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OL時代
はじまり
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「菅原さん。ちょっと。」
「はい。」
「松山商会さんにわざわざ記載例のファックスをしたの?また電話がかかって来てたわよ。代理店さんにはヘルプデスクセンターがあるんだから、あなたの時間の無駄よ。」
「ヘルプデスクの電話番号はご案内したんですけど・・。」
「甘やかしていると,代理店さんも成長しないわ。」
「・・はい。」
菅原マキノ二十三歳、大手の保険会社へ就職することに成功し、以来1年半経過。今日も上司から厳しい指摘が降ってきた。
マキノが受けた電話の問い合わせは、ご年配の代理店さんで、昔からの顧客相手に細々と仕事を続けている。マキノとは以前から面識があった。パソコンが苦手だと言うので、手書きでの手続きを指導したのだが、上司はそれが気に入らないようだった。
代理店を自立させよ、と謳う上司の言い分は分からないでもないが、インターネットを一から覚えるという作業はこの七十歳を超えクリックもままならない代理店に課す負担としては大き過ぎるし、ミスがあれば支社での手間も倍になる。マキノは、胸の内で自分の方針のまま対応を進める決意を固め、それを説明する手間を省き、口では素直に「はい。」と返事をした。
手続きそのものは間違っていないし、あとで見つかって素直じゃないと言われようが、自分が正しいと思う事は曲げられない。
就職活動をしている時は、この会社は仕事のやりがいもありそうで優秀な会社だと思ったから、苦労して内定を勝ち取ったのだ。なのに、入社から半年も経たないうちに、しかるべき理由さえあればいつ辞めてもいいぐらいの覚悟がマキノの胸の内には育っていた。
正直に言うならば、一番苦戦しているのは自分の教育係である上司(糸原女史)への対応。この人はおそらく理想が高すぎるのだと思う。会社のマニュアルや方針に疑問を持つことなく完璧に倣うべきなのだろうが、マキノはどうしても個々の事情やニーズなど余分な背景を考慮に入れてしまい、対応に時間がかかることが多かった。
上司の言う非効率的な仕事も、体力を頼りに人の倍動いてあとは笑顔と勢いでとりかえせばいい。これでいいのだ、これが私。
そう思いつつ、マキノは松山商会さんに電話を折り返した。
「ファックスは届きましたか?できそうですか?」
「うん。読めるよ。できると思う。計算してもらってありがとうね。」
代理店さんの安心した声を聞いてマキノ自身もホッとした。親切にしているのか成長を妨げているのか、仕事相手と必要以上に親しくする必要はないのか、代理店さんの求めるものをくみ取って気持ちよく仕事をしてもらおうとするのは間違っているのか・・。糸原女史がそばにいないことを確認してから、マキノは小さくため息をついた。
またしばらく、デスクに向かって自分の仕事をしながら、しかしそういえば、最近、最後の砦である資本の体も怪しいかもしれないな、とぼんやり考えた。ここ1カ月ほど前から耳鳴りがする。ベッドに入って寝落ちるまでの短い時間だが耳の中でぶーんという低い音がした。最初に気づいた時は、冷蔵庫の音かお隣りの部屋の室外機の振動かと音源を探してみたのだが、結局わからなかった。外部からの音ではないと確信したものの、自分の神経系が悪いのか耳の疾患か。運動不足かストレスのせいか。
そうだな・・煮詰まってきたこのストレスをリフレッシュしようかな。
うん、久しぶりにバイクに乗って出かけるのはどうか。マキノはハイツの駐車場に停めたままの自分のバイクを思い浮かべた。前回動かしたのは一か月前。またエンジンを回さないといけない。これ以上寒くなるとますます乗らなくなるだろう。
バイクはいい。自然に溶け込んでいる実感がある。解放感があって、普段と違う景色を楽しめて、なによりバイクを自分の意志のとおりにマシンを操るあの一体感が好き。
行くとしたらどこへ?せっかくだから一泊。近場でもいい。温泉もいいな。一人がいい。
自由に動けない閉塞感が人間関係のせいだと声に出したくない。愚痴を共感しあえる会社の同僚はいるけれど,切り離したかった。
