131 / 199
2039ー2043 相馬智律
65-(3)
しおりを挟む
魂とは何か、魂をどう取り出すのか、肉体から分離するとはどのような状態なのか。
カイは大真面目に論じていた。
中世の悪魔崇拝かオカルト雑誌の特集記事か。
BS社内ではもっと科学的に人格データの移殖について論じていたであろうに。
だが、これこそが真実だ。
これは私宛のメッセージだ。
人間の肉体とは、物質世界に存在するための魂の器だ。あの世の外からやって来た魂は束の間の人生を楽しみ、肉体の崩壊によりアトラクションを終了する。
出入場は厳格に管理されている。
イオンはアトラクションを継続させるための補助器具として有効であるが、長期の使用は有害であり推奨しない。
カイ、ここには神の啓示を理解できる者はいないぞ。私だって、個人的な体験の範囲でお前の言葉をわずかに理解しているに過ぎないのだ。
「この後に詳細な記述が続きますが、本日私が研究棟へ来たのは、フォルダに入っていたリツへのメッセージ映像を確認したかったからです」
高瀬は魂に全く興味がないようだ。
「高瀬さんたちは既にメッセージを見たのですよね。私のためだけに再上映ですか」
「そうですよ」
高瀬の不敵な笑みが気に入らない。リツはスクリーンの前に座らされ、目の前に紙とペンが用意された。
「リツも昨日見ているのですよね?」
高瀬の代わりにリツがうなずく。
「パズルのピースが揃わなかったんですよ。どうやら相馬さんが鍵らしい」
高瀬は私の反応を伺っていた。
「リツは昨日も同じことをやったのだね?」
「はい。でも、何も起きませんでした……」
大丈夫だ、リツ。心配しなくていい。カイがお前に酷いことをするはずがない。相馬の魂は、カイが連れてきたはずなのだから。
「高瀬さん、昨日は何をしたのですか? 私はもちろん全て協力するが、説明は欲しい」
「笠原が作ったビデオメッセージをリツに見せただけですよ。メモの用意は、笠原の指示です。これはきっと催眠暗示の類でしょう。笠原のメッセージを受け取ったリツが、何か行動を起こすように仕向けていたと思われます」
「BS社も知らないのか?」
立会人のBS社社員が何か言おうとするのを、高瀬は軽く手を挙げて笑顔で制した。
「NH社もBS社も共に被害者なんですよ。情報漏洩甚だしい。両者が敵対しているということではありませんが、それぞれ研究開発に込み入った事情がありましてね。お互い迷惑しているのです。これは、笠原という男が単独でやったことです。あなたが協力者でないなら、ですがね」
私と笠原が通じていると思ったのか。売店のリツを介して接触していたとでも言いたいのか。
「シキ。そう笠原が呼ぶのはあなたのことですよね、相馬さん」
リツがまた不安そうに私を見た。
「どう呼ばれようと勝手だが、私は笠原とは初対面でしたよ。事情はわかりましたから、どうぞ始めて下さい」
私はリツの隣に座ると、そっとリツの手を握った。
カイは大真面目に論じていた。
中世の悪魔崇拝かオカルト雑誌の特集記事か。
BS社内ではもっと科学的に人格データの移殖について論じていたであろうに。
だが、これこそが真実だ。
これは私宛のメッセージだ。
人間の肉体とは、物質世界に存在するための魂の器だ。あの世の外からやって来た魂は束の間の人生を楽しみ、肉体の崩壊によりアトラクションを終了する。
出入場は厳格に管理されている。
イオンはアトラクションを継続させるための補助器具として有効であるが、長期の使用は有害であり推奨しない。
カイ、ここには神の啓示を理解できる者はいないぞ。私だって、個人的な体験の範囲でお前の言葉をわずかに理解しているに過ぎないのだ。
「この後に詳細な記述が続きますが、本日私が研究棟へ来たのは、フォルダに入っていたリツへのメッセージ映像を確認したかったからです」
高瀬は魂に全く興味がないようだ。
「高瀬さんたちは既にメッセージを見たのですよね。私のためだけに再上映ですか」
「そうですよ」
高瀬の不敵な笑みが気に入らない。リツはスクリーンの前に座らされ、目の前に紙とペンが用意された。
「リツも昨日見ているのですよね?」
高瀬の代わりにリツがうなずく。
「パズルのピースが揃わなかったんですよ。どうやら相馬さんが鍵らしい」
高瀬は私の反応を伺っていた。
「リツは昨日も同じことをやったのだね?」
「はい。でも、何も起きませんでした……」
大丈夫だ、リツ。心配しなくていい。カイがお前に酷いことをするはずがない。相馬の魂は、カイが連れてきたはずなのだから。
「高瀬さん、昨日は何をしたのですか? 私はもちろん全て協力するが、説明は欲しい」
「笠原が作ったビデオメッセージをリツに見せただけですよ。メモの用意は、笠原の指示です。これはきっと催眠暗示の類でしょう。笠原のメッセージを受け取ったリツが、何か行動を起こすように仕向けていたと思われます」
「BS社も知らないのか?」
立会人のBS社社員が何か言おうとするのを、高瀬は軽く手を挙げて笑顔で制した。
「NH社もBS社も共に被害者なんですよ。情報漏洩甚だしい。両者が敵対しているということではありませんが、それぞれ研究開発に込み入った事情がありましてね。お互い迷惑しているのです。これは、笠原という男が単独でやったことです。あなたが協力者でないなら、ですがね」
私と笠原が通じていると思ったのか。売店のリツを介して接触していたとでも言いたいのか。
「シキ。そう笠原が呼ぶのはあなたのことですよね、相馬さん」
リツがまた不安そうに私を見た。
「どう呼ばれようと勝手だが、私は笠原とは初対面でしたよ。事情はわかりましたから、どうぞ始めて下さい」
私はリツの隣に座ると、そっとリツの手を握った。
2
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
感染
saijya
ホラー
福岡県北九州市の観光スポットである皿倉山に航空機が墜落した事件から全てが始まった。
生者を狙い動き回る死者、隔離され狭まった脱出ルート、絡みあう人間関係
そして、事件の裏にある悲しき真実とは……
ゾンビものです。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
手毬哥
猫町氷柱
ホラー
新築アパートの404号室に住み始めた僕。なぜかその日から深夜におかしな訪問者がいることに気づく。そして徐々に巻き込まれる怪奇現象……彼は無事抜け出すことができるだろうか。怪異が起きる原因とは一体……
ゴーストバスター幽野怜
蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。
山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。
そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。
肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性――
悲しい呪いをかけられている同級生――
一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊――
そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王!
ゴーストバスターVS悪霊達
笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける!
現代ホラーバトル、いざ開幕!!
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる