春樹さんがお箸を手に取るところまでニコニコと待っていたが、自分がお箸を持ち上げる頃にはもう春樹さんの反応を観察するのを忘れ、自分が食べる事に意識が集まってしまっていた。
とろろをくるくるとかきまぜて、最初から麦ごはんにかけた。マキノはとろろごはんが大好きなのだ。おなかも減っていた。
大好きなとろろを食べる幸せ。
春樹さんといる幸せ。
うふふん・・。
春樹さんは、一人鍋の中の野菜と牡蠣を、レンゲで自分の取り皿にとった。
「マキノちゃん。」
「はい?」
「毎日ごはん作ってくれるって言ってくれて、すごく嬉しかったよ。」
「あ・・うん。」
「マキノちゃんは、泣いてる奴を見たら、全員にごはんを食べさせそうだね。」
「!!はうっ・・!?」
予想外のご意見ですが・・・・・
ひっ、否定できない・・・かもしれない・・ような気もする・・。
「オレは、もう元気なので、あれ撤回していいんだよ。」
「えっ・・そっ、そう?」
そう言われてしまうと、ちょっと寂しいような・・。
「マキノちゃん。」
「はい?」
「オレね・・。」
「?」
「マキノちゃんのこと、好きだよ。」
「!!」
何この展開!! 突然きた!!
「・・そういえば、ちゃんと言ってなかったなと思って。」
「・・・あ。」
今。
わかった気がする・・
イズミさんが言ってた『つっこみどころ』の意味が。
きっとこの不器用さだよね・・・。
全部を正直に言葉にしてしまうこと。自分が思っていることをごまかせないこと。
でもイズミさんは『あなたたち』って言ってた・・。
・・わたしも?・・そうか、わたしもか・・。
でも、どこが・・?
少しうつむいて、
「わたし・・。」と言いかけたが、続きが言えなかった。
わたしも、春樹さんのこと、好き?
逢えると・・嬉しい。そして帰って行く時、・・寂しい。
うん・・・好き。・・でも、言えない。
春樹さんが、ふわりと笑った。
「これ、おいしいね。牡蠣のお鍋。」
「あ、そう?」
「これのレンコンの中はエビ?自分でしたの?手が込んでるね。」
「おいしい?」
「うん。おいしい。」
「よかった。」
お料理を褒められると、とても嬉しい・・。
なんだか途中でごまかされたような気がするけど、まぁいいか。
「今日、これ本当にごちそうになっちゃっていいのかな?」
「いいに決まってるよ・・私が来てって言ったんだもの。」
テレビはマキノのあまり好きでないバラエティ番組が始まっていた。
音量は小さくしてあるから、テレビはBGMの代わりだ。
春樹さんは今日学校であった事を話しをして、マキノは元同僚が来てくれたことや、お店のこれからのことなど、とりとめのない事を話しながら、二人はご飯を平らげていった。
「ごちそうさま。おいしかった・・これ、毎日食べられたら幸せだろうなぁ。」
「んー?・・ん?」
さっき・・いらないって言われたよね?
春樹さんの言わんとするところがよくわからない。
「えと・・コーヒーは?」
「うん。いただきます。」
マキノがコーヒーを淹れると、春樹さんは以前そうしたように、カップを長い指にかけた。
元旦以来、何度か思い出していた春樹さんの手だ。かっこいい手だな。
・・私の手は、ちょっと指が短くて、丸い。
「また今度、遊びにいこうよ。時間とれそうかな?」
「うん。」
「今度は、オレがおごるからね。」
「うん。」
「じゃあ、今日は帰るよ。」
「あっ。はい。」
「ありがとう。また来る。」
また小学生にするように、頭をぽんぽんされた。
今ぽんぽんした頭頂部は、痛くないの。
・・でも、後頭部は、まだちょっと痛いのです。
・・・春樹さんは帰っていった。
一人になってから、ぐるぐると考える。
撤回かぁ・・
撤回・・ってことは、毎日ごはん作らなくてもいいの・・。
・・でも、私のこと好きって言った。
うわ、好きって言ったよね。
今ごろドキドキしてきた。なんでこう、反応がワンテンポ遅れるのかしら。
たしかに、好きって言ってくれたよね・・。
・・・でも・・ご飯はいらないって・・言ったね・・。
うーむ・・。
もうね、私としてはね・・。
お泊りしてくれてもいいぐらいなんだけど・・って、思っちゃうんだな。
・・春樹さーん。
でも。
好きって、言えなかったんだなあ・・。
「和食だ。おいしそうだなぁ・・。」
「私のも、こっちに持って来るね。」
向かい合って座るのはあまりにも気恥ずかしかったので、マキノは春樹さんの横顔を正面に見られる90°横に座った。
