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不意に、抱きしめていたカロクの身体がクタリと弛緩する。オーヴァンは慌ててその身体を抱きとめ、横抱きにしてその顔色を伺った。
どうやら眠ってしまっただけのようだ。
オーヴァンはフッ、と息を吐くと侵入者達を見下ろした。
「‥なるほど。手懐けてるわけだ。」
ニィ、と男が笑う。
オーヴァンはその言葉に、眉間のシワを深くした。今この場で意識を保っているのは、ローレンスを殺したこの男だけのようだ。
男はギラギラとした瞳でオーヴァンを見据える。ようやく標的であるこの国の宰相を拝むことが出来た。しかし男は動く事ができない。1歩でも動こうものなら、すぐ側に控える狼に喉笛を食いちぎられるだろう。チラリと視線を流せば、油断なく警戒を続ける狼の瞳とかち合った。
魔族達は、カロクが気絶したあともその場に留まっていた。みな、その姿をひとまわり以上大きくした状態で。
オーヴァンが最後に見たのは、1番大きくても子犬ほどの大きさだった。それがみな、大型犬、もしくはそれ以上に大きくなっている。中位へと進化したのだろうか。
オーヴァンは人知れず、息を飲んだ。
「‥‥今からこの男達を拘束する。騎士達は、攻撃しないで欲しい。」
そのうちの一体に、オーヴァンが言う。
視線を向けたのは大きな蜥蜴だ。視線と言っても、この蜥蜴に瞳がある訳では無い。ただ、頭がこちらに向いていると言うだけ。
じっとこちらを伺っていた蜥蜴だったが、そのうち数歩下がった。
それを了承と受け取ったオーヴァンは騎士達へと号令する。
「捕らえろ。」
その言葉に騎士達は、躊躇いながらも男達へと近づき、その四肢を拘束した。
「残念だが、お前達を雇った人物への検討は着いている。」
オーヴァンが言う。
「だろうなぁ。」
その言葉に、ククッと男は楽しげに笑った。それから、オーヴァンの腕の中のカロクへと視線を流す。
「‥‥あぁ、面白くなってきたなぁ? こんなに小さいのに、7体も魔族を従えて。」
「‥‥。」
ギッ、とオーヴァンが男を睨む。
しかし男は笑い続ける。
「こりゃぁ、史上最凶の魔王を拝む日も遠くねぇな。ハハッ、本当に惜しいことをした。」
そう言って男はペロリと舌なめずりをする。
「もう少し早く知ってりゃぁ、攫ってでも俺のもんにしたのに。」
「‥‥っ!!」
その言葉に、オーヴァンは思わず男の顎を蹴りあげた。グワンと脳が揺れて、男が呻く。しかしこの男、相当な手練だ。こういう手合いは、この程度では怯まない。
「‥ッ‥‥楽しいなぁ、侯爵。お前を殺したら、今度こそそいつは堕ちるだろうか?」
「‥‥連れて行け。」
男の目から隠すようにカロクを抱き直すと、オーヴァンは騎士達へと命じる。拘束されていく間も、男は楽しげに笑い続けていた。
騎士達は高笑いをする男を、引き摺るように引っ立てる。魔族達は、オーヴァンの指示に従い最後まで騎士達を攻撃する事はなかった。
どうやら眠ってしまっただけのようだ。
オーヴァンはフッ、と息を吐くと侵入者達を見下ろした。
「‥なるほど。手懐けてるわけだ。」
ニィ、と男が笑う。
オーヴァンはその言葉に、眉間のシワを深くした。今この場で意識を保っているのは、ローレンスを殺したこの男だけのようだ。
男はギラギラとした瞳でオーヴァンを見据える。ようやく標的であるこの国の宰相を拝むことが出来た。しかし男は動く事ができない。1歩でも動こうものなら、すぐ側に控える狼に喉笛を食いちぎられるだろう。チラリと視線を流せば、油断なく警戒を続ける狼の瞳とかち合った。
魔族達は、カロクが気絶したあともその場に留まっていた。みな、その姿をひとまわり以上大きくした状態で。
オーヴァンが最後に見たのは、1番大きくても子犬ほどの大きさだった。それがみな、大型犬、もしくはそれ以上に大きくなっている。中位へと進化したのだろうか。
オーヴァンは人知れず、息を飲んだ。
「‥‥今からこの男達を拘束する。騎士達は、攻撃しないで欲しい。」
そのうちの一体に、オーヴァンが言う。
視線を向けたのは大きな蜥蜴だ。視線と言っても、この蜥蜴に瞳がある訳では無い。ただ、頭がこちらに向いていると言うだけ。
じっとこちらを伺っていた蜥蜴だったが、そのうち数歩下がった。
それを了承と受け取ったオーヴァンは騎士達へと号令する。
「捕らえろ。」
その言葉に騎士達は、躊躇いながらも男達へと近づき、その四肢を拘束した。
「残念だが、お前達を雇った人物への検討は着いている。」
オーヴァンが言う。
「だろうなぁ。」
その言葉に、ククッと男は楽しげに笑った。それから、オーヴァンの腕の中のカロクへと視線を流す。
「‥‥あぁ、面白くなってきたなぁ? こんなに小さいのに、7体も魔族を従えて。」
「‥‥。」
ギッ、とオーヴァンが男を睨む。
しかし男は笑い続ける。
「こりゃぁ、史上最凶の魔王を拝む日も遠くねぇな。ハハッ、本当に惜しいことをした。」
そう言って男はペロリと舌なめずりをする。
「もう少し早く知ってりゃぁ、攫ってでも俺のもんにしたのに。」
「‥‥っ!!」
その言葉に、オーヴァンは思わず男の顎を蹴りあげた。グワンと脳が揺れて、男が呻く。しかしこの男、相当な手練だ。こういう手合いは、この程度では怯まない。
「‥ッ‥‥楽しいなぁ、侯爵。お前を殺したら、今度こそそいつは堕ちるだろうか?」
「‥‥連れて行け。」
男の目から隠すようにカロクを抱き直すと、オーヴァンは騎士達へと命じる。拘束されていく間も、男は楽しげに笑い続けていた。
騎士達は高笑いをする男を、引き摺るように引っ立てる。魔族達は、オーヴァンの指示に従い最後まで騎士達を攻撃する事はなかった。
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