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1章 未知とのソウグウ
1.ソウグウ(1/8)
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宇宙人は絶対にいる。
そんなことを言ったら、変な目で見られそうだけれど。
中学一年生にもなってお子様過ぎだと、友だちに笑われるかな。
でも、宇宙人はいる。
だって今、私のとなりで棒アイスを食べているもの。おいしそうに。満足そうに。
「ああ、これはおいしいでし。ごちそさまですた」
「う、が抜けてる。あと、すじゃなくて、し」
「う? し?」
「ごちそ、う、さまで、し、た」
「ああ、しつれーしました」
宇宙人は日本語を話せるらしい。
かなりあやふやだとはいえ、世界で一番覚えるのが難しいらしい日本語を外国、しかも海も空も越えてはるばるやって来た宇宙人が話せるのはすごい。
「翻訳アプリとか、ないの?」
「いえ、語学は趣味でして。日々これ勉強なり、でし。英語ならもっとオーケーでしけど。アーユーオーケイ?」
「無理、無理。ノーサンキュー!」
「では、つたない日本語にてしつれーしまし」
はぁ。
やっぱり英語って世界共通語なんだ。これからしっかりと英語は勉強しよう。
「ところで、コレはなんと読みましか?」
宇宙人は勉強机の上に置かれたプリントを指差して訊いてきた。文字も読むのか。
私はゆっくりと発音してあげた。
「カワカミ、アオイ。私の名前」
「アオイ様。ほお」
宇宙人は細長い指先で、「川上葵」をていねいになぞった。
今日の授業で返されたミニ漢字テストのどこに感心しているのかわからないけれど、紙に穴があきそうなほど見つめている。
真っ黒い大きな目だ。
全身が銀色でツルツルしている。背丈は私より少し小さくて、手足が長くて、とりあえず人間みたいに見える。
しっぽは、ない。
ああ、グレイっていうの? 円盤型UFOとセットで絵に描かれるみたいな、いかにもな宇宙人。
正直、キモチワルイ。
話が通じなかったら、秒で敵認定していると思う。
「では、こちらは?」
もう一枚のミニ漢字テスト。
記名部分を指さしている。
「……フジイ、ツカサ」
「?」
「まちがえて重ねて返されたの。二枚くっついているのに気づかないで持って帰って来ちゃった。それ、同じクラスの男の子の名前。今日お休みだったんだ」
ちょっと気になっているイケメン男子、藤井司君。
私の推しアイドル、滝川蓮君に似ていて、勉強ができて、なんだか王子様キャラで。
この宇宙人も、どうせなら蓮君そっくりだったら良かったのに。
そもそも、なんで私の部屋に宇宙人がいるのか。
それは、私が願ってしまったからだ。
ただし、私は宇宙人に会いたいなんて願ってはいない。
「スミマセン」
そう、コレが勝手に呼ばれたとかんちがいして、私の前に現れちゃったの。
「……って、なんで心の声に反応しているのよ? え⁉︎ 心が読めちゃうの? ウソ⁉︎ ちょっと! のぞき見は犯罪なのっ、サイテー!!」
「わあ、スミマセン。テレパシーかと。ルール守りましから。心の中の声、もう聞きませんでしから!」
大げさに土下座する宇宙人なんて初めて見た。まあ、宇宙人自体が初めてなんだけれど。
私が願ったのは、藤井君のこと。
顔がイイという理由で小学生の頃から有名人の彼は、中学に入学してまだ三ヶ月ちょっとなのに先輩たちにも知られている。まるで芸能人みたい。
私も直接話したことはないけれどウワサで知っていたから、彼を気にして変に構えてしまっていた。
今日の国語の時間に返されたテストが二枚重なっていたのに気づいたのは家に帰ってからだった。
よりにもよって、あの藤井君の答案用紙だ。本人に会ったわけでもないのに緊張で手がふるえた。
彼はもちろん満点で、字もキレイでていねいで。テスト用紙まで王子様だ。
明日は来るかな。テストを返さないといけない。
これって、彼と話すチャンスじゃない?