「どうぞ。お召し上がりくださいませ。」
「いただきます。こんな和食は、久しぶりだな。」
マキノは、春樹さんがお箸を手に取るところまでニコニコと待っていたが、自分がお箸を持ち上げる頃にはもう春樹さんの反応を観察するのを忘れ、自分が食べる事に意識が集まってしまっていた。
とろろをくるくるとかきまぜて、最初から麦ごはんにかけた。マキノはとろろごはんが大好きなのだ。おなかも減っていた。
大好きなとろろを食べる幸せ。
春樹さんといる幸せ。
うふふん・・。
春樹さんは、一人鍋の中の野菜と牡蠣を、レンゲで自分の取り皿にとった。
「マキノちゃん。」
「はい?」
「毎日ごはん作ってくれるって言ってくれて、すごく嬉しかったよ。」
「あ・・うん。」
「マキノちゃんは、泣いてる奴を見たら、全員にごはんを食べさせそうだね。」
「!!はうっ・・!?」
予想外のご意見ですが・・・・・
ひっ、否定できない・・・かもしれない・・ような気もする・・。
「オレは、もう元気なので、あれ撤回していいんだよ。」
「えっ・・そっ、そう?」
そう言われてしまうと、ちょっと寂しいような・・。
「マキノちゃん。」
「はい?」
「オレね・・。」
「?」
「マキノちゃんのこと、好きだよ。」
「!!」
何この展開!! 突然きた!!
「・・そういえば、ちゃんと言ってなかったなと思って。」
「・・・あ。」
今。
わかった気がする・・
イズミさんが言ってた『つっこみどころ』の意味が。
きっとこの不器用さだよね・・・。
全部を正直に言葉にしてしまうこと。自分が思っていることをごまかせないこと。
でもイズミさんは『あなたたち』って言ってた・・。
・・わたしも?・・そうか、わたしもか・・。
でも、どこが・・?
少しうつむいて、
「わたし・・。」と言いかけたが、続きが言えなかった。
わたしも、春樹さんのこと、好き?
逢えると・・嬉しい。そして帰って行く時、・・寂しい。
うん・・・好き。・・でも、言えない。
春樹さんが、ふわりと笑った。
「これ、おいしいね。牡蠣のお鍋。」
「あ、そう?」
「これのレンコンの中はエビ?自分でしたの?手が込んでるね。」
「おいしい?」
「うん。おいしい。」
「よかった。」
お料理を褒められると、とても嬉しい・・。
なんだか途中でごまかされたような気がするけど、まぁいいか。
「今日、これ本当にごちそうになっちゃっていいのかな?」
「いいに決まってるよ・・私が来てって言ったんだもの。」
テレビはマキノのあまり好きでないバラエティ番組が始まっていた。
音量は小さくしてあるから、テレビはBGMの代わりだ。
春樹さんは今日学校であった事を話しをして、マキノは元同僚が来てくれたことや、お店のこれからのことなど、とりとめのない事を話しながら、二人はご飯を平らげていった。
「ごちそうさま。おいしかった・・これ、毎日食べられたら幸せだろうなぁ。」
「んー?・・ん?」
さっき・・いらないって言われたよね?
春樹さんの言わんとするところがよくわからない。
「えと・・コーヒーは?」
「うん。いただきます。」
マキノがコーヒーを淹れると、春樹さんは以前そうしたように、カップを長い指にかけた。
元旦以来、何度か思い出していた春樹さんの手だ。かっこいい手だな。
・・私の手は、ちょっと指が短くて、丸い。
「また今度、遊びにいこうよ。時間とれそうかな?」
「うん。」
「今度は、オレがおごるからね。」
「うん。」
「じゃあ、今日は帰るよ。」
「あっ。はい。」
「ありがとう。また来る。」
また小学生にするように、頭をぽんぽんされた。
今ぽんぽんした頭頂部は、痛くないの。
・・でも、後頭部は、まだちょっと痛いのです。
・・・春樹さんは帰っていった。
一人になってから、ぐるぐると考える。
撤回かぁ・・
撤回・・ってことは、毎日ごはん作らなくてもいいの・・。
・・でも、私のこと好きって言った。
うわ、好きって言ったよね。
今ごろドキドキしてきた。なんでこう、反応がワンテンポ遅れるのかしら。
たしかに、好きって言ってくれたよね・・。
・・・でも・・ご飯はいらないって・・言ったね・・。
うーむ・・。
もうね、私としてはね・・。
お泊りしてくれてもいいぐらいなんだけど・・って、思っちゃうんだな。
・・春樹さーん。
でも。
好きって、言えなかったんだなあ・・。
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