宇宙人は恋をする!

山碕田鶴

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6章 幼年期のオワリ

82.オワリ(28/43)

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「先に言っておきましが、記憶消す決まりないでしよ。宇宙人戻る時、今までお世話になりますた言ってサヨナラで構わないのでし」
「あっ、そうなんだ。よかったー。銀太郎が帰る時にいきなり記憶を消されちゃったら、思い出もなくなってもっとさびしくなるもの」
「記憶消したら、そもそもさびしい思わないでしよ」
「えっ……そう……だよね」

 銀太郎は怖いことを言っている。それって、せっかくの楽しい思い出もうれしかったことも、全部取り上げられてしまうのと同じだよ?

「銀太郎は……消しちゃったんだね」
「ハイ。宇宙人目覚めたら、自分が行くべき場所に気づきまし。地球に来る前のコトまだほとんど思い出せないけど、自分は行かなければならないのわかりまし。ワタシ、村の人たちとお別れ悲しかったでし。村の人たち、みんなワタシを大切にしてくれた。大事に大事に育ててくれますた。ワタシは……サヨナラできなかったのでし」

 地球人として育って、大好きな家族たちと幸せに過ごしていたのに、宇宙人を自覚して別の世界に移らないといけなくなったのだよね?
 自分がこれまでと全然ちがう存在になるって、どんな感じなのだろう。住む世界も見える世界も変わってしまうって、どんなだろう。
 銀太郎は村の人が大好きで、その人たちに心を残したままでは自分の世界に帰れなかった。でも、帰る使命は自覚していたんだ。

「みんなの記憶消して、村にいる理由なくなって、ようやく村を出ますた。その時、気づいたのでしよ。自分の記憶は消えない。そして、みんなが自分を知らないのはサヨナラ言うよりさびしい……」

 フェザ……そう呼んでくれる人はもういない。それでも、地球での名前のまま宇宙人に戻ったんだね。

「地球防衛隊の訓練基地に来て地球人に『フェザ』の名前呼んでもらって友だちになって、ワタシ再び地球にいる喜びできた。ワタシを大切にしてくれた村の人たちのためにも頑張る決意できた。だから、ケイちゃんは心の支え、大恩人」

 パパが見せてくれた写真は、そのころのフェザだ。
 あんなに笑顔で写っていたのに。
 もちろん本物の笑顔なのだろうけれど、それだけじゃなかったんだ。
 笑っているのに悲しくて……難しいな。
 本当の気持ちを知るのは、難しい。

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