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第二章 第五次化群侵攻防戦編

第51話 対峙に至るまで

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 鳩から放たれた電気は、秣の身体を包み込んだ。秣の身体に、ビリッと静電気のような電流が走る。すると、秣の胸元ぐらいの高さに伝言の手紙が浮かび上がると、脳内に隕集物オーブの効果がインプットされた。

–––
電気ショック鳩でんきショックバト
R3ランクスリー
・使用者は誰か1人に120文字以内の伝言ができる。
・120文字以内で、漢字読みは換算されない。例(あかつき)は一文字扱いとなる。
・120文字以内で、拗音ようおん(しゃ、しゅ、しょ…)、促音そくおん(っ)は一文字扱いとなる。
・伝達は伝達者と受信者が日出国ひいずるこく内にいることとお互いに面識があることが条件である。
・鳩は送信者(使用者)と受信者にしか見えず伝言も受信者にしか見えない。
・受信してから12時間はいつでも確認可能。
–––

 伝書鳩ならぬ電気ショック鳩によって具現された手紙には省略した文でこう書かれてあった。

–––
『秣と比徒は日出刻の仲間を殺さない程度に痛みつけること刻を怒らせるが目的座標XXX,XXX他の者は1人につき最低40体化掃かそうすることあとは各々自由今日の集合は22時アジトで僕もそこで合流する自由でもヘマはするな頼りにしてるよ鉄兵より』
【120/120】
–––

(……下の数字が文字数ってことか。きっちり120文字使ってるな。全く何が「頼りに」だ。文字数限らてるってのに…そんなこと分かってるよ、団長さん)

 秣は、他の4人に鉄兵からの伝言を元により詳しく伝えた。

「さすが奇上様…僕のスコピーを使えってわけですね……ウフフフ」
 比徒は、「仲間を痛みつける」という文言からスコピーを使うことを決心した。

(熊ちゃんと組むのは少々気が滅入るな…第一、熊ちゃんの破壊力だと痛みつける前に死んじゃいそう…ウフフフ)

「熊ちゃん、僕は日出刻たちの情報を知っている。前提として日出刻はなしとして———里要りかなちゃんのために巳門アカリを狙うわけにもいかない。で、飛鳥世成のイデアはすばしっこい。消去法で〝宇都宮雨〟をターゲットにするよ……ウフフフ」

(できれば、巳門アカリと日出刻たちを引き離せれば万々歳だ…その辺は熊ちゃんと相談かな)

 比徒は以前、鉄兵から日出刻たちの情報を教えてもらっていたのだ。

「俺は強い奴と戦えればなんでもいいぜ」
 秣は堀の深い顔をキリッとさせると、腕をぐるぐる回してストレッチをした。

(熊ちゃんは、頭が良いんだか、バカなんだかよく分からないな…熊ちゃんこの任務に向いてなさそう……奇上様の判断だから間違いはないだろう…)

「で、お前らはどうすんだ?」
 秣は、手を伸ばすストレッチをしながら椿たちに問いかけた。

「ウチらは、鉄兵の言う通り真面目に化掃かそうするわ~。向こうサイドは化掃で手一杯で、私らに気にする余裕ないやろうし。三色さんしき戌釦ぼたんもそうするやろ?」

 椿は2人に目をやると戌釦は静かに頷いた。

(化掃めんどさいな~。ああー本土帰って女の子と遊びたいなー。まぁオレも、強くならなきゃだしな~)

「もちろんすっよ。じゃあ椿さん一緒に参りましょう!」
 三色は気怠い気持ちを抑え込んで叫んだ。

「嫌やわ~ウチ三色あんま好きちゃうねん。暑くて五月蝿いのはごめんやわ。1人で頑張り」
 椿は、わざとらしく音を立てて扇子を仰いだ。

「そんなストレートに言わなくてもいいじゃないすか! もしかするとオレが役に立つかもすっよ。あとあと、オレ実は歌も上手いんでBGM代わりに…」
 三色はいつもの饒舌を披露した。
 
 起尊兵団バネーズの皆んなは、三色のそばから離れた。戊釦ぼたんに至っては両手で耳を塞いでいる。

「はいはい分かりましたよ。オレはオレらしく1人で頑張ってきますよ」

 三色はそう言い残すとポケットに手を突っ込んだまま高台からジャンプし、森へと消えていった。すると、シュタインの表面から無数のローザが出現した。

「とうとう始まったな。グズグズしてらへん。ほな比徒、秣、任務頼んだで~」
 
 そう言い残す椿の裾に違和感を感じた。目線を下すと戊釦が引っ張っていた。

「どしたん、戊釦?」
 
 戊釦は両手を横に広げた。

「ああなるほど。私と空飛びたいんやな」

「なんで分かるんだよ? ジェスチャー分かりにくすぎんだろ!」

 ボヤを吐く秣に戊釦は再び豪速球テディベアをくらわせた。

「イッテェ…全く中に何が入ってんだ……」
 秣は、テディベアを受け止めると優しく戊釦に返してあげた。
 
(何キロあるんだ? 30キロぐらいはありそうだな…あの小さい身体でよくやるぜぇ)
 
 秣は、戊釦に苛立ちつつも、重いテディベアをいとも簡単に扱う戊釦に関心していた。
 戊釦は、テディベアと一緒に椿に抱っこされた。

「〝天体召顕てんていしょうけん主翼しゅよく〟」

 椿がそう唱えると背中から黒い翼がバサっと一瞬にして生えた。翼の長さは2メートルほどあった。「ほな。」と一言言い残すと戊釦を連れて空へ飛び立った。

「比徒! 俺らも行くぞ!」

 秣は、大きな腕を振り比徒と共に刻の処へ向かうのであった———。
––––––
 
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