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第一章
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アイリスの治療は進み、現在はしっかりと食事がとれるようになった。
ベッドの上での生活が続いており、筋肉が固まらないようにマッサージも受けている。
こればかりはカイルがやるわけにも、側で見ているわけにもいかない。
いくら『番』とは言え、未婚の若い二人だ。
それを許すことはできない。
その時間を使ってカイルはアイリスの為にある物を用意している。
それはアイリスを守るための御守りだ。
御守りと言ってもただの御守りではない。
それは魔宝石を使った魔道具の一種だ。
カイルはアイリスの身を守れるように、守護の魔法が組み込まれた魔宝石の宝飾品を贈ることにした。
魔石、魔宝石、魔核といった魔力を備えている石と魔法の紋章を扱うことで魔道具が産み出される。
魔石、魔宝石は採掘場などで発見されるが、魔核は魔物・魔獣等から発見されることがある。
どれも必ず見付かるわけではないのでかなり貴重なものだが、カイルはそれをアイリスに贈る予定なのだ。
そして、今年ヴァルファス公爵領内の採掘場から発見された大きな真紅の魔宝石が献上された。
本来なら国に献上するのだが、今年はすでに別の色の大きな魔宝石を献上しているので今回は公爵家で使うことになった。
そして、それを知っていたカイルがルドルフから話し合って貰い受けたのだ。
「……どうだ?カイル」
「ええ、最高品質と言っても過言ではない魔宝石です。これなら最高の守護の紋章を刻めますよ」
「そうであろう!我が領内でも近年稀にみる最高品質だ。それだけに本当はリリーシアに贈るつもりだったのに……目敏く容赦もないわ」
「何を言いますか、父上。母上には今までにもたくさん贈っていたではありませんか。ここは俺の愛しく、可愛いアイリスに譲ってくださいよ。それにアイリスは父上の義理の娘になるんですから」
「おお!そうだった!!カイルの嫁ということは私たちの義娘になるのだ。娘には最高の物が必要だな!」
「そうですよ、貴方」
二人が執務室で話しているとリリーシア本人がやって来た。
「母上」
「リリーシア、どうかしたか?」
「いえ、アイリスちゃんのマッサージが終わったことを知らせにね。それはそうと貴方、私は充分貰っていますから、カイルとアイリスちゃんにあげてください。アイリスちゃんには守護の守りが必要です」
「そうだな」
「ありがとうございます。父上、母上」
「ええ」
「ああ」
「では、私はアイリスのもとに行きますので、これで失礼します!」
カイルは譲り受けた魔宝石を鍵付きの金庫にしまうと足早にアイリスのもとに向かった。
その尻尾は嬉しいのを隠せず勢い良く振られているし、普段は見せない笑みを浮かべているし、少々頬も朱に染まっていた。
極め付きが普段は品行方正なのにこの時ばかりは廊下を平然と駆け抜けている。
カイルが恋をすればこんなに変わるのだと知った両親は苦笑しながらカイルの出ていった扉を微笑ましく見ていた。
======================
R3.2.13
一部修正しました。
ベッドの上での生活が続いており、筋肉が固まらないようにマッサージも受けている。
こればかりはカイルがやるわけにも、側で見ているわけにもいかない。
いくら『番』とは言え、未婚の若い二人だ。
それを許すことはできない。
その時間を使ってカイルはアイリスの為にある物を用意している。
それはアイリスを守るための御守りだ。
御守りと言ってもただの御守りではない。
それは魔宝石を使った魔道具の一種だ。
カイルはアイリスの身を守れるように、守護の魔法が組み込まれた魔宝石の宝飾品を贈ることにした。
魔石、魔宝石、魔核といった魔力を備えている石と魔法の紋章を扱うことで魔道具が産み出される。
魔石、魔宝石は採掘場などで発見されるが、魔核は魔物・魔獣等から発見されることがある。
どれも必ず見付かるわけではないのでかなり貴重なものだが、カイルはそれをアイリスに贈る予定なのだ。
そして、今年ヴァルファス公爵領内の採掘場から発見された大きな真紅の魔宝石が献上された。
本来なら国に献上するのだが、今年はすでに別の色の大きな魔宝石を献上しているので今回は公爵家で使うことになった。
そして、それを知っていたカイルがルドルフから話し合って貰い受けたのだ。
「……どうだ?カイル」
「ええ、最高品質と言っても過言ではない魔宝石です。これなら最高の守護の紋章を刻めますよ」
「そうであろう!我が領内でも近年稀にみる最高品質だ。それだけに本当はリリーシアに贈るつもりだったのに……目敏く容赦もないわ」
「何を言いますか、父上。母上には今までにもたくさん贈っていたではありませんか。ここは俺の愛しく、可愛いアイリスに譲ってくださいよ。それにアイリスは父上の義理の娘になるんですから」
「おお!そうだった!!カイルの嫁ということは私たちの義娘になるのだ。娘には最高の物が必要だな!」
「そうですよ、貴方」
二人が執務室で話しているとリリーシア本人がやって来た。
「母上」
「リリーシア、どうかしたか?」
「いえ、アイリスちゃんのマッサージが終わったことを知らせにね。それはそうと貴方、私は充分貰っていますから、カイルとアイリスちゃんにあげてください。アイリスちゃんには守護の守りが必要です」
「そうだな」
「ありがとうございます。父上、母上」
「ええ」
「ああ」
「では、私はアイリスのもとに行きますので、これで失礼します!」
カイルは譲り受けた魔宝石を鍵付きの金庫にしまうと足早にアイリスのもとに向かった。
その尻尾は嬉しいのを隠せず勢い良く振られているし、普段は見せない笑みを浮かべているし、少々頬も朱に染まっていた。
極め付きが普段は品行方正なのにこの時ばかりは廊下を平然と駆け抜けている。
カイルが恋をすればこんなに変わるのだと知った両親は苦笑しながらカイルの出ていった扉を微笑ましく見ていた。
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一部修正しました。
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