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第一章

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アイリスとリリーシア夫人がサンドイッチを作っている頃、カイルとルドルフは出発前に仕事をしていた。

さすがに全ての仕事を後回しに出来ないからだ。

息抜きと言えどやるべきことをやらないといけない。

「父上、あとどれくらいですか?」
「あと少しだ。この一山さえ終わればあとは明日に回せる。カイルはどうだ?」
「私は終わりですね」
「な?!なら、手伝ってくれないか?」
「残念。その山は私が手出し出来ない物ばかりです」
「ぐぬぬぬ~」
「なので、私は使用人たちと一緒に準備をして来ます。持っていく荷物を馬車に積まないといけませんからね」
「あ、ああ。使用人たちだけでは大変だろう。他の仕事もあるしな。手伝ってあげなさい」
「はい」

ルドルフはカイルが不敵な笑顔で手伝いを拒否したことを恨めしく思ったが、カイルの言うように使用人たちだけでは急に決まったピクニックの準備は大変であるのでそちらに行くように言った。

実際にルドルフがさばいている書類たちは現当主であるルドルフでないといけない物ばかりだった。

カイルが一礼して執務室を出るとルドルフは大きなため息をついた。

「生意気な……しかし、あれも浮かれているな。余程、アイリスとのピクニックが楽しみなんだろうな」

ルドルフの言うようにカイルは浮かれていた。
尻尾は嬉しそうに揺れ、耳はピクピクと忙しなく動いており、顔は微笑みが口角が上がるのが止められないようだった。

しかし、書類をさばく速度は早く、ミスなどは一切ないという完璧仕様だ。

昔から優秀な息子を持ちルドルフは誇らしくもあったが、不安でもあった。

昔というかアイリスと出会う前のカイルは誰に対しても一線をひいて接していた。
友人と呼べる心をさらけ出せる相手はいないようにルドルフとリリーシア夫人には思えてならなかった。

そんなカイルのことを心配していたが、アイリスと出会ってからはアイリスを本当に溺愛しているのが分かる。

「人らしくなったが、感情が駄々漏れだな。今のアイリスにはそれで良いのだろうが…………いや、あれは線引きをわきまえている。それは分かっているのだ、問題ないだろう………………今の問題はこの書類の山を終わらせることか」

ルドルフはまだ半分ぐらい残っている山を見てため息をついた。

愛する妻であるリリーシア夫人と大切な義娘むすめであるアイリスが朝から厨房で何かしているのだ。

なかなか減らない書類の山を見てルドルフは現実逃避をしそうになったが、せっかくの家族団らんを潰すわけにはいかない。

全員を悲しませることになるし、リリーシアとカイルは本気で怒るだろうと分かるので気持ちを入れ換えた。

「ピクニックと言えばサンドイッチかお菓子だな。リリーシアと厨房の者たちもいるし、大丈夫だろう。さぁ、愛しのリリーシアと可愛い義娘むすめのアイリス、ついでにカイルのためにも早く終わらせよう」

ルドルフは気合いを入れ直して書類をさばいていった。
そこからはかなりのハイペースだったが、ミスなどは一切見られなかった。




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