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@藤堂side
15.合コンへ@藤堂side
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定時を迎え、西島恵が席を立った。「お疲れさまでした」と、荷物をもってエレベーターとは逆の方向へ消える。
総務部か。さくらを合コンに連れていくのか。
なんとか目の前のパソコンでの作業を続ける。
今日は全然進まない。気づくとさくらのことを考えている。
ああだめだ。入社して10年。
最初に先輩と一緒に幸和製菓の案件にかかわって、打ちのめされて以来、仕事だけはきっちりしっかりやってきた。
だからこそ同期のうちで一番早く、先輩たちを追い越して課長職に着いた。
さくらのことを早く解決しなければ。
解決…どうすれば解決になる?
さくらが俺を避ける理由を聞ければ解決?もう一度抱ければ?俺を「憧れ」って言ったよなって俺への気持ちを確認できれば?
とりあえず、今日の合コンには黙って行かせるしかないのか?
通路の方が少し騒がしい。定時を過ぎ、社を出ていく社員たちの中に、西島と…さくら。
いや待て、あれはだめだろ。
朝、休憩室で会ったときはストレートだった黒髪がふわふわに巻かれている。
さくらもその髪を気にして触っている。
これまでのお堅いイメージが払しょくされ、いわゆる「愛され女子」化している。
いつものさくらを合コンに置いておいても、なかなか手を出しにくいかもしれないが、あれはだめだ。
西島も、いつも同様に髪をふわふわにして、かわいい服を着ているが、あれは男慣れしていかにも感がある。
しかし、さくらは清純で男慣れしていない、不器用な感じはそのままで、柔らかい雰囲気になっていて、この子が合コンにいたら、確実に本気で近づこうとする男がいる。
「恵ちゃんすごいね。美容師さんみたい。」
「毎朝やってますから~。」
お前の仕業か、西島。
ふたりがエレベーターホールの方へ向かっていく。
俺はなすすべなく見送る。
仕事は進まないが帰る気に慣れず、進まない仕事をしているふりをする。
幸和製菓の仕事、部を挙げての大きな顧客のプロジェクト、部下たちの担当案件のフォロー。やることはたくさんある。たくさんの人が俺を頼りにしてくれている。
でも、俺の頭の中はさくらひとりでいっぱいだった。
一週間前の夜、さくらと二人でいたのに、一緒に朝まで…いや、朝起きたときには消えていたが…、なぜ今日はさくらが合コンに行くことになっているんだ…。
そして俺はそれをこんな風に見送らなければいけないんだ・・・。
俺はがっくりと頭を下げた。
通路から「お疲れ様で~す」という聞き覚えのある声。
小林賢祐だ。
さくらのスケジュールを確認する癖ができ、同じ総務部の奴の名前の漢字が「小林賢祐」なのを知った。
「小林君」
俺は気づくと席を立って、声を掛けていた。
「飲みに、行かない?」
「え?藤堂課長が、俺とですか…?」
俺は少しでもさくらの通じるものに、すがりたかった。
総務部か。さくらを合コンに連れていくのか。
なんとか目の前のパソコンでの作業を続ける。
今日は全然進まない。気づくとさくらのことを考えている。
ああだめだ。入社して10年。
最初に先輩と一緒に幸和製菓の案件にかかわって、打ちのめされて以来、仕事だけはきっちりしっかりやってきた。
だからこそ同期のうちで一番早く、先輩たちを追い越して課長職に着いた。
さくらのことを早く解決しなければ。
解決…どうすれば解決になる?
さくらが俺を避ける理由を聞ければ解決?もう一度抱ければ?俺を「憧れ」って言ったよなって俺への気持ちを確認できれば?
とりあえず、今日の合コンには黙って行かせるしかないのか?
通路の方が少し騒がしい。定時を過ぎ、社を出ていく社員たちの中に、西島と…さくら。
いや待て、あれはだめだろ。
朝、休憩室で会ったときはストレートだった黒髪がふわふわに巻かれている。
さくらもその髪を気にして触っている。
これまでのお堅いイメージが払しょくされ、いわゆる「愛され女子」化している。
いつものさくらを合コンに置いておいても、なかなか手を出しにくいかもしれないが、あれはだめだ。
西島も、いつも同様に髪をふわふわにして、かわいい服を着ているが、あれは男慣れしていかにも感がある。
しかし、さくらは清純で男慣れしていない、不器用な感じはそのままで、柔らかい雰囲気になっていて、この子が合コンにいたら、確実に本気で近づこうとする男がいる。
「恵ちゃんすごいね。美容師さんみたい。」
「毎朝やってますから~。」
お前の仕業か、西島。
ふたりがエレベーターホールの方へ向かっていく。
俺はなすすべなく見送る。
仕事は進まないが帰る気に慣れず、進まない仕事をしているふりをする。
幸和製菓の仕事、部を挙げての大きな顧客のプロジェクト、部下たちの担当案件のフォロー。やることはたくさんある。たくさんの人が俺を頼りにしてくれている。
でも、俺の頭の中はさくらひとりでいっぱいだった。
一週間前の夜、さくらと二人でいたのに、一緒に朝まで…いや、朝起きたときには消えていたが…、なぜ今日はさくらが合コンに行くことになっているんだ…。
そして俺はそれをこんな風に見送らなければいけないんだ・・・。
俺はがっくりと頭を下げた。
通路から「お疲れ様で~す」という聞き覚えのある声。
小林賢祐だ。
さくらのスケジュールを確認する癖ができ、同じ総務部の奴の名前の漢字が「小林賢祐」なのを知った。
「小林君」
俺は気づくと席を立って、声を掛けていた。
「飲みに、行かない?」
「え?藤堂課長が、俺とですか…?」
俺は少しでもさくらの通じるものに、すがりたかった。
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