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竜親、町興し編

六十三話、決戦⑤

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 私は草を分けて進んだ。
 これ以上のトラブルはいらないわ。
 人間とやりあうなんて面倒くさいしね。そこはダークエルフたちに任せたいわ。
 でも、殺されたらそれもそれで面倒くさいのよね。
「まったく、あんなのを易々と通すなんて」
「まったくだぜ」
「やはり、魔物ってことだろ」
「確かに」
 あいつら、何がおかしいの?
 みんなが各々のために戦っているのに。
 ああ、怒りが押さえきれなくなりそう。早くあの子たちを助けないと。
 私は深呼吸をして、気持ちを押さえると、スピードをあげて人間たちのもとに向かった。
 あの部隊長をソーガが押さえてる間にことを終わらせないと。
 完全に油断をして笑っている人間たちが人質の入った球を上に掲げた瞬間私は蛇の姿になって飛び出し、その球を丸呑みにしてその場を離れた。
「キャーーー!」
「ど、どうした?!」
「へ、ヘビが…」
「蛇?こんな場所に?……って、お前、あの球は?」
「え?……あ!蛇に驚いて落としたかも」
「おいおい、しっかりしてくれよ……どこにもないけど?」
「うそ……まさか、蛇が飲み込んだ?」
「マジかよ!どうする?!」
 どうやら向こうはパニックになったようね。
 まぁ、この人質がいないと意味がないものね。
 それにしても丸呑みって疲れるわね。
 そうしていたら、ソーガが一声鳴いたわ。
 ああ、あの部隊長を押さえ込めたのね。いい子だわ。
 私はすぐにソーガのもとに向かった。
『お疲れ様、ソーガ』
「ティア様」
「この蛇は……あのスライムか?」
『ええ、そうよ。一つ確認なんだけど』
「なんだ?」
『あなたのところの人質はあの球にいるだけ?』
「なっ?!」
 あ、ばれてないと思ってたんだ。
 それもそうよね。誰が人質ありきでこんなことをすると思うって話よ。
 私は知らないからこそ違和感を感じたようなものだしね。
『気付いていたわよ。みんなそれを承知でここにいるの。それで?あの人間が持っていた球に入っているだけ?』
「そうだ」
『そう、わかったわ。ソーガ、このままこの部隊長を押さえててね』
「了解した」
 私はソーガにこの場を任せて戦いが終わったガントを呼び寄せ、本陣に戻った。
 そこには全ての族長たちがいる。
 そう、私は人質を回収したらこの本陣、拠点に戻ることにしていた。
 この方が後々人質を守れるからね。
 私はドラグーンに鑑定して貰った。
≪うむ、これならティアの力で簡単に壊せるのぅ≫
 どうすればいいの?
≪魔力を込めるだけでよい≫
 わかったわ。
 私は早速、体内から球を取り出した。そこに見えたダークエルフの子供たちは怯えていた。
 それもそうね。あんな人間たちに捕まっていたんだもの。それに私が丸呑みしたのも怖がるわね。
 緊急だったとは言えかわいそうなことをしたわ。
 私はオーガの姿をとった。 
「もう大丈夫よ」
「あなたは?」
「私はスライムのティア・ドラグーンよ。あなたたちを助けに来たの」
「本当に?」
「ええ、すぐに出してあげるわ。だから、もう少し頑張ってね」
「うん!」
 うん、いい子たちね。
 私はあたしの姿が見えるように少し大きめの岩に立ち、声を張り上げた。
「戦闘をやめて!聞きなさい!ダークエルフに人間たち」
「っ!」
「どうして?バレてる?」
「……あ!あれは」
 私の声に全員がこっちを見た。
 そして、比較的近くにいたダークエルフたちには私の手にあるものが何か分かったようね。
 これは好感触。
「人間たち、お前たちがダークエルフたちをこの子たちをたてに操っていたのは分かっているわ」
「っ!」
「これ以上やる?それとも降伏する?」
「ふ、ふざけ…」
「っ!やめろ!落ち着け!」
「そうよ!状況を考えて!」
「っ!」
 そうね、おとなしくしててね。
 さて、人間はこれでいいわ。ソーガたちにそのまま連行してもらえればいいから。
 問題はダークエルフたちよね。
 ああ、もしかしなくても私今悪者?
≪まぁ、ダークエルフたちから見ればそうなるのぅ。なにせ、人質が移動したことにしかならんからなぁ≫
 ですよね!!
 まぁ、いいのよ。
 人間たちと隔離できれば。
 さて、悪者らしくいきましょうか。
「ソーガ、人間たちを捕縛して」
「ああ」
「ダークエルフたちはそのまま投降してくれると助かるんだけど」
「ちっ!」
「くそ!」
 うわぁ~、すっんごい悪態。
 ちょっとあの部隊長がひやひやしてるよ。
 見てる分には楽しいけどね。
 ま、そんなわけで幕切れはアッサリしたものだったわね……。
≪アッサリかのぅ≫
 言わないで!!


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