一時でも、どんなしがらみも気にしなくてもいい状態になりたい・・。
考え事のせいで、キーボードを打つマキノの手は、いつのまにか止まっていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「マキノ。一緒にごはん食べよう。」
一年先輩であるサクラから声をかけられた。彼女は、糸原女史から叱られる仲間であり、気をつかわなくてもよくて、尚且つ気の合う先輩だ。
サクラは、休憩室の机にお弁当を置いて椅子を引いた。彼女のお弁当箱は幼稚園児が使うようなサイズだ。彼女は、そんなに太って見えないのにしょっちゅう痩せたいと言っている。
それに対し、マキノの昼食は何のこだわりもないコンビニのおにぎりとサンドイッチとペットボトルのお茶。サクラは、「いただきます。」と礼儀正しく手を合わせて挨拶をしてから、たまご焼きを口に放り込んだ。
「ねぇマキノ。明日、お昼当番でしょ。一緒に茶々のカフェランチに行かない?」
オフィスでは、お昼時も来客の対応をしなければならず、その時間帯の留守番が決まっていて、お昼当番の者は早めに昼食をとる。十一時過ぎなら人気のOL向けのお店でもまだ空いていることが多くて、時間には余裕を持って帰ってこれる。
しかし問題は、今言った茶々のランチは、焼き立てパンがバイキングということだ。
「いいけど。その店を選ぶ思考回路は、ダイエットに不向きだよね。」
「まあね。自分でもそう思う。」
サクラは肩をすくめた。サクラは一応先輩なのに、対するマキノの態度は少し尊敬が足りない。
とりあえず、それぐらいの自覚は、ある。
翌日の十一時過ぎ。マキノとサクラはカフェ茶々へ足早に出かけた。ランチはそれぞれが気に入ったメイン料理を選ぶ。サクラはステーキサラダプレート。マキノはチキンソテープレート。さすが女子向けのランチ、どちらもカラフルで野菜とフルーツが多め。パンとスープは自由にとりに行くようになっている。
「よりによってボリュームたっぷりのメニュー選んだね。サラダと名がつけばいいってもんじゃないよね。」
「わかってるってば。わかってるけど、あーもう、どうでもいいや。」
サクラとマキノは、メインが運ばれるまでにスープとパンをせっせと運んだ。スープはミネストローネとポタージュと野菜コンソメの3種で、おかわり自由だから少しずつよそって3種類とも攻略する。ミニパンもそれぞれ3個ずつ選んだ。
「ああ嬉しいなぁ。外食って・・。」
「そだねぇ。・・サクラのそのサラダに入ってる赤っぽい葉っぱ食べていい?」
「いいよ。あ、ちょっとぴりっとするね。」
これは、たぶんレッドマスタードのベビーリーフ。マキノは、お料理が運ばれると、まず自分のレパートリーに加えられるかどうかを吟味する癖があった。サクラの食べているプレートがおしゃれに見えるのは、ちょっと変わった感じのサラダのおかげで、そのベビーリーフとアルファルファを使っているからだ。自分のチキンソテーも、トマトソースのガーリックとバジルが効いてて本格的に思えるけれど、焼き方を工夫してバジルの風味さえ効かせれば簡単にできるだろう。もっと手近で安価に手に入る野菜で、これぐらいに見せることもできるんじゃないかな。
お料理のレシピに思いを巡らしていると、ふと昨日、会社の帰りに立ち読みした旅行情報誌に載っていたペンションを思い出した。紹介されていたお料理に、心がとても惹かれたのだ。あの本を買っておけばよかった。マキノは、チーズ入りのミニパンを半分にちぎってほおばってから、サクラに提案した。
「サクラちゃん。一度私の手料理食べてみない?」
「えっ、マキノお料理できるの?」
「できるってほどでもないけど・・。」
「期待するよ?いつ?そうだ!マキノは一人暮らしでしょ?お泊りさせてよ。」
「いいよ。いいけど、もうしばらく先にしてよ?お掃除しなきゃだからね。」
「ふふっ、わかった。マキノとはゆっくりしゃべりたかったんだ。楽しみっ。」
サクラの反応が思った以上によかった事にマキノは気をよくした。今日のランチなら、自分にもできそうな気がする。高級食材でなくても、サクラだから、たぶん大丈夫。
「私はお酒でも買っていくわ。」
サクラが機嫌よくお肉をほおばった。
「どんな献立がいいかな・・。」
