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第一章 化掃士起隕編
第43話 アリとナシ
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「化についてもう少し詳しく説明しましょう」
「先生、あいつらって結局何なんですか?」
世成が、軽い口調で尋ねた。
「10年以上研究しているけど、未だに正体不明なのよ。構成物質は隕子で間違いないけど、無理に調べても解明できない〝この世界のルール〟があるんだと思うわ」
「それで、ナマタンに手を出したんですね……」
世成は、僕たち4人の気持ちを代弁した。
「あら、ナマタンから聞いたのね。私はそんなヒドイことはしてないわよ」
胡桃は少し誤魔化すように答えた。
(内心では告げ口されたことで、ナマタンにキレてそうだな……)
世成は胡桃を見つめながらそんなことを考えていた。
「さて、話を戻すわね。化は全国どこでも自然発生するわ。姿や形も統一されていなくて、本当に様々なの」
「本土よりも人工化掃島での発生数が多いのは、何か理由があるんですか?」
アカリが質問した。
「いい質問ね。主な理由は2つあるわ。一つは、この島がシュタインに近いこと。もう一つは、隕子が多い場所に化が集まる習性があるからよ」
「私たち化掃士がこの島にたくさん住んでいるからなんですね」
雨は納得した様子でつぶやいた。
「その通りよ。それと、化は夜にはあまり活動しないの。多くの個体は夜になると消えることが確認されているわ」
「不思議なやつらですね……」
世成は呆れたように言った。
「次に、化と化掃士のパワーバランスについて説明するわ。カテゴリー歩や走に共通する特徴って何か知ってる?」
「確か、〝理が発現しない〟って聞いたことがあります」
「正解! つまり———〝脳ナシ〟であることよ」
「その言葉、訓練校でよく言われてたな~『脳ナシの飛鳥』ってあだ名つけられてましたから!」
「……なるほど」
胡桃はどう返すべきか迷っていた。
(脳ナシとは、知能の低い化を指す言葉で、本来は人間に使うものじゃない。むしろ差別的な用語だ)
「ところで、脳アリと脳ナシをどうやって区別するか知ってる?」
「言葉を話すかどうかや、見た目が人間に似ているかがポイントだと思います」
僕は訓練校時代の知識を思い出しながら答えた。
「その通りよ。脳アリと脳ナシとでは、明確な知能の違いがあるの。脳アリはコミュニケーションを取ってくるはずよ」
「動画でしか見たことないな~」
世成は、訓練校時代に見た映像を思い出した。
「脳アリは、全体の1割未満しかいないからね。もし、脳アリの化と戦うことになったら、あなたたちのレベルでは瞬殺されるわ」
僕たちは背筋に冷たい汗を感じた。
「特にカテゴリー音以上では、ほぼ全てが脳アリよ。走の最上位、R8に脳アリが確認されているけど、R7以下では見つかっていないわ」
「脳アリは例外なく理が発現しているんですよね?」
僕は曖昧な記憶を確認するように質問した。
「その通りよ。つまり、隕子を使いこなす上で知性、つまり〝脳〟が重要なの。だから、人間は他の生物や化よりも隕子をうまく使えるのよ」
奇上鉄兵も同じことを言っていたな、と思い出した。
「逆に言えば、脳が弱点とも言えるわ」
胡桃はそう付け加えた。
「なるほど。だから俺たちでも、一つ上のカテゴリー走のやつらと戦えるんですね」
「その通り、言ってもR6までかな、それ以上は、下手したら死ぬ場合があるからね、逃げることをオススメするわ」
「相手の隕子量を知る方法ってあるんでしょうか?」
雨は疑問に思い問いかけた。
「あなた達のRだと、隕集物を使わないと難しいわね。こちらが登録している危険化の場合、記憶機が警告してくれるはずよ」
僕ら4人は記憶機を見た。
「よしよし、オメェはえらいな~」
世成は、記憶機をペットのように愛慕した。
それから月入先生は、20分ほど話して僕たちは、解散となった。
「最初は、ビビってたけど、言い換えれば、化群は俺たちが強くなるチャンスってことだよな!」
「うん、自分たちと相手の実力を見極めて逃げるか交戦するかを判断するべきだ。死んだら元もこうもないし、相手に自分の隕子を吸隕されたら相手が強くなるだけだからな」
