25 / 82
25
しおりを挟む
カロクは授業の合間に、いつもの丘の上へと訪れていた。今日も双子の侍従は連れていない。彼らも彼らで、侍従としての教育を受けているのだとローレンスが話してくれた。
それなら邪魔は出来ない。それに、彼らがいない方が、魔族たちとの時間が取れることもまた事実だった。
キースのことは気がかりだけど、彼は確かに優秀で、教え方も上手い。それにせっかくローレンスが見つけてきてくれた教師だ。こんなことで音を上げたくはない。もう少し向き合ってみよう、とカロクは心に決めていた。
「みんな。」
カロクが声をかけると、ふわりと魔族たちが集まってきた。
実態を持つ蘇芳は、カロクの肩の上が定位置だ。ぐっと伸びあがって、カロクの頬へその顔を寄せる。その体はほのかに温かく、カロクの心を癒してくれた。
「今ね、魔法を学んでいるんだ。」
カロクが言う。
そう言って覚えたばかりの風の魔法を行使しようと試みた。
「僕は魔力量が多いから、もし暴走仕掛けたらまた魔力を食べて抑えてくれる?」
カロクがそう問うと、魔族たちは心得たというように一度淡く点滅した。
彼らが魔力を食べるということは、ここ最近気づいたカロクだけの秘密だ。そのおかげで、みな随分と大きくなった。だが、いまだに進化を果たせていないのは、何か条件があるからなのだろう。
蘇芳は、みなよりだいぶ小さなときに進化した。だから、進化の条件は魔力を与えることではないのだろう。そんな蘇芳も、カロクの魔力を食らい、だいぶ大きくなってきていた。カロクの小さな掌からこぼれ出るほどの大きさでは、見つかるのも時間の問題か。
「うまくできるかな‥。」
そう言ってカロクは呪文を唱える。
簡単な初期魔法だ。
するとふわりと手の中に柔らかな風が舞い上がる。
つむじ風のように掌でくるくると渦を巻き、近くを漂っていた綿毛を巻き込んだ。
「ふふ、ほら成功した。」
そう言って魔法を維持したまま、白緑へと差し出す。
「ほら、風だよ。お前と同じ。」
ふふ、と柔らかな笑みを浮かべるとカロクはその風を消そうとその手を解いた。しかしその瞬間、ぐわりと大きくなったつむじ風が白緑を巻き込んで舞い上がる。
「‥白緑!!」
カロクは思わずその手を伸ばした。
白緑が飛ばされてしまう。
しかしそんなカロクの不安をよそに、大きく膨らんだ風は一度強い突風となって吹きすさび、パァンとはじけた。
「‥!!」
カロクは驚いてその目を閉じる。
ここで問題を起こせば、また双子の監視が強くなってしまう。せっかく魔族たちとの時間を取れるようになったのだ。できれば避けたい。
しかしカロクが恐れた暴走は、いつまでたっても起きることはなかった。
カロクは恐る恐る目を開ける。するとそこには、緑色の小さな小鳥がパタパタとカロクの目の前を浮遊していた。
もしかしてー‥
「白、緑‥?」
カロクが問えば、小鳥は肯定するようにぴぃと一声鳴いた。
それなら邪魔は出来ない。それに、彼らがいない方が、魔族たちとの時間が取れることもまた事実だった。
キースのことは気がかりだけど、彼は確かに優秀で、教え方も上手い。それにせっかくローレンスが見つけてきてくれた教師だ。こんなことで音を上げたくはない。もう少し向き合ってみよう、とカロクは心に決めていた。
「みんな。」
カロクが声をかけると、ふわりと魔族たちが集まってきた。
実態を持つ蘇芳は、カロクの肩の上が定位置だ。ぐっと伸びあがって、カロクの頬へその顔を寄せる。その体はほのかに温かく、カロクの心を癒してくれた。
「今ね、魔法を学んでいるんだ。」
カロクが言う。
そう言って覚えたばかりの風の魔法を行使しようと試みた。
「僕は魔力量が多いから、もし暴走仕掛けたらまた魔力を食べて抑えてくれる?」
カロクがそう問うと、魔族たちは心得たというように一度淡く点滅した。
彼らが魔力を食べるということは、ここ最近気づいたカロクだけの秘密だ。そのおかげで、みな随分と大きくなった。だが、いまだに進化を果たせていないのは、何か条件があるからなのだろう。
蘇芳は、みなよりだいぶ小さなときに進化した。だから、進化の条件は魔力を与えることではないのだろう。そんな蘇芳も、カロクの魔力を食らい、だいぶ大きくなってきていた。カロクの小さな掌からこぼれ出るほどの大きさでは、見つかるのも時間の問題か。
「うまくできるかな‥。」
そう言ってカロクは呪文を唱える。
簡単な初期魔法だ。
するとふわりと手の中に柔らかな風が舞い上がる。
つむじ風のように掌でくるくると渦を巻き、近くを漂っていた綿毛を巻き込んだ。
「ふふ、ほら成功した。」
そう言って魔法を維持したまま、白緑へと差し出す。
「ほら、風だよ。お前と同じ。」
ふふ、と柔らかな笑みを浮かべるとカロクはその風を消そうとその手を解いた。しかしその瞬間、ぐわりと大きくなったつむじ風が白緑を巻き込んで舞い上がる。
「‥白緑!!」
カロクは思わずその手を伸ばした。
白緑が飛ばされてしまう。
しかしそんなカロクの不安をよそに、大きく膨らんだ風は一度強い突風となって吹きすさび、パァンとはじけた。
「‥!!」
カロクは驚いてその目を閉じる。
ここで問題を起こせば、また双子の監視が強くなってしまう。せっかく魔族たちとの時間を取れるようになったのだ。できれば避けたい。
しかしカロクが恐れた暴走は、いつまでたっても起きることはなかった。
カロクは恐る恐る目を開ける。するとそこには、緑色の小さな小鳥がパタパタとカロクの目の前を浮遊していた。
もしかしてー‥
「白、緑‥?」
カロクが問えば、小鳥は肯定するようにぴぃと一声鳴いた。
12
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
総受けなんか、なりたくない!!
はる
BL
ある日、王道学園に入学することになった柳瀬 晴人(主人公)。
イケメン達のホモ活を見守るべく、目立たないように専念するがー…?
どきどき!ハラハラ!!王道学園のBLが
今ここに!!
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ボクのことが嫌いな彼らは、10年後の僕を溺愛する
面
BL
母親の再婚により、幼いアンリの生活は一変した。
十年間、最悪を受け入れ、諦め、死んだように生きていたアンリの周りは最近なんだかおかしい。
!! 暴力表現は*
R18表現は**
という感じで作者判断で一応印をつけようと思いますが、印がなくても色々あると理解した上でご覧ください。
※すべては見切り発車です。
※R18は保険です。サラッと描写するかもしれないし、がっつりにするかもしれないし。いずれにしてもある程度話が進まないとそういうシーンは出てこないと思います。がっつりになったら印つけます。
※女性との絡み、暴力、犯罪描写あります。
※主人公重度のマザコン
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
弟いわく、ここは乙女ゲームの世界らしいです
慎
BL
――‥ 昔、あるとき弟が言った。此処はある乙女ゲームの世界の中だ、と。我が侯爵家 ハワードは今の代で終わりを迎え、父・母の散財により没落貴族に堕ちる、と… 。そして、これまでの悪事が晒され、父・母と共に令息である僕自身も母の息の掛かった婚約者の悪役令嬢と共に公開処刑にて断罪される… と。あの日、珍しく滑舌に喋り出した弟は予言めいた言葉を口にした――‥ 。
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる