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第一章

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一方のヴァルファス公爵家では使用人たちが仕事終わりの団欒を楽しんでいた。

「アイリス様、だいぶお元気になられたわね」
「本当に。最初来たときはビックリしたけど」
「「「確かに」」」

最近の使用人たちの話はアイリスが主だ。
それは喜ばしい話が多いからだろう。

「ついに、王前裁判になったそうね」
「ええ。早く罰せられたらいいのに!」
「「「そうよ!そうよ!」」」

アイリスのことでは全員が怒っていた。

ターニャ女医より生まれ直しの状態であると診断を受けてから使用人たちも含めて全員が幼子に接するように接している。
アイリスが愛情をしっかりと感じれるように。

本来、成長過程でその接し方は変わってくる。
それをやり直しているのだ。
今のアイリスの年齢通りの接し方をするには精神状態まで幼く、アイリスが愛情を理解できない可能性があるからだ。

現在のアイリスには『溺愛』ぐらいの愛情のかけ方が必要だろうと全員が判断したのだ。

「何だが、見たことないんだけど、本当だったらアイリス様は幼い頃あんな感じに笑っていたのかもって思うと本当に天使にしか思えなくて」
「「「分かる!」」」
「つい、頭の中が幼い感じのアイリス様に変換されているのよね」
「「「ねぇ~」」」

使用人たち、特にアイリスの側に控える侍女たちはそれが顕著に現れている。
全員の中でアイリスはカイルの『番』、『お嫁さん』という認識より護るべき、仕えるべき存在という認識が強くなってきている。

勿論、カイルの『番』で『お嫁さん』なのだから問題はない。
それを抜きにしても護るべき、仕えるべき存在という感覚になっているだけだ。

「でも、不思議なのよね」
「何が?」
「アイリス様の生まれ直しよ。ターニャ女医が言うには完全に『赤ん坊』からではなくて『三歳児』からだって」
「三歳までは愛情を知っていたってこと?そしたらなんであんな状態になるのよ」
「私だって分からないわよ!でも、もしかしたら」
「「「もしかしたら?」」」
「アイリス様には何か秘密があるのかも」
「「「ううーん」」」

使用人たちは頭に疑問符を並べていた。
しかし、いくら考えても分かるものではない。

現在、使用人たちが受け持つのは日々の屋敷での仕事をこなしながら、アイリスの変化を見逃さず、使用人たちなりに愛情をもって接し、仕え、護ることである。

「とりあえず、もう遅くなってきたから話はここまでにして休みましょう!」
「そうね。明日もお仕事頑張らないと!」
「アイリス様を見守り、お世話させていただくの!」
「頑張りましょう!」
「「「おおーー!!」」」

使用人たちの決意も新たに皆、自室に戻っていった。

全ては王前裁判で明らかになる。




 
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