トマトソースをのせたチキンにフォークを突き刺しながら、マキノは食べたい物と作りたいもの、いくつかのメニューを思い浮かべていた。
「はい。」
「松山商会さんにわざわざ記載例のファックスをしたの?また電話がかかって来てたわよ。代理店さんにはヘルプデスクセンターがあるんだから、あなたの時間の無駄よ。」
「ヘルプデスクの電話番号はご案内したんですけど・・。」
「甘やかしていると,代理店さんも成長しないわ。」
「・・はい。」
菅原マキノ二十三歳、大手の保険会社へ就職することに成功し、以来1年半経過。今日も上司から厳しい指摘が降ってきた。
マキノが受けた電話の問い合わせは、ご年配の代理店さんで、昔からの顧客相手に細々と仕事を続けている。マキノとは以前から面識があった。パソコンが苦手だと言うので、手書きでの手続きを指導したのだが、上司はそれが気に入らないようだった。
代理店を自立させよ、と謳う上司の言い分は分からないでもないが、インターネットを一から覚えるという作業はこの七十歳を超えクリックもままならない代理店に課す負担としては大き過ぎるし、ミスがあれば支社での手間も倍になる。マキノは、胸の内で自分の方針のまま対応を進める決意を固め、それを説明する手間を省き、口では素直に「はい。」と返事をした。
手続きそのものは間違っていないし、あとで見つかって素直じゃないと言われようが、自分が正しいと思う事は曲げられない。
就職活動をしている時は、この会社は仕事のやりがいもありそうで優秀な会社だと思ったから、苦労して内定を勝ち取ったのだ。なのに、入社から半年も経たないうちに、しかるべき理由さえあればいつ辞めてもいいぐらいの覚悟がマキノの胸の内には育っていた。
正直に言うならば、一番苦戦しているのは自分の教育係である上司(糸原女史)への対応。この人はおそらく理想が高すぎるのだと思う。会社のマニュアルや方針に疑問を持つことなく完璧に倣うべきなのだろうが、マキノはどうしても個々の事情やニーズなど余分な背景を考慮に入れてしまい、対応に時間がかかることが多かった。
上司の言う非効率的な仕事も、体力を頼りに人の倍動いてあとは笑顔と勢いでとりかえせばいい。これでいいのだ、これが私。
そう思いつつ、マキノは松山商会さんに電話を折り返した。
「ファックスは届きましたか?できそうですか?」
「うん。読めるよ。できると思う。計算してもらってありがとうね。」
代理店さんの安心した声を聞いてマキノ自身もホッとした。親切にしているのか成長を妨げているのか、仕事相手と必要以上に親しくする必要はないのか、代理店さんの求めるものをくみ取って気持ちよく仕事をしてもらおうとするのは間違っているのか・・。糸原女史がそばにいないことを確認してから、マキノは小さくため息をついた。
またしばらく、デスクに向かって自分の仕事をしながら、しかしそういえば、最近、最後の砦である資本の体も怪しいかもしれないな、とぼんやり考えた。ここ1カ月ほど前から耳鳴りがする。ベッドに入って寝落ちるまでの短い時間だが耳の中でぶーんという低い音がした。最初に気づいた時は、冷蔵庫の音かお隣りの部屋の室外機の振動かと音源を探してみたのだが、結局わからなかった。外部からの音ではないと確信したものの、自分の神経系が悪いのか耳の疾患か。運動不足かストレスのせいか。
そうだな・・煮詰まってきたこのストレスをリフレッシュしようかな。
うん、久しぶりにバイクに乗って出かけるのはどうか。マキノはハイツの駐車場に停めたままの自分のバイクを思い浮かべた。前回動かしたのは一か月前。またエンジンを回さないといけない。これ以上寒くなるとますます乗らなくなるだろう。
バイクはいい。自然に溶け込んでいる実感がある。解放感があって、普段と違う景色を楽しめて、なによりバイクを自分の意志のとおりにマシンを操るあの一体感が好き。
行くとしたらどこへ?せっかくだから一泊。近場でもいい。温泉もいいな。一人がいい。
自由に動けない閉塞感が人間関係のせいだと声に出したくない。愚痴を共感しあえる会社の同僚はいるけれど,切り離したかった。
一時でも、どんなしがらみも気にしなくてもいい状態になりたい・・。
考え事のせいで、キーボードを打つマキノの手は、いつのまにか止まっていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「マキノ。一緒にごはん食べよう。」