あんまりラッキーでうれしくて、その勢いで私は窓を開けて夜空の星に願ってしまったの。
「明日、藤井君にちゃんとテストを返せますように。ちょっとだけでも話せますように!」
願いが小さすぎて自分でも小モノだと思ったけれど、相手は別世界の王子様だから仕方がないと気を取り直したところで流れ星が見えた。
私って運がいいかも。
「あなたとお話してみたいんですっ!」
どうか、どうか、藤井君と……。
もう全力でお願いをした。
流れ星が三角形に見えたことも、ずいぶんと近くで光っていたこともどうでも良かった。
変な銀色が目の前に現れるまでは。
「ワタシもお話してみたかったでし。ちゃんと通じてまづ? ワタシの日本語、オーケー?」
気づくと、うれしそうに異文化交流を期待する宇宙人が部屋にいた。
しかも、私と目が合って急いでここに来たから体が燃えそうだと言う。冷たい物が欲しいと訴えて、ちゃっかり「アイスがいい」なんて要求する始末。
怒らせたら何をされるかわからないし、めんどうだからとりあえずアイスを出してさっさと帰ってもらおうというのが、今現在の状況というわけ。
そんなことを言ったら、変な目で見られそうだけれど。
中学一年生にもなってお子様過ぎだと、友だちに笑われるかな。
でも、宇宙人はいる。
だって今、私のとなりで棒アイスを食べているもの。おいしそうに。満足そうに。
「ああ、これはおいしいでし。ごちそさまですた」
「う、が抜けてる。あと、すじゃなくて、し」
「う? し?」
「ごちそ、う、さまで、し、た」
「ああ、しつれーしました」
宇宙人は日本語を話せるらしい。
かなりあやふやだとはいえ、世界で一番覚えるのが難しいらしい日本語を外国、しかも海も空も越えてはるばるやって来た宇宙人が話せるのはすごい。
「翻訳アプリとか、ないの?」
「いえ、語学は趣味でして。日々これ勉強なり、でし。英語ならもっとオーケーでしけど。アーユーオーケイ?」
「無理、無理。ノーサンキュー!」
「では、つたない日本語にてしつれーしまし」
はぁ。
やっぱり英語って世界共通語なんだ。これからしっかりと英語は勉強しよう。
「ところで、コレはなんと読みましか?」
宇宙人は勉強机の上に置かれたプリントを指差して訊いてきた。文字も読むのか。
私はゆっくりと発音してあげた。
「カワカミ、アオイ。私の名前」
「アオイ様。ほお」
宇宙人は細長い指先で、「川上葵」をていねいになぞった。
今日の授業で返されたミニ漢字テストのどこに感心しているのかわからないけれど、紙に穴があきそうなほど見つめている。
真っ黒い大きな目だ。
全身が銀色でツルツルしている。背丈は私より少し小さくて、手足が長くて、とりあえず人間みたいに見える。
しっぽは、ない。
ああ、グレイっていうの? 円盤型UFOとセットで絵に描かれるみたいな、いかにもな宇宙人。
正直、キモチワルイ。
話が通じなかったら、秒で敵認定していると思う。
「では、こちらは?」
もう一枚のミニ漢字テスト。
記名部分を指さしている。
「……フジイ、ツカサ」
「?」
「まちがえて重ねて返されたの。二枚くっついているのに気づかないで持って帰って来ちゃった。それ、同じクラスの男の子の名前。今日お休みだったんだ」
ちょっと気になっているイケメン男子、藤井司君。
私の推しアイドル、滝川蓮君に似ていて、勉強ができて、なんだか王子様キャラで。
この宇宙人も、どうせなら蓮君そっくりだったら良かったのに。
そもそも、なんで私の部屋に宇宙人がいるのか。
それは、私が願ってしまったからだ。
ただし、私は宇宙人に会いたいなんて願ってはいない。
「スミマセン」
そう、コレが勝手に呼ばれたとかんちがいして、私の前に現れちゃったの。
「……って、なんで心の声に反応しているのよ? え⁉︎ 心が読めちゃうの? ウソ⁉︎ ちょっと! のぞき見は犯罪なのっ、サイテー!!」
「わあ、スミマセン。テレパシーかと。ルール守りましから。心の中の声、もう聞きませんでしから!」
大げさに土下座する宇宙人なんて初めて見た。まあ、宇宙人自体が初めてなんだけれど。
私が願ったのは、藤井君のこと。
顔がイイという理由で小学生の頃から有名人の彼は、中学に入学してまだ三ヶ月ちょっとなのに先輩たちにも知られている。まるで芸能人みたい。
私も直接話したことはないけれどウワサで知っていたから、彼を気にして変に構えてしまっていた。
今日の国語の時間に返されたテストが二枚重なっていたのに気づいたのは家に帰ってからだった。
よりにもよって、あの藤井君の答案用紙だ。本人に会ったわけでもないのに緊張で手がふるえた。
彼はもちろん満点で、字もキレイでていねいで。テスト用紙まで王子様だ。
明日は来るかな。テストを返さないといけない。
これって、彼と話すチャンスじゃない?
あんまりラッキーでうれしくて、その勢いで私は窓を開けて夜空の星に願ってしまったの。
「明日、藤井君にちゃんとテストを返せますように。ちょっとだけでも話せますように!」
願いが小さすぎて自分でも小モノだと思ったけれど、相手は別世界の王子様だから仕方がないと気を取り直したところで流れ星が見えた。
私って運がいいかも。
「あなたとお話してみたいんですっ!」
どうか、どうか、藤井君と……。
もう全力でお願いをした。
流れ星が三角形に見えたことも、ずいぶんと近くで光っていたこともどうでも良かった。
変な銀色が目の前に現れるまでは。
「ワタシもお話してみたかったでし。ちゃんと通じてまづ? ワタシの日本語、オーケー?」
気づくと、うれしそうに異文化交流を期待する宇宙人が部屋にいた。
しかも、私と目が合って急いでここに来たから体が燃えそうだと言う。冷たい物が欲しいと訴えて、ちゃっかり「アイスがいい」なんて要求する始末。
怒らせたら何をされるかわからないし、めんどうだからとりあえずアイスを出してさっさと帰ってもらおうというのが、今現在の状況というわけ。
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