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そして、私たちがドラゴニス王国に向かう日になりました。
王都のアバント伯爵家にはマンサール様をはじめとした竜騎士団の方々が勢揃いです。
皆様でお迎えに来てくださったようです。
私とフォルクスとドラゴニス王国から来た私の侍女や従者たちが荷物を持ってマンサール様たちの所に向かいました。
私たちは最後の挨拶のために荷物を置きまして振り返りました。

お見送りはお祖父様と使用人の一部の方だけです。
まぁ、私やフォルクスを見下していた使用人たちはお祖父様が即刻辞めさせたみたいです。
まぁ、新しくアバント伯爵を継ぐことになる方がそちらからも使用人を連れてくるとのことで人数調整も入ったみたいです。

第一王子様(あ、もう元ですね)たちの罰はまだ始まってません。
と言うのも、現在は強制労働先へ護送されているのです。
行き先は国の最北端のダリーホックです。
ダリーホックは海と岩山に囲まれた絶界の陸の孤島と呼ばれるような場所なのです。

海は常に荒れ狂い、陸路は堅牢な城壁にて守られ、城門以外の場所は険しい渓谷となっているため城壁から抜け出すことなど出来ないとされています。

私は強制労働の内容は詳しくは知りませんが、私とフォルクスに対しての賠償金はドラゴニス王国でどのようになるか決まってから受けとるようになりました。

「それではお祖父様、行って参ります」
「行ってきます!」
「二人とも身体などに気を付けるのだよ」
「「はい」」
「マンサール卿。マリリン様をお守りできず、すみませんでした。何卒、エリアンティーヌとフォルクスの事をお頼み申し上げます。二人は私にとって大切な孫なのです」
「ええ、必ずお守りします。前アバント伯爵。エリアンティーヌ様は我らにとっても大切なお方ですし、フォルクス君はそのエリアンティーヌ様にとって大事な弟君です」

マンサール様はにこやかにお祖父様に挨拶されました。
お祖父様とマンサール様は穏やかですね。

お祖父様と過ごしたことはほとんどありませんでしたが、これ程までに私たちを気にかけてくださっていたようです。
それは素直に嬉しく思います。
どうやら、私たちはお祖父様には愛されていたみたいですね。

「お祖父様、お手紙を書きますね」
「僕も書く!」
「ほぉ、嬉しいなぁ。ワシも返事を書くよ」
「「はい」」
「元気で過ごすんだよ。万が一などないだろうけど、ドラゴニス王国に拒否されたら帰っておいで。ワシは何時でも待っておるよ。勿論、遊びに来てくれるだけでも嬉しいよ」
「ふふふ、分かりましたわ、お祖父様。落ち着いたら遊びに来ますね。それに可能でしたらご招待いたします、お祖父様」
「ほっほっ、嬉しいよ。そろそろ時間だね。気を付けて、エリアンティーヌ、フォルクス」
「はい。お祖父様も御体に気を付けてください」
「行ってきます」

私たちはお祖父様たちに見送られて竜たちが待機している駐屯場に向かいました。
どうやら、竜騎士団の竜に乗せて貰って移動することになっています。
陸路から行こうとすれば1ヶ月かかり、航路から行こうとすれば半月はかかるとの事です。
ですが、空路…と言うより、竜に乗って進めば2~3日程度でつくとのことです。
竜たちの速度はかなり速いらしいですが、風魔法を駆使して、空気抵抗などを無効化しているらしいのです。
ですが、これは信頼関係をしっかりとした相棒の竜騎士の方がいてはじめて可能になります。

騎士様たちのご命令…お願いでしょうか?
それで同乗者や運搬用の籠の中にいても快適に迎えるらしいのです。
これはクリスティーナたちの証言です。
サルベージル王国に来る際もその様にして来たそうです。

***

駐屯所に着きますと壮観でした。
多くの竜たちが思い思いに過ごしているのです。
私もフォルクスも興奮してしまいました。
フォルクスは目をキラキラ輝かせて、私以上に興奮しているようです、男の子ですものね。

「壮観ですわね」
「スゴい!スゴい!竜がこんなに!」
「これは一部隊だけです。ドラゴニス王国には竜騎士団がその役割ごとに5~10部隊に分かれています。一部隊の人員はだいたい50~100人ほどですので、それに会わせて竜もいます。我が部隊は50人ほどの少数部隊です」
「ドラゴニス王国は竜騎士の発祥であり、一番保持数が多いとは聞いてましたが、それ程とは思いませんでした」
「そうですね。それに竜騎士にならず竜と共にいる者もいますので、ドラゴニスでは竜は身近な存在なんです」
「そうなんですね。スゴいですね」

竜のことを説明してくださるマンサール様は生き生きとされています。
それを聞くフォルクスは尊敬するような眼差しをマンサール様に向けています。
楽しそうですね。

この場にいる竜だけでも様々な種類がいるようですね。
色にしても白、黒、赤、青、緑、茶など本当に色とりどりです。
首の長いもの、小柄なもの、逆に大柄なものなど姿も様々です。

「では、エリアンティーヌ様、フォルクス君、クリスは私の竜の持つ籠に、他の侍女や従者たちは各々来た時と同じ籠に乗ってください。準備が終わり次第、出発します」
「「「「「「「はい」」」」」」」

私はみんなが荷物用の籠に荷物を入れているのを見ていました。
そうしていると二人の方がやって来ました。
そちらを見ますと、現れたのはアイザック様とフレデリック様でした。

「エリアンティーヌ嬢」
「フォルクス」
「アイザック様」
「フレデリック兄様!」
「お見送りに来ました。この度は本当にすみませんでした、エリアンティーヌ嬢」
「いいえ、アイザック様。アイザック様やフレデリック様、国王陛下に王妃陛下にはとても良くして頂きました」
「そう言って貰えるとありがたいですね。ですが、エリアンティーヌ嬢には多大な迷惑を」
「あの人たちのことはもう気にしてませんので」
「そうですか。分かりました」
「はい」

アイザック様はやっと納得してくださいました。
あのままほっとくと責任感の強いアイザック様はずっと謝っていそうです。
責任感が強いのは美点ですが、今回ばかりは嫌ですね。
せっかく、お見送りをしてくださるのにその様なことで時間を使うのは勿体ないと思いませんか?
私は思います。
ですので、ここは笑顔で見送ってほしいです。

「元気でな、フォルクス」
「はい、フレデリック兄様もお元気で」
「剣術の鍛練を忘れるなよ」
「はい!」

フレデリック様はフォルクスの頭を撫でながら話されています。
フレデリック様にとってフォルクスは弟のような存在なのでしょうね。
男同士の兄弟も良いものなのでしょうね。







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