悪役令嬢はもう疲れた

てる

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罪の裏側–ガルフside–

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しばらくの間2人は緑ばかりの馬車の外を眺める。気まずい沈黙を破ったのはビビだった。

「ねぇ…これは、私の独り言だと思って聞いてくれるかしら。」

そう言ってビビは淡々と話し始めた。

「私ね…どうかしていたのよ…本当に馬鹿なことをしてしまったの…」

「…私…私ってこんなにも愚かな人間だったのね…」

顔は窓の外を見ているようでも、その瞳には景色など映っていない。虚な目をしたまま彼女は、ぽつりぽつりと目の前の見知らぬ男に懺悔を始めた。

王妃教育と周りの令嬢たちからの陰口に疲れ切ってしまっていた事
そんな中で自分をいびってきた令嬢が殿下にベタベタとまとわりついているのを見て、嫉妬し突き飛ばしてしまった事
一部の自分に親切にしてくれていた令嬢達は、ずっと自分の事を騙していて間違った知識を教えられていた事

「少しでも隙を見せると次から次に見覚えのない噂話を囁かれるのが貴族社会よ…私は次期王妃でありながら隙だらけだったわ…」

ほんの少しの過ちが彼女を大きく苦しめていく事となった。身に覚えのない噂話はどんどんと広まり彼女を飲み込んでしまった。

「後悔ばかりよ…あの時、嫉妬に駆られて手を出さなければ良かった…あの子達を信用しきって勉強なんて教えてもらわなければ良かった…全部全部今更よね…」

窓を見つめ続ける彼女の瞳は先程とは違い、悲しみの色を浮かべている。

「…それでも本当に好きだったのよ…アル…」

(純粋すぎたんだ…彼女は…)

誰よりも優しく、誰よりも人を信用して、誰よりも真っ直ぐな彼女。国母としての資質は十分だっただろう。しかし、王妃になるのには優しさだけではいけない。優しさの中にも厳しさが、人を信用するにも本当に信用する人を見抜く力が、多少の狡賢さが必要だったのだ。ある意味、王妃は王よりも強かでなくてはいけない。彼女は人の事ばかりで自分を守る強かさを身につけていなかった。

「…馬鹿だなぁ」

無意識のうちにぼそっと声に出してしまっていた。彼女は一瞬こっちを見ると、ひどく苦しそうな顔をして「自分が一番分かってるわよ」と小さく言った。

ガルフは心の中で否定した。先程口からこぼした言葉は、彼女の行動を指した言葉ではなかった。そこまで追い詰められても、まだ殿下のことを思って泣きそうな顔をしている彼女に対してと、そんな彼女を見て胸が痛む自分に対してだった。

(国外追放までされたのにまだ好きなのかよ…諦めればいいのに…)

不毛な想いを胸に抱えたまま生きていくのは辛い。でもそう簡単に諦められないのはガルフが誰よりも知っているのだ。




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