「分かってるって!」
不安と緊張、微かな期待、色んな感情を背負い僕たちは、7月14日の化掃士任命日を迎えるのであった。
「先生、あいつらって結局何なんですか?」
世成が、軽い口調で尋ねた。
「10年以上研究しているけど、未だに正体不明なのよ。構成物質は隕子で間違いないけど、無理に調べても解明できない〝この世界のルール〟があるんだと思うわ」
「それで、ナマタンに手を出したんですね……」
世成は、僕たち4人の気持ちを代弁した。
「あら、ナマタンから聞いたのね。私はそんなヒドイことはしてないわよ」
胡桃は少し誤魔化すように答えた。
(内心では告げ口されたことで、ナマタンにキレてそうだな……)
世成は胡桃を見つめながらそんなことを考えていた。
「さて、話を戻すわね。化は全国どこでも自然発生するわ。姿や形も統一されていなくて、本当に様々なの」
「本土よりも人工化掃島での発生数が多いのは、何か理由があるんですか?」
アカリが質問した。
「いい質問ね。主な理由は2つあるわ。一つは、この島がシュタインに近いこと。もう一つは、隕子が多い場所に化が集まる習性があるからよ」
「私たち化掃士がこの島にたくさん住んでいるからなんですね」
雨は納得した様子でつぶやいた。
「その通りよ。それと、化は夜にはあまり活動しないの。多くの個体は夜になると消えることが確認されているわ」
「不思議なやつらですね……」
世成は呆れたように言った。
「次に、化と化掃士のパワーバランスについて説明するわ。カテゴリー歩や走に共通する特徴って何か知ってる?」
「確か、〝理が発現しない〟って聞いたことがあります」
「正解! つまり———〝脳ナシ〟であることよ」
「その言葉、訓練校でよく言われてたな~『脳ナシの飛鳥』ってあだ名つけられてましたから!」
「……なるほど」
胡桃はどう返すべきか迷っていた。
(脳ナシとは、知能の低い化を指す言葉で、本来は人間に使うものじゃない。むしろ差別的な用語だ)
「ところで、脳アリと脳ナシをどうやって区別するか知ってる?」
「言葉を話すかどうかや、見た目が人間に似ているかがポイントだと思います」
僕は訓練校時代の知識を思い出しながら答えた。
「その通りよ。脳アリと脳ナシとでは、明確な知能の違いがあるの。脳アリはコミュニケーションを取ってくるはずよ」
「動画でしか見たことないな~」
世成は、訓練校時代に見た映像を思い出した。
「脳アリは、全体の1割未満しかいないからね。もし、脳アリの化と戦うことになったら、あなたたちのレベルでは瞬殺されるわ」
僕たちは背筋に冷たい汗を感じた。
「特にカテゴリー音以上では、ほぼ全てが脳アリよ。走の最上位、R8に脳アリが確認されているけど、R7以下では見つかっていないわ」
「脳アリは例外なく理が発現しているんですよね?」
僕は曖昧な記憶を確認するように質問した。
「その通りよ。つまり、隕子を使いこなす上で知性、つまり〝脳〟が重要なの。だから、人間は他の生物や化よりも隕子をうまく使えるのよ」
奇上鉄兵も同じことを言っていたな、と思い出した。
「逆に言えば、脳が弱点とも言えるわ」
胡桃はそう付け加えた。
「なるほど。だから俺たちでも、一つ上のカテゴリー走のやつらと戦えるんですね」
「その通り、言ってもR6までかな、それ以上は、下手したら死ぬ場合があるからね、逃げることをオススメするわ」
「相手の隕子量を知る方法ってあるんでしょうか?」
雨は疑問に思い問いかけた。
「あなた達のRだと、隕集物を使わないと難しいわね。こちらが登録している危険化の場合、記憶機が警告してくれるはずよ」
僕ら4人は記憶機を見た。
「よしよし、オメェはえらいな~」
世成は、記憶機をペットのように愛慕した。
それから月入先生は、20分ほど話して僕たちは、解散となった。
「最初は、ビビってたけど、言い換えれば、化群は俺たちが強くなるチャンスってことだよな!」
「うん、自分たちと相手の実力を見極めて逃げるか交戦するかを判断するべきだ。死んだら元もこうもないし、相手に自分の隕子を吸隕されたら相手が強くなるだけだからな」
「分かってるって!」
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