34 / 106
4章 コンタクト
34.コンタクト(10/10)
しおりを挟む
朝が来た。日本の朝だ。
いつもの私の部屋を見回してホッとする。
色々あり過ぎて、頭の中が全部まざった気分。
何があっても朝は来るって、初めて知った気がする。
「お母さん、おはよう」
台所のお母さんは、いつもと同じ。パパがいないのも日常。
「あら葵、日曜なのに早いのね。昨日は遅くまで起きていたのに」
そうだった。
昨日はご飯のあと、ここで銀太郎の取り調べをやっていて……。
あれ? そのあとは?
「私、話の途中で寝ちゃったの? でも、起きたらベッドにいたけど」
「葵ったら話しながら段々とウトウトしてきて、そのまま寝ちゃったから銀太郎君が部屋まで運んでくれたのよ」
「銀太郎が?」
「それはもう、ていねいにていねいに、本当に大切なお姫様を守るナイトのようにお姫様だっこで。きゃーっヤダ照れちゃう」
へえー……。
「で? その銀太郎は?」
「まだパパの部屋で寝ているんじゃないかしら? 昨日はずいぶんと遅くまで起きていたみたいだし。昼間は藤井君のところへお出かけして、夜はパパのことがあったから、さすがの赤レンジャーも疲れたでしょう?」
「お母さんは? お母さんは大丈夫なの?」
「え? お母さんはいつもと同じことしかしていないから、別に……。あっ、大変。昨日、蓮君のドラマの復習会忘れちゃった」
お母さんは本当にいつもどおり笑っていた。お母さんなら、宇宙人と対等になれるんじゃないかな。
パパの部屋のふすまが少しだけ開いている。
そっとのぞくと、荷物の消えた部屋のまんなかに寝袋に入った銀太郎が転がっていた。
寝袋の蓮君……。寝顔もステキ過ぎる。わあ、ちょっとカワイイかも。
見てはいけないものをのぞいてしまった気がして目をそらそうとした瞬間、
「フェザ……」
ふいに口をついて出た。
銀太郎に教えてもらった昔の名前だ。声に出したら昨夜の夢をはっきりと思い出した。
やっぱり夢じゃなくて現実だったのかな?
銀太郎の育った場所。銀太郎が見た地球人。銀太郎の本名。
「フェザ・アシュー……」
なんだっけ? 長過ぎて全然覚えていないや。
「フェザ・アシュール・ラウラ・ロイ・ヤスレイでし」
「ああ、そうだった。……ん?」
答えたのは確かに銀太郎だ。でも、寝袋の銀太郎は動かない。というか、しっかり寝ているけど。
寝言?
「アオイ様の呼ぶ声なら、どれだけ離れていたって聞こえまし」
えええ? また寝ながらしゃべった?
でも、銀太郎はここにいるよね。ひょっとして、まだあの記憶の草原の中とか?
銀太郎って、今どこにいるの?
「今? 高原牧場のアイス売り場でしよ? ハスカップ味とかトウモロコシ味とか、いっぱいあって迷いまし。せっかくなのでチョコ味以外にもチャレンジゴーゴーでし」
ああ、完全に夢の中だ。北海道かな。
あれ? 寝ながら話す以前に、私、声出していないけど?
……テレパシー……ということ?
無意識に他人の心を読んでいるの⁉︎
起きている時はわざわざ意識して心を読まないでいてくれるのかな……。
って、そっちじゃなくて今ダメでしょ!
ハッキング禁止!!
撃退しないと。
(銀太郎、聞こえる? アイスは何味にしたの?)
思いきり念じてみた。銀太郎の夢の中まで届くかな。
「ハイ。おすすめのアズキ味でし。せっかくの日本、ワフー体験でしよ。あと、これアイスではなくてソフトクリームいう別物でしね」
やっぱり聞こえている。
(ねえ、銀太郎。よーく聞いてね)
「ハイ、聞こえていまし」
(銀太郎のぉ、バカーーーーっ! バカバカバカバカ、おバカーーーーっ!!)
「……」
大音量サイバー攻撃が効いたのか、銀太郎はその後全く返事をしなかった。
寝袋が動く様子もない。
え……と。大丈夫かな。
あっ、せっかくのアズキ味ソフトクリームは食べそこなっちゃったかな。
ちょっとかわいそうになってきた。
でも……銀太郎が悪いんだからね。
いつもの私の部屋を見回してホッとする。
色々あり過ぎて、頭の中が全部まざった気分。
何があっても朝は来るって、初めて知った気がする。
「お母さん、おはよう」
台所のお母さんは、いつもと同じ。パパがいないのも日常。
「あら葵、日曜なのに早いのね。昨日は遅くまで起きていたのに」
そうだった。
昨日はご飯のあと、ここで銀太郎の取り調べをやっていて……。
あれ? そのあとは?
