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竜親、町興し編

七十三話、無毒化①

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とりあえず、私はすべての話をすることにしたので、みんなで移動した。
それは私がお願いしてすぐに建ててくれた卵の安置場所だ。

いや、見事だわ。
そこは広めの部屋に人三人分は高くした台があり、中心には卵を安置出来るように枠があるわ。
それに台の四隅から石柱が延びていてその頂点には白色の魔石が輝いている。

この魔石、何のヤツかしら?

「キレイね。この魔石は?」
「これは結界石ね。刻印魔法と合わせてるから悪意ある奴は入れないようになってるわ」
「そうなんだ。それじゃあ、さっそく卵を安置しよう」
「はい」

私はすぐに台の上に上がり、安置場所に卵を出した。
しっかりとした台座に草を敷き締めていて、思いのほか安定していた。
卵を置くとしばらく周りや私の魔素を吸収していた。

それが落ち着くのを見届けて、私はみんなの方を向いた。
みんなが並んでいた。

「さてと、それじゃあ、今回あったことの説明をしないとね」

私は今回あった事を全て話した、何の偽りも隠しもせずに。
その上で今回の帰還の人数になったのだと。
全ては人族の仕業だったと。
そして、その人族を捕虜としたと。

「では、ゴブリンとダークエルフにオーガとオークの方々は住民となるんですね」
「そうだね」
「諸悪の根源である人族は如何様に?」
「人族との交渉の材料として生かしておくけど、全ては森を元に戻してからかな」
「左様ですか」
「なら、あの人族は俺たちドワーフの方で監視しておく」
「お願い。私はソーガとガントと一緒に毒に侵された土地を回ってくるわ」
「「「「はい!」」」」

私は人族を入れた土の牢を街の端に置いた。
ガルドたちが管理してくれるとの事なので任せることにした。
この街の面子の中で捕虜の扱いが分かるのはガルドたちドワーフだけだ。
なので、ガルドたちに危険がないように街の端、塀の内側にしたのだ。
本当は外にしたかったのだけど、ガルドたちに危険があってはいけないからだ。
もちろん、クルトにも見張りは頼んでいる。

「それじゃあ、私とソーガとガントは各地を回ってくるね」
「はい。お気を付けて」
「ローナ、クルト、ガルド、グリド、頼んだわよ」
「「「はい」」」
「任せときな」

みんなの心強い言葉に背中を押され、私はソーガの背中にのって毒で汚染された土地に向かった。

***

1番近い場所に着いた。
ここはゴブリンの村だったらしいわ。
なんと言うか、原始時代の茅の家だったわ。
それが潰され、土は所々変色していた。
まだ、木々に毒は回っていなかったけど、毒の霧が漂っているみたい。
ソーガとガントがしかめっ面になっているので、酷い臭いなのだろうね。
私?私はスライムの姿なので、臭いは感じないわよ。

私はソーガから降りた。
さすがにソーガとガントをここにずっと居させるのは二人の体に悪い。
臭いだけで毒を受けそうだもの。
それに私は毒耐性持ってるし。

「この変色した所が毒を受けてる場所かぁ」
「ティア様、どうされるので?」
「ん?こうするだけだよ」

私はスライムの固有スキルである『吸収』で一帯の毒を吸いとった。
そして、『解析』で毒の成分を解析して毒を無毒化した。
隔離でもよかったけど、いつまでも体に毒があるのは嫌だからね。
それにこれで新たに解毒薬が作れるようになったわ。

≪毒を吸い取ったら解毒薬にしてしまえば良いのではないかのぅ≫
うん、そうするわ。
解毒薬ならあった方がいいしね。

この辺りの毒を回収して、私たちは村の中を見て回った。
ダークエルフたちの言うように、死んでいるものはいなかった。
ゴブリンたちは力の差を理解して逃げることを優先した、その為戦わないことで生き延びれた。
≪そうじゃのぅ。ダークエルフたちは戦いを好む。じゃが、それは正々堂々の勝負を好むのであって略奪は嫌悪しておる≫
だからこそ、ゴブリンたちは生き延びた。

「ティア様、毒が」
「全て吸収したわ。無毒化も出来たし、解毒薬も作れるようになった」
「では、この土地はまた村を造ることが出来るのか?」
「それには時間がかかるわ。毒自体は取り除いたけど、一度汚染されたのだから時間をかけて様子を見ないとどうなるかわからないもの」
「それもそうだな」
「毒で汚染されるのはすぐよ。でもね、再生には時間がかかるわ」

私たちはこの後、他のゴブリンやオーク、オーガたちの村を回って毒を吸い取り、土地の無毒化をして行ったわ。
この辺りは難しくなかったわ。

でも、これから向かうのはダークエルフたちの村よ。
見に行ってくれたダークエルフとガントの話では木々にまで毒の影響が出ているとのことなので心配だわ。






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