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第十七章 三作品目のヒロインの想い人

そうして生まれたのが闇属性【ノア視点】

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 屋敷内の客間の一室に入った私はソファーに座り、深いため息をしながらも片眼鏡を外す。

「……疲れる」

 片眼鏡を外した右側の瞳は金色で瞳孔が丸めから形がかわり蛇の瞳孔のようになる。

 微かな痛みを感じる。

 この瞳と痛みは私の罪、そのもの。

「罪もまともに償えずに、呑気に恋に溺れるなど許されないことですよ」

 フフっと笑う。面白い訳でも楽しい訳でもない。ただ……呆れているような乾いた笑い。

「まだ痛むのかのぉ。もう罪は……」
「起きていたんですね。まだ寝てるのかと」

 私の師であるシーアさんは人型の姿になっているが、気だるそうです。

「そんな悠長なこと言ってられんじゃろう。まだ迷いがあるのか?」
「……さぁ。どうでしょうね」

 シーアさんとの関係性は簡単に言うと師と弟子。けど、本来はもっと複雑です。

 前・の・世・で・神・を・殺・し・た・大・罪・人・と神・聖・な・る・神・の・道・標・とでも言いましょうか。

 大罪人を但し、導く存在が前世のシーアさん。神を殺した大罪人が私。

 前世の能力や罪を引き継ぎ今世では呪・詛・になっている。

 そっと自分の右側の瞳を隠すように触れる。

 本当ならば前世で死んだ時にその罪は消えるはずだった。けれど私は神を殺した自分自身が許せずに悔やんで死んでしまった。

 その気持ちからなのか、今世でもその罪を引き繋いでしまった。

 その罪を再び消そうとシーアさんが師として私の一番近い存在となりました。

 そもそも私の神殺しは、人の醜さに触れ、穢れ続けた神が力を暴走し……、その側近として仕えていた白蛇だった私が殺すほか無かったのですが。

 そうして生まれてしまったのが闇属性。

 封印するはずが、殺してしまった神が最後の力を使って今世に産まれてくる赤子一人にだけ宿らせた。

 人の恨みや嫉みを忘れないようにと願いを込めて。

 あれから何年、何十年、何百年とも流れただろうか。あの出来事はかなり昔のような最近のような……。とても曖昧になって私の記憶に残っている。

 一部だけ、記憶を引き継いでいるからなのか、余計ですね。

「見せるのじゃ」

 右側の瞳を隠すように触れている手をシーアさんは払って、強引に顔を合わせられる。

 シーアさんは私の右目に手を翳した。するとじんわりと温かい光と熱が目を包み込みます。

 私の右目から手を放すと、痛みはなく、鏡を確認すれば蛇の瞳では無くなっていた。

「ありがとうございます」
「お主は、あの頃とは違う。別人じゃ……今を生きても良いとワシは思うぞ」
「それは出来ませんよ。私は許されない罪を前世で引き継ぎしたんですから」

 シーアさんはソファーに座り、脚を組む。私は苦笑しながらもシーアさんの隣に座りました。

「引き継ぎ……のぉ。ワシはそうは思わんが……ノアよ。過去に囚われず今を見れば自分が何を望んでるのか……、道が見えない長くて暗い森を歩いていたら光が見えるはずじゃ」
「何が言いたいのでしょう」
「……素直になれということじゃ」

 シーアさんは大きな欠伸をして、子ドラゴンと姿になり、テーブルの上で寝始めた。

 静寂になった室内で、私はどうしようもない怒りの感情を堪てしまう。

「……それを言ってしまったら……私に、どうしろと言うんですか」

 その怒りは自分自身にたいして。自分に嘘をついてることは自覚している。それを見抜かれて、図星をつかれてしまった。

 解決策が分からない。自分自身の感情の変化にもついていけてない状況だった。

 ーーこの感情は一体何なのだろう。





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