「私、話の途中で寝ちゃったの? でも、起きたらベッドにいたけど」
「葵ったら話しながら段々とウトウトしてきて、そのまま寝ちゃったから銀太郎君が部屋まで運んでくれたのよ」
「銀太郎が?」
「それはもう、ていねいにていねいに、本当に大切なお姫様を守るナイトのようにお姫様だっこで。きゃーっヤダ照れちゃう」
へえー……。
「で? その銀太郎は?」
「まだパパの部屋で寝ているんじゃないかしら? 昨日はずいぶんと遅くまで起きていたみたいだし。昼間は藤井君のところへお出かけして、夜はパパのことがあったから、さすがの赤レンジャーも疲れたでしょう?」
「お母さんは? お母さんは大丈夫なの?」
「え? お母さんはいつもと同じことしかしていないから、別に……。あっ、大変。昨日、蓮君のドラマの復習会忘れちゃった」
お母さんは本当にいつもどおり笑っていた。お母さんなら、宇宙人と対等になれるんじゃないかな。
パパの部屋のふすまが少しだけ開いている。
そっとのぞくと、荷物の消えた部屋のまんなかに寝袋に入った銀太郎が転がっていた。
寝袋の蓮君……。寝顔もステキ過ぎる。わあ、ちょっとカワイイかも。
見てはいけないものをのぞいてしまった気がして目をそらそうとした瞬間、
「フェザ……」
ふいに口をついて出た。
銀太郎に教えてもらった昔の名前だ。声に出したら昨夜の夢をはっきりと思い出した。
やっぱり夢じゃなくて現実だったのかな?
銀太郎の育った場所。銀太郎が見た地球人。銀太郎の本名。
「フェザ・アシュー……」
なんだっけ? 長過ぎて全然覚えていないや。
「フェザ・アシュール・ラウラ・ロイ・ヤスレイでし」
「ああ、そうだった。……ん?」
答えたのは確かに銀太郎だ。でも、寝袋の銀太郎は動かない。というか、しっかり寝ているけど。
寝言?
「アオイ様の呼ぶ声なら、どれだけ離れていたって聞こえまし」
えええ? また寝ながらしゃべった?
でも、銀太郎はここにいるよね。ひょっとして、まだあの記憶の草原の中とか?
銀太郎って、今どこにいるの?
「今? 高原牧場のアイス売り場でしよ? ハスカップ味とかトウモロコシ味とか、いっぱいあって迷いまし。せっかくなのでチョコ味以外にもチャレンジゴーゴーでし」
ああ、完全に夢の中だ。北海道かな。
あれ? 寝ながら話す以前に、私、声出していないけど?
……テレパシー……ということ?
無意識に他人の心を読んでいるの⁉︎
起きている時はわざわざ意識して心を読まないでいてくれるのかな……。
って、そっちじゃなくて今ダメでしょ!
ハッキング禁止!!
撃退しないと。
(銀太郎、聞こえる? アイスは何味にしたの?)
思いきり念じてみた。銀太郎の夢の中まで届くかな。
「ハイ。おすすめのアズキ味でし。せっかくの日本、ワフー体験でしよ。あと、これアイスではなくてソフトクリームいう別物でしね」
やっぱり聞こえている。
(ねえ、銀太郎。よーく聞いてね)
「ハイ、聞こえていまし」
(銀太郎のぉ、バカーーーーっ! バカバカバカバカ、おバカーーーーっ!!)
「……」
大音量サイバー攻撃が効いたのか、銀太郎はその後全く返事をしなかった。
寝袋が動く様子もない。
え……と。大丈夫かな。
あっ、せっかくのアズキ味ソフトクリームは食べそこなっちゃったかな。
ちょっとかわいそうになってきた。
でも……銀太郎が悪いんだからね。
1
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
月神山の不気味な洋館
ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?!
満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。
話は昼間にさかのぼる。
両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。
その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。
スペクターズ・ガーデンにようこそ
一花カナウ
児童書・童話
結衣には【スペクター】と呼ばれる奇妙な隣人たちの姿が見えている。
そんな秘密をきっかけに友だちになった葉子は結衣にとって一番の親友で、とっても大好きで憧れの存在だ。
しかし、中学二年に上がりクラスが分かれてしまったのをきっかけに、二人の関係が変わり始める……。
なお、当作品はhttps://ncode.syosetu.com/n2504t/ を大幅に改稿したものになります。
改稿版はアルファポリスでの公開後にカクヨム、ノベルアップ+でも公開します。
へいこう日誌
神山小夜
児童書・童話
超ド田舎にある姫乃森中学校。
たった三人の同級生、夏希と千秋、冬美は、中学三年生の春を迎えた。
始業式の日、担任から告げられたのは、まさかの閉校!?
ドタバタ三人組の、最後の一年間が始まる。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる