上 下
3 / 5

第3話

しおりを挟む
 2階に上がるとまた同じ風景の迷路だ。
 100階まですぐだと思ったけど、同じ事を100回繰り返すのかと思うとゲンナリする。

 1階とは逆方向へ歩き出す。
 私は方向音痴ではなく、どちらかといえば強い方だ。

 キツネに追いかけられながらも、なんとか逃げ切り、ヒマワリの種や他のナッツを手に入れて食べながら5階までクリアした。

 〔貴女様のお身体、合計5%お返しします。そしてここでボーナスです!
 頑張った貴女様に、靴のプレゼントです。
 お好きな靴を選んでください。〕

 目の前にいろんな靴が現れる。

 「靴って…。
 普通さ、服に合わせて靴選ぶじゃない?
 何で靴?
 そもそもさ、足からじゃなくて、頭の方から返してよ!人間て、顔大事!」

 〔はぁ…本当に我儘娘だねぇ。
 足からでもどっちでもいいじゃない。〕

 魔女が直接話してる声だ!

 「どっちでも良くない!最後までクリア出来なかったとして、一部元に戻した時、体が人間で顔がチンチラっておかしいでしょ?
 人魚姫だってケンタウロスだって、上半身が人間よ⁉︎」

 〔別に他に合わせなくったって…。それに元に戻さなくても、全部がチンチラなら問題ないわけだし。〕

 「上の方からにしてちょうだい!」

 〔ふむ…まあいい。じゃあ、“顔”からでいいよ。自分の顔探しな。〕

 靴が消え、今度は目の前に顔面が並ぶ。
 「なんか、めっちゃ怖いんだけど…。
 皆こっち見てる。」

 〔じゃあ早く選ぶんだね。〕

 「自分の顔はさ、コレってすぐ分かるんだけど、違う顔選んでもいいの?なんかすっごい美人な顔あるんだけど。」

 〔いいけど…、嫌になっても元には戻さないよ。違う顔だと、誰もアリシアだって気付いてくれないよ?〕

 「誰も…、私なんて居なくなっても、気にしないわよ。」

 〔何でそう思う?〕

 「お姉様、お兄様、お兄様、私、弟、妹の6人兄弟姉妹なの。私1人居なくなっても気付かないんじゃない?
 私の身代わりに男の子置いてきたって言ってたけど、それがタヌキだったとしても誰も何も思わないわよ、きっと。」

 〔ああ、そうだ、よく分かったね。身代わりの男の子はタヌキだよ。〕

 「ええ⁉︎本当にタヌキ?嘘でしょ?」

 〔本当さ。だから“ぽんぽこぽん”くらいしか喋れてないよ。〕

 「何でタヌキなの⁉︎」

 〔そりゃ人間の子なんて連れてきたらいろいろ面倒でしょ?タヌキに変身させてるから安心して。〕

 「安心なんてできるわけない!なんかめっちゃ腹立ってきた!
 やっぱこんな迷路なんてさっさと抜けて王宮に帰る!」

 〔やーっとやる気でた。で、どの顔にするの?〕

 「もちろん、自分の顔よ!コレ!」

 〔ハイハイ。じゃあまた預かっておくから、いるようになったら声かけてー。〕

 と言った後、魔女の気配が消えた。

 もう!サーン国の王女め!
 何で私がこんな目に遭わないといけないのよ?

 私は、ぶつけるところが無い怒りを抱えて前に進む。

 7階まで調子良く進んだ。

 突き当たりに当たった時、何かいることに気付く。

 …リス?

 『来ないで!』

 「あなた、誰?」
 チンチラの私のことを怖がっている様子のリスに話かける。

 『あなたこそ!私を食べる気なんでしょ⁉︎』

 え…?もしかして、私と同じなのかな…?

 「食べないよ。私、魔女に捕まってチンチラに変えられて、この迷宮に閉じ込められたの。」

 『あなたもなの⁉︎』

 「私、ニイ国の王女、アリシアです。」

 『私はサーン国の王女、キャサリンです。』

 「サーン国?サーン国⁉︎」
 アリシアはびっくりして2回も繰り返した。
 「何でサーン国の王女がここに⁉︎」

 『あなたは本当にニイ国の王女ですか?』

 「はい、間違いなく。」

 『あなたが私をこんなところに連れて来たんですよね?』

 「違う!あなたでしょ⁉︎」

 『違います!私ではありませんわ!』

 「私、てっきりサーン国の王女であるあなたが私をここに連れて来たんだと思ってた…。」

 『私も、ニイ国の王女のあなただと思っていましたわ…。』

 「じゃあ、誰がいったい…?」

 『私、帰りたい…。何でこんなところ…。キツネは追いかけてくるし、怖くて嫌!』

 「でも、私より早く進んでる?それとも先に連れて来られたの?いつからいるの?」

 『いつからかは分かりません。分かるものは何も無いし。食べ物とランプはあるんですが…。』

 「今7階なんだけど、6%返してもらった?足の方?」

 『はい。靴を選んで、6%です。』

 「私、魔女に言って顔返してもらったんだ。上からってことで。あなたもそうしてもらったら?」

 『あ、そんな交渉は出来るんですね?すごい!でしたら、私〝お花を摘みに〟行きたいのですが…。』

 「あぁ、そういえば私もそろそろ…。
 ねえ!休憩室どこ⁉︎」
 私は上の方に向かって大きく話かける。

 ちなみに〝お花摘みに〟とは、トイレのことです。

 〔無いよ。あんた達今小動物なんだから、その辺で用を足せばいいじゃない。〕

 「私達を誰だと思ってるの?いくら動物の姿だからって、その辺になんてできない!それに、1人じゃないし…ねぇ。」

 〔ふぅん、でも頼み方が違うんじゃない?〕

 「偉大なる魔女様、休憩室をご用意していただけないでしょうか?お願いいたします!」

 〔分かったよ。じゃあ〝休憩室〟って言って壁に手を当てて。そしたらそこにドアが出現するようにしてあげる。ただし、1回3分間だけだよ。〕

 「ありがとう!」

 『ありがとうございます!よかったですわ!ではさっそく。』

 私達はそれぞれトイレを出現させて用を済ませた。

 ふぅー。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【旧版】パーティーメンバーは『チワワ』です☆ミ

こげ丸
ファンタジー
=================== ◆重要なお知らせ◆ 本作はこげ丸の処女作なのですが、本作の主人公たちをベースに、全く新しい作品を連載開始しております。 設定は一部被っておりますが全く別の作品となりますので、ご注意下さい。 また、もし混同されてご迷惑をおかけするようなら、本作を取り下げる場合がございますので、何卒ご了承お願い致します。 =================== ※第三章までで一旦作品としては完結となります。 【旧題:異世界おさんぽ放浪記 ~パーティーメンバーはチワワです~】 一人と一匹の友情と、笑いあり、涙あり、もう一回笑いあり、ちょこっと恋あり の異世界冒険譚です☆ 過酷な異世界ではありますが、一人と一匹は逞しく楽しく過ごしているようですよ♪ そんなユウト(主人公)とパズ(チワワ)と一緒に『異世界レムリアス』を楽しんでみませんか?(*'▽') 今、一人と一匹のちょっと変わった冒険の旅が始まる! ※王道バトルファンタジーものです ※全体的に「ほのぼの」としているので楽しく読んで頂けるかと思っています ※でも、時々シリアスモードになりますのでご了承を… === こげ丸 ===

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。 辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。 やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。 アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。 風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。 しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。 ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。 ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。 ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。 果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか…… 他サイトでも公開しています。 R15は保険です。 表紙は写真ACより転載しています。

処理中です...