一年先輩であるサクラから声をかけられた。彼女は、糸原女史から叱られる仲間であり、気をつかわなくてもよくて、尚且つ気の合う先輩だ。
サクラは、休憩室の机にお弁当を置いて椅子を引いた。彼女のお弁当箱は幼稚園児が使うようなサイズだ。彼女は、そんなに太って見えないのにしょっちゅう痩せたいと言っている。
それに対し、マキノの昼食は何のこだわりもないコンビニのおにぎりとサンドイッチとペットボトルのお茶。サクラは、「いただきます。」と礼儀正しく手を合わせて挨拶をしてから、たまご焼きを口に放り込んだ。
「ねぇマキノ。明日、お昼当番でしょ。一緒に茶々のカフェランチに行かない?」
オフィスでは、お昼時も来客の対応をしなければならず、その時間帯の留守番が決まっていて、お昼当番の者は早めに昼食をとる。十一時過ぎなら人気のOL向けのお店でもまだ空いていることが多くて、時間には余裕を持って帰ってこれる。
しかし問題は、今言った茶々のランチは、焼き立てパンがバイキングということだ。
「いいけど。その店を選ぶ思考回路は、ダイエットに不向きだよね。」
「まあね。自分でもそう思う。」
サクラは肩をすくめた。サクラは一応先輩なのに、対するマキノの態度は少し尊敬が足りない。
とりあえず、それぐらいの自覚は、ある。
翌日の十一時過ぎ。マキノとサクラはカフェ茶々へ足早に出かけた。ランチはそれぞれが気に入ったメイン料理を選ぶ。サクラはステーキサラダプレート。マキノはチキンソテープレート。さすが女子向けのランチ、どちらもカラフルで野菜とフルーツが多め。パンとスープは自由にとりに行くようになっている。
「よりによってボリュームたっぷりのメニュー選んだね。サラダと名がつけばいいってもんじゃないよね。」
「わかってるってば。わかってるけど、あーもう、どうでもいいや。」
サクラとマキノは、メインが運ばれるまでにスープとパンをせっせと運んだ。スープはミネストローネとポタージュと野菜コンソメの3種で、おかわり自由だから少しずつよそって3種類とも攻略する。ミニパンもそれぞれ3個ずつ選んだ。
「ああ嬉しいなぁ。外食って・・。」
「そだねぇ。・・サクラのそのサラダに入ってる赤っぽい葉っぱ食べていい?」
「いいよ。あ、ちょっとぴりっとするね。」
これは、たぶんレッドマスタードのベビーリーフ。マキノは、お料理が運ばれると、まず自分のレパートリーに加えられるかどうかを吟味する癖があった。サクラの食べているプレートがおしゃれに見えるのは、ちょっと変わった感じのサラダのおかげで、そのベビーリーフとアルファルファを使っているからだ。自分のチキンソテーも、トマトソースのガーリックとバジルが効いてて本格的に思えるけれど、焼き方を工夫してバジルの風味さえ効かせれば簡単にできるだろう。もっと手近で安価に手に入る野菜で、これぐらいに見せることもできるんじゃないかな。
お料理のレシピに思いを巡らしていると、ふと昨日、会社の帰りに立ち読みした旅行情報誌に載っていたペンションを思い出した。紹介されていたお料理に、心がとても惹かれたのだ。あの本を買っておけばよかった。マキノは、チーズ入りのミニパンを半分にちぎってほおばってから、サクラに提案した。
「サクラちゃん。一度私の手料理食べてみない?」
「えっ、マキノお料理できるの?」
「できるってほどでもないけど・・。」
「期待するよ?いつ?そうだ!マキノは一人暮らしでしょ?お泊りさせてよ。」
「いいよ。いいけど、もうしばらく先にしてよ?お掃除しなきゃだからね。」
「ふふっ、わかった。マキノとはゆっくりしゃべりたかったんだ。楽しみっ。」
サクラの反応が思った以上によかった事にマキノは気をよくした。今日のランチなら、自分にもできそうな気がする。高級食材でなくても、サクラだから、たぶん大丈夫。
「私はお酒でも買っていくわ。」
サクラが機嫌よくお肉をほおばった。
「どんな献立がいいかな・・。」
トマトソースをのせたチキンにフォークを突き刺しながら、マキノは食べたい物と作りたいもの、いくつかのメニューを思い浮かべていた。
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