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第二章

40、旅立ち

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結局、俺たちは翌日には旅立つことにした。
食材も防具もあるし、何より魔獣組が早く馬車をひきたいっ話になったのだ。
誰が最初にひくかで大いにもめた。

「私が先です!」
「いや!俺だ!」
「我だ」
「いいえ、私です!」
「おーれ!」

これを朝早くからされた俺は無言で拳骨を落とした。
他の客に迷惑がかかるからだ。
幸い、まだ他の客は夢の中だったけど、段々と声が大きくなっていっていたから冷や冷やしたものだ。
エドとユキ?エドもユキも夢の中だ。

「うるさい!」
「「「すみません」」」
「すまぬ」
「ごめんなさい」
「まったく、日も昇らない内から騒ぐなよ」
「「「「はい」」」」
「うむ」
「で、何の騒ぎだ。」
「馬車をひく順番です」
「ああ、そういうことか。それなら前回同様『あみだくじ』で決めるとしよう」
「あみだくじで?」
「ああ、あみだくじはこういう時にも使えるんだよ」

俺はあみだくじを作った。
上の方に魔獣組の名前、下に番号をふった。
これであとは順番を確認すればいい。

「全員、書いたな」
「はい」
「じゃあ、確認するぞ」
 
俺が公平に確認していった。
その結果、1番シエル、2番ユリウス、3番ガイ、4番グラン、5レイとなった。
そして、一巡したらもう一度くじで順番を決めることになった。
まあ、どういうわけか地上組からの飛行組になってしまったからな。
それに何故かうちの面子は馬車をひきたがるからな。
ユニコーンや竜族はプライドが高いはずなんだが、まぁ、本人たちが望んでいるんならそれでいいんだけど。

「はよー」
「おう、おはよう。エド」

まだ寝ぼけ眼なエドが起きてきた。
ついでに言うとあみだくじから一時間以上経っていたりする。

***

全員で食事をとると俺たちは宿を引き払った。

「もういっちまうのか?」
「はい」
「寂しくなりますね」
「本当にな。まぁ、帰ってくることがあったらまた使ってやってくれよ」
「もちろん」
「じゃあ、お世話になりました」
「おう!」

カルーラとマリリさんに見送られて俺たちはギルドに向かった。
ギルドに入るといつもの様にアキラさんがいた。

「アキラさん」
「おや、マコトさんにエドワードさんどうされたんですか?」
「あいさつに」
「やはり、もう行くのですね」
「ええ、色んな所を見て回りたいので」
「そうですね。ご活躍を期待してますよ」
「はい」
「ええ、頑張ります」

アキラさんは俺たちの返事に満足そうに微笑んだ。
この時魔獣組は静かに大人しくしていた。
ガイが大人しいのはちょっと不気味だ。
そう思っていると、アキラさんがエドに話しかけた。

「エドワードさん」
「はい?」
「もうあなたは一人じゃありません。助け合い、支えあえる仲間がいるんですから、俯かないで前を向いてくださいね」
「!?」
「何があっても一人で抱え込まないように。エルフ族も変わってきてるのですから、あなた自身も変わることですよ」
「……はい」

エドはアキラさんにそう言われて、俺たちを見てから泣きそうに微笑んだ。
本当にエドはかわいいよな。

「もう行くのか?」
「ええ、お世話になりました」
「何、マコトと会ってから楽しいことばかりだよ」
「ああ、どこの誰が冒険者になったその日に指名手配犯を見つけるかよ」
「尚且つ、それを無傷で制圧するんだもんなぁ」
「あれは」


そして、俺たちは門の方に向かった。
そこにはジャックがいた。

「ジャック」
「おう!もう行くのか?」
「ああ」
「まぁ、色々見てこいよ。そんで、たまには帰って来てその話を聞かせてくれ」
「そうだな」
「ああ。エド、マコトを頼むぞ。こいつはちょっと目を離すと何かやらかす気がするんだよ。それと、お前ももっと自由に生きればいい。マコトたちがいるんだからな」
「うん。ありがとう、ジャックさん」
「おいおい、何かやらかすってのは言い過ぎだろ」
「そうでもないさ」
「まったく……じゃあ、行ってくる」
「おう!行ってこい」

俺たちはいつものように置かれてる魔道具マジックアイテムに指輪や腕輪をかざして、門を出た。
そして、振り返るとそこにはジャックだけでなく、カルーラやアキラさんたちがいた。
俺たちはそれに驚きながらなんだか胸が暖かく、ちょっとくすぐったくなった。

「「「「「行ってらっしゃい」」」」」
「「行ってこい」」
「「「気をつけてー」」」
「「行ってきます!!」」

俺たちはみんなに見守られて旅立った。



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