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第一章
40、ジャックと②
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俺たちのしんみりした空気をあえて壊してくれたのがカルーラだった。
「おいおい、しみったれてんなぁ」
「カルーラ」
「あんたがくるとしんみりしてられないよ」
「なぁに、人生楽しんだ方が勝ちよ!」
「まぁ、そんなんですけど、カルーラは達観しているというか」
「単純だな」
「アホ共め、人生50も60も過ぎりゃ、大概のことはそんなものかって思うものよ。それでも人生は一回こっきり、どんな道をたどってきても結局は今に繋がってんだ。これからを楽しまなきゃもったいねぇだろ」
「俺はカルーラの考え好きだわ」
「まぁ、好き嫌いでいえば俺も好きだけどよ。どうしても考えすぎるわな」
「悩まない人生などないわ、悩み・考え・戸惑いながらも楽しく日々を生きることよ」
カルーラはそう言って笑いながら厨房の方に消えていった。
よくよく見ると追加のラビッティアの肉料理があった。
今度来たのはあっさり煮込みだった。冷えたク・エールも追加されていた。
うん、しんみりした空気が店に充満していてあれだったんだろうな。元気出せっていうのと同時に人の店の空気をおかしくするなって言いたかったんだろうな。
ああいう風に何気なく人生のアドバイス付きで言われると苦笑しか出ないけど。
「カルーラには敵わないなぁ」
「俺もそう思う。俺がここに来た当初もカルーラの旦那が諦めずに接してくれたおかげだ」
「でも、俺的にはカルーラの歳の方が気になる」
「そういえば俺が来た時も50も60もって言ってたわ。もう5年は前の話だがな」
「年齢不詳……」
「まぁ、見た目でもわからんな」
俺とジャックは向こうの方で他の客と楽しそうに話しているカルーラを見て苦笑した。
実はユキは腹が満たされて椅子の上で丸くなって眠っている。
この寝顔も天使だわ。
俺はカルーラが持ってきてくれたあっさり煮込みを口に入れた。うん、マジうまい。解けるというか、溶けるというか、それぐらい柔らかくなるまで煮込んでいるのにかすかに酢の効いた口当たりさっぱりとしている。
「これ、うまい」
「ああ、相変わらずここの料理はうまい」
「ラビッティアってあっさりした肉なんだな」
「まぁ、どんな味付けもしやすい肉だなぁ。俺も普段は自分で料理するからわかるが」
「え?ジャックも料理するのか?」
「なんだ、その意外そうな顔は?」
「いや、意外過ぎて」
「こいつ~」
俺の言葉にジャックが小突いてきた。
うん、こういう風に冗談めかして話ができる相手がこんな短期間でできるとは思わなかった。ジャックにしてみれば昔、街のみんなが自分のしてくれたように、俺が困らないように手助けしたいって気持ちだったんだろうな。
何が彼の琴線に触れたのかわからないがこれでも感謝している。
この街の人たちが暖かくて、優しいから俺もユキも今を楽しく暮らせている。
俺はク・エールを飲み干した。さすがに飲みすぎたと思ったので、アルコールを少し抜くために水を頼み、飲んだ。そんな俺に対してジャックはいまだにク・エールを追加で飲んでいる。実はかなりの酒豪でこんなに飲んでも明日も元気いっぱいらしい。まぁ、本人曰くだが。
俺はユキを自分の膝の上に移してその気持ちいい毛並みをなぜた。
「こいつ、天狼なんだよな?」
「はい、そうですが」
「ふ~ん」
「ジャック?」
そうしているとジャックがユキを見ていた。それこそ、不思議そうな顔をしている。何か問題でもあったのだろうか?いや、気になることでもあったんだろうか?
まぁ、一人考えても仕方ないから聞いてみるけどな。
「おいおい、しみったれてんなぁ」
「カルーラ」
「あんたがくるとしんみりしてられないよ」
「なぁに、人生楽しんだ方が勝ちよ!」
「まぁ、そんなんですけど、カルーラは達観しているというか」
「単純だな」
「アホ共め、人生50も60も過ぎりゃ、大概のことはそんなものかって思うものよ。それでも人生は一回こっきり、どんな道をたどってきても結局は今に繋がってんだ。これからを楽しまなきゃもったいねぇだろ」
「俺はカルーラの考え好きだわ」
「まぁ、好き嫌いでいえば俺も好きだけどよ。どうしても考えすぎるわな」
「悩まない人生などないわ、悩み・考え・戸惑いながらも楽しく日々を生きることよ」
カルーラはそう言って笑いながら厨房の方に消えていった。
よくよく見ると追加のラビッティアの肉料理があった。
今度来たのはあっさり煮込みだった。冷えたク・エールも追加されていた。
うん、しんみりした空気が店に充満していてあれだったんだろうな。元気出せっていうのと同時に人の店の空気をおかしくするなって言いたかったんだろうな。
ああいう風に何気なく人生のアドバイス付きで言われると苦笑しか出ないけど。
「カルーラには敵わないなぁ」
「俺もそう思う。俺がここに来た当初もカルーラの旦那が諦めずに接してくれたおかげだ」
「でも、俺的にはカルーラの歳の方が気になる」
「そういえば俺が来た時も50も60もって言ってたわ。もう5年は前の話だがな」
「年齢不詳……」
「まぁ、見た目でもわからんな」
俺とジャックは向こうの方で他の客と楽しそうに話しているカルーラを見て苦笑した。
実はユキは腹が満たされて椅子の上で丸くなって眠っている。
この寝顔も天使だわ。
俺はカルーラが持ってきてくれたあっさり煮込みを口に入れた。うん、マジうまい。解けるというか、溶けるというか、それぐらい柔らかくなるまで煮込んでいるのにかすかに酢の効いた口当たりさっぱりとしている。
「これ、うまい」
「ああ、相変わらずここの料理はうまい」
「ラビッティアってあっさりした肉なんだな」
「まぁ、どんな味付けもしやすい肉だなぁ。俺も普段は自分で料理するからわかるが」
「え?ジャックも料理するのか?」
「なんだ、その意外そうな顔は?」
「いや、意外過ぎて」
「こいつ~」
俺の言葉にジャックが小突いてきた。
うん、こういう風に冗談めかして話ができる相手がこんな短期間でできるとは思わなかった。ジャックにしてみれば昔、街のみんなが自分のしてくれたように、俺が困らないように手助けしたいって気持ちだったんだろうな。
何が彼の琴線に触れたのかわからないがこれでも感謝している。
この街の人たちが暖かくて、優しいから俺もユキも今を楽しく暮らせている。
俺はク・エールを飲み干した。さすがに飲みすぎたと思ったので、アルコールを少し抜くために水を頼み、飲んだ。そんな俺に対してジャックはいまだにク・エールを追加で飲んでいる。実はかなりの酒豪でこんなに飲んでも明日も元気いっぱいらしい。まぁ、本人曰くだが。
俺はユキを自分の膝の上に移してその気持ちいい毛並みをなぜた。
「こいつ、天狼なんだよな?」
「はい、そうですが」
「ふ~ん」
「ジャック?」
そうしているとジャックがユキを見ていた。それこそ、不思議そうな顔をしている。何か問題でもあったのだろうか?いや、気になることでもあったんだろうか?
まぁ、一人考えても仕方ないから聞いてみるけどな。
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