宇宙人は恋をする!

山碕田鶴

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6章 幼年期のオワリ

71.オワリ(17/43)

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「ねえ葵ちゃん。銀太郎は自分が直接関わったら適性検査に支障が出るかもしれないって、宇宙人の子のことを一番に考えているんだよ。地球人愛護協会は銀太郎に荒井さんのフォローを依頼したみたいだけれど、検査中の子を助けるところまでは想定していないと思うよ。ひどい言い方かもしれないけれど、家出したのはその子の判断なのだから、それが事故や事件になっても……注意力や運がなかったと思うしかない。元々が厳しい検査だからね。パパもできれば関わりたくないよ」
「パパ、も?」
「パパは地球防衛隊を支える仕事をしているから、やっぱり内部関係者だよね。パイロットになる前の子との接触はけた方がいいと思うんだ。地球人のパパと会ったからといって適性検査に影響は出ないだろうけれど、後々に万が一でも不正を疑われるようなことはしたくないんだ」
「パイロットの合否は宇宙人の判断。地球人とちがって不正ありえないでしよ」

 銀太郎はふきげんそうなままだ。

「ははは。それはともかくとして、荒井さんの孫はちゃんと帰って来ると思うんだ。信じて待つのも大事じゃないかなあ」
「放っておくでしよ」

 二人とも素っ気ない。
 それ、荒井さんにそのまま伝えるの? それなら捜索願を出すよう言ってあげた方がいいんじゃないの?

「……パパはどこに行ったかわかっているんだね」
「まあ推測だけれど、たぶん『万貫まんがんの森』だと思うよ。UFOの目撃情報が多い観光スポットなんだ」

 マンガンノモリ? 

「UFOが目撃されているところなら、それこそ日本中にたくさんあるんじゃないの?」
「うん。でも、先月号の『月刊ウー』にUFO特集記事があって、そこで紹介されていたから。きっと見ているはずだよ」
「それだけ⁉︎」
「その子が一人で行かれそうな距離を考えても、他にはないよ」
「それってどこにあるの?」
「ここからだと新幹線で一時間ちょっと、駅からバスで三十分、さらに歩いて十分くらいかな。わりと低い山で元々ふつうの観光地だし、バスは一時間に一本はあるよ。車だと四時間くらいだね。朝早く家を出たなら、電車やバスに乗って夜には帰って来られるだろうけれど……」
「UFOが見られるまで帰らなかったら?」
「野宿覚悟でしか」
「勢いで行ったなら、やりそうだね。まあ、熊は出ないと思うけれど心配ではあるね」
「本当にそこに行ったの……?」
「ケイちゃんのかんはよく当たりまし」
「銀太郎、やっぱり知っているんじゃないの?」
「……」
「銀太郎!」

 地球人に教える義務はない。知っても意味はない。
 そう言い返されちゃうかな。
 なんでこんな時まで目を合わせられないのだろう? 私の気持ち、これじゃあ全然伝わらないよ。
 銀太郎が遠い。なんで?
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