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5章 星からのキカン
47.キカン(13/20)
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パパはいつもと変わらないのんびりとした笑顔で、パスケースを「ポリスまんじゅう」の箱の横に置いた。
「パパの……写真?」
「うん。パパがいつも持ち歩いている、まあ、お守りみたいなものだよ。見せてあげるのはもちろん初めてなんだけれど」
パスケースには写真が入っていた。今と全く変わらないパパが、数人の外国人と並んでいる。
パパは見た目で年を取らないから、いつ撮ったのかはわからない。
記念写真かな。かた苦しい感じではなくて、ぎゅっとくっついて本当に楽しそうに笑いあっている。
黒い肌の人がほとんどだ。
「あれ? これって……銀太郎?」
パパのすぐとなりにいる、すらりと背の高い黒人の青年に目がとまった。優しそうな目とおだやかな笑顔には見覚えがある。
「これが……フェザ?」
顔を上げて銀太郎に視線を移すと、同じ笑顔で私を見ていた。
「ああ、よくわかったね。葵ちゃんはフェザのことを聞いたの? そうだよ。彼が、パパと初めて出会ったころの銀太郎なんだ」
パパと銀太郎は、なつかしそうにお互いを見合った。
本当にずっとずっと昔からの知り合いだったんだ。しかも、こんな写真まで大切に持っていたなんて。
「パパは、銀太郎が地球人だったころから知っていたの?」
「それはないでしよ。ワレワレ、宇宙人に戻るまでセーフカンケーシャ接触させない」
そうだ。確かにパパは政府関係者だ。
「ははは。まあ、最初から順番に話そうね。その前に、おみやげ」
パパは自分で包み紙を開け始めた。
「ねえパパ。結局パパはなんで捕まっちゃったの?」
「え、と。たぶん銀太郎の誘拐と、外国のスパイ容疑……かな? なんでっていうのは教えてもらえなかったけれど、登録している宇宙人がいきなり消えちゃったから、大さわぎだったよ」
「……スミマセンでし」
銀太郎がまた謝った。
「銀太郎のせいじゃないよ。誘拐もスパイも宇宙人がらみだから情報の扱いが繊細過ぎて、警察と防衛省で色々調整に時間がかかっただけだから」
パパは笑っている。常に平常心っていうの? それって、実はすごいスキルなのかな。
「えーと、まずはパパのことを話そうね。お母さんにもほとんど話せなかったことなんだ。ずっと、ごめんね」
お母さんは笑顔でうなずいた。
パパがお仕事の内容をヒミツにしなければならない人だとわかっていて結婚したのだろうけれど……。
パパが連行された後、ご近所から情報を仕入れて冷静に状況分析していたし、実は全部知っていたりして。
なんとなくだけれど。
考えてみると、たまにうちにいるパパと今までこんなに話をしたことはなかったかも。正直、ふわふわと浮世離れしたUFOオタクだとしか思っていなかったし。
私、パパのことをなんにも知らなかったな。
「えー、自己紹介します。パパは防衛省というところに勤めています。担当は総務部の福利厚生、つまり職員の生活全般をサポートするお仕事です。葵ちゃんが言っていたとおり忘年会もやりますが、お休みの調整や健康管理、労災保険、旅行の手配までなんでもやっています。ただし。パパが担当する職員は、地球防衛隊の宇宙人たちです」
パパは満面の笑みだ。お仕事、楽しいんだろうな。
となりの銀太郎がうれしそうにパチパチと拍手する。ほんと、仲良しだ。
小学生の発表みたいな雰囲気で、パパは国家機密をカミングアウトした。パパの話の中で初耳だったのは、宇宙人担当だという一言だけだ。
けれどもそれは、世界の常識をひっくり返すくらいの重大な真実だった。
「パパの……写真?」
「うん。パパがいつも持ち歩いている、まあ、お守りみたいなものだよ。見せてあげるのはもちろん初めてなんだけれど」
パスケースには写真が入っていた。今と全く変わらないパパが、数人の外国人と並んでいる。
パパは見た目で年を取らないから、いつ撮ったのかはわからない。
記念写真かな。かた苦しい感じではなくて、ぎゅっとくっついて本当に楽しそうに笑いあっている。
黒い肌の人がほとんどだ。
「あれ? これって……銀太郎?」
パパのすぐとなりにいる、すらりと背の高い黒人の青年に目がとまった。優しそうな目とおだやかな笑顔には見覚えがある。
「これが……フェザ?」
顔を上げて銀太郎に視線を移すと、同じ笑顔で私を見ていた。
「ああ、よくわかったね。葵ちゃんはフェザのことを聞いたの? そうだよ。彼が、パパと初めて出会ったころの銀太郎なんだ」
パパと銀太郎は、なつかしそうにお互いを見合った。
本当にずっとずっと昔からの知り合いだったんだ。しかも、こんな写真まで大切に持っていたなんて。
「パパは、銀太郎が地球人だったころから知っていたの?」
「それはないでしよ。ワレワレ、宇宙人に戻るまでセーフカンケーシャ接触させない」
そうだ。確かにパパは政府関係者だ。
「ははは。まあ、最初から順番に話そうね。その前に、おみやげ」
パパは自分で包み紙を開け始めた。
「ねえパパ。結局パパはなんで捕まっちゃったの?」
「え、と。たぶん銀太郎の誘拐と、外国のスパイ容疑……かな? なんでっていうのは教えてもらえなかったけれど、登録している宇宙人がいきなり消えちゃったから、大さわぎだったよ」
「……スミマセンでし」
銀太郎がまた謝った。
「銀太郎のせいじゃないよ。誘拐もスパイも宇宙人がらみだから情報の扱いが繊細過ぎて、警察と防衛省で色々調整に時間がかかっただけだから」
パパは笑っている。常に平常心っていうの? それって、実はすごいスキルなのかな。
「えーと、まずはパパのことを話そうね。お母さんにもほとんど話せなかったことなんだ。ずっと、ごめんね」
お母さんは笑顔でうなずいた。
パパがお仕事の内容をヒミツにしなければならない人だとわかっていて結婚したのだろうけれど……。
パパが連行された後、ご近所から情報を仕入れて冷静に状況分析していたし、実は全部知っていたりして。
なんとなくだけれど。
考えてみると、たまにうちにいるパパと今までこんなに話をしたことはなかったかも。正直、ふわふわと浮世離れしたUFOオタクだとしか思っていなかったし。
私、パパのことをなんにも知らなかったな。
「えー、自己紹介します。パパは防衛省というところに勤めています。担当は総務部の福利厚生、つまり職員の生活全般をサポートするお仕事です。葵ちゃんが言っていたとおり忘年会もやりますが、お休みの調整や健康管理、労災保険、旅行の手配までなんでもやっています。ただし。パパが担当する職員は、地球防衛隊の宇宙人たちです」
パパは満面の笑みだ。お仕事、楽しいんだろうな。
となりの銀太郎がうれしそうにパチパチと拍手する。ほんと、仲良しだ。
小学生の発表みたいな雰囲気で、パパは国家機密をカミングアウトした。パパの話の中で初耳だったのは、宇宙人担当だという一言だけだ。
けれどもそれは、世界の常識をひっくり返すくらいの重大な真実だった。
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