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第十三章 流星群が降り注ぐ夜に
私が勘違いしそうで
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空中庭園の中に入る。
ここは、とても静かだ。
学園の外と校内では、すれ違う生徒たちはいたけど空中庭園に近付く度に徐々にすれ違う人達は減っていく。
もう少しで空中庭園に着く頃には誰一人としてすれ違わなかった。
ーーそれもそのはず、
空中庭園は、王族しか入れない。王族の誰かが許可をするなら入れる場所ではある。
私は、殿下に許可された。だから入れる。もちろん許可されたからとはいえ、自由に行き来出来るわけではない。
許可されたその日だけ入れる。
私は迷わず奥に進み、ガゼボまで来る。
殿下はまだ来てないようだったので、少し探索してみようと思った。
きっと、妃候補の令嬢たちに捕まってるだろうから。
人気者って大変だなぁ。
近くの花壇に近付いて、しゃがみこむ。
色鮮やかな花はとても美しく、眺めているだけでも心が癒される。
そういえば、デメトリアス家だと白薔薇ぐらいしかなかったからなんだか新鮮。
お義母さまが薔薇好きだから薔薇を育ててるのはわかるんだけど……、
なんで薔薇にこだわってたんだろう。花の中で一番薔薇好きってわけではなさそうだったのよね。
散歩しててもあんまり薔薇を見ていなかった。むしろ、どこか切なくて懐かしむような……。
「ソフィア嬢」
考えごとをしていると、声をかけられる。思っていたよりも早くてビクッと肩を震わせて声の主を見た。
「ごめん。驚かせちゃったね」
はにかむ様に笑う殿下は、若干息切れと汗をかいていた。
「いいえ。お待ちしてました」
私は立ち、殿下に近付いた。
ーーその時だった。
ガラス越しからは、細く光る何かが見え始めた。
光る何かを見ようと私と殿下は夜空を見上げる。
星たちが後ろに長い光の尾を引いて地上に降りてくるようだった。
とても光り輝いていて、周りが薄暗いのも合わさってとても綺麗だった。
本当に天女が泣いているような……そんな気さえする。
流星群に夢中で魅入っていると、隣から「ふふっ」と、笑う声が聞こえた。
私は声の主である殿下を見た。
「キミを誘って良かったよ。楽しそうな顔、はじめてみた」
「そう、でしたっけ?」
星の光で見える殿下の顔は、とても蠱惑的だった。
色っぽさがある美しい容姿は、誰もを惑わす魅力がある。
元々推しでもあるから、余計に胸がドキドキと高鳴って興奮してしまう。今一人だったら確実に悶えてた。
殿下の顔を見てられなくて顔を逸らし、照れ隠すように右側の横髪を耳にかける。
「ソフィア嬢は、俺を見る度に何かしら怯えていたからね。そんなに怖かった?」
「い、いえ! 怖くないです。殿下はいつも優しいですので」
そう、殿下はいつも私に優しい。だから勘違いはしたくない。誰にだって優しいのだから。
私は殿下を見る。アイドル級な顔立ちに目眩がしてよろけそうなのを必死に抑え、冷静さを装った。
「ですから、もう私には優しくしないでください」
はじめてあった頃は、その優しさが恐怖だった。常に裏があると思っていたから、私には他者の裏の裏を読むというのが苦手だから余計に恐怖の対象でもあった。
でも今は、恐怖というよりも安らげる。殿下の優しさに慣れ始めているんだ。
一番恐れている推しとしての恋から、恋愛としての恋になっていきそうだった。
「それは……俺が反対したからか? 俺の呪いを解くのを」
「違います! ……私が……勘違いしそうで」
呪いを解くことに関しては、説得を試みようとは思っていた。
でも、きっと何を言っても殿下の心は変わらないだろうなと。
だったら、私の今の心境を伝えたうえで殿下の気持ちを直接聞いてみよう。
そうした方が、言いやすいだろうと私は考えた。
ここは、とても静かだ。
学園の外と校内では、すれ違う生徒たちはいたけど空中庭園に近付く度に徐々にすれ違う人達は減っていく。
もう少しで空中庭園に着く頃には誰一人としてすれ違わなかった。
ーーそれもそのはず、
空中庭園は、王族しか入れない。王族の誰かが許可をするなら入れる場所ではある。
私は、殿下に許可された。だから入れる。もちろん許可されたからとはいえ、自由に行き来出来るわけではない。
許可されたその日だけ入れる。
私は迷わず奥に進み、ガゼボまで来る。
殿下はまだ来てないようだったので、少し探索してみようと思った。
きっと、妃候補の令嬢たちに捕まってるだろうから。
人気者って大変だなぁ。
近くの花壇に近付いて、しゃがみこむ。
色鮮やかな花はとても美しく、眺めているだけでも心が癒される。
そういえば、デメトリアス家だと白薔薇ぐらいしかなかったからなんだか新鮮。
お義母さまが薔薇好きだから薔薇を育ててるのはわかるんだけど……、
なんで薔薇にこだわってたんだろう。花の中で一番薔薇好きってわけではなさそうだったのよね。
散歩しててもあんまり薔薇を見ていなかった。むしろ、どこか切なくて懐かしむような……。
「ソフィア嬢」
考えごとをしていると、声をかけられる。思っていたよりも早くてビクッと肩を震わせて声の主を見た。
「ごめん。驚かせちゃったね」
はにかむ様に笑う殿下は、若干息切れと汗をかいていた。
「いいえ。お待ちしてました」
私は立ち、殿下に近付いた。
ーーその時だった。
ガラス越しからは、細く光る何かが見え始めた。
光る何かを見ようと私と殿下は夜空を見上げる。
星たちが後ろに長い光の尾を引いて地上に降りてくるようだった。
とても光り輝いていて、周りが薄暗いのも合わさってとても綺麗だった。
本当に天女が泣いているような……そんな気さえする。
流星群に夢中で魅入っていると、隣から「ふふっ」と、笑う声が聞こえた。
私は声の主である殿下を見た。
「キミを誘って良かったよ。楽しそうな顔、はじめてみた」
「そう、でしたっけ?」
星の光で見える殿下の顔は、とても蠱惑的だった。
色っぽさがある美しい容姿は、誰もを惑わす魅力がある。
元々推しでもあるから、余計に胸がドキドキと高鳴って興奮してしまう。今一人だったら確実に悶えてた。
殿下の顔を見てられなくて顔を逸らし、照れ隠すように右側の横髪を耳にかける。
「ソフィア嬢は、俺を見る度に何かしら怯えていたからね。そんなに怖かった?」
「い、いえ! 怖くないです。殿下はいつも優しいですので」
そう、殿下はいつも私に優しい。だから勘違いはしたくない。誰にだって優しいのだから。
私は殿下を見る。アイドル級な顔立ちに目眩がしてよろけそうなのを必死に抑え、冷静さを装った。
「ですから、もう私には優しくしないでください」
はじめてあった頃は、その優しさが恐怖だった。常に裏があると思っていたから、私には他者の裏の裏を読むというのが苦手だから余計に恐怖の対象でもあった。
でも今は、恐怖というよりも安らげる。殿下の優しさに慣れ始めているんだ。
一番恐れている推しとしての恋から、恋愛としての恋になっていきそうだった。
「それは……俺が反対したからか? 俺の呪いを解くのを」
「違います! ……私が……勘違いしそうで」
呪いを解くことに関しては、説得を試みようとは思っていた。
でも、きっと何を言っても殿下の心は変わらないだろうなと。
だったら、私の今の心境を伝えたうえで殿下の気持ちを直接聞いてみよう。
そうした方が、言いやすいだろうと私は考